▼174▲ 平等に扱われる事を望む多頭飼いの犬
いきなり全裸同士での対面座位は刺激が強過ぎたのか、しばし放心状態のグレタだったが、やがて自分を取り戻し、
「こ、今度は背中を流すわよ!」
イングリッドと協力してエイジンを風呂から連行し、シャワーの下の椅子に腰掛けさせた。
背中を流す時はこちらを見られないので気が楽になったのか、喜々として泡だったスポンジでエイジンを洗うグレタ。気分はペットの大型犬を洗っている時のそれに近い。
腕まで洗い終えると、
「次は前です、お嬢様」
「背中と腕だけだ」
イングリッドが出す指示をエイジンがほぼ同時に却下した。
「じゃ、じゃあ、次は私の番ね」
エイジンが他の部分を自分で洗ってどいた後、グレタが空いた椅子にちょこんと座り、
「夕べ、エイジン先生はスポンジでなく、手にボディーソープを付けて直接洗ってくれました」
イングリッドがグレタを煽る。
「て、手で!?」
「はい、体の隅々まで余す所なく」
「騙されるな、背中と腕だけだ]
否定するエイジンに向かって、グレタは真っ赤になりながら、
「私にも手で!」
と強く要求し、
「背中と腕だけな」
エイジンも渋々了承する。
「だ、第一夫人と第二夫人は平等に扱われなくちゃいけないのよ!」
背中を触られながら、動揺しまくっているグレタが気の早い事を口走る。
「あんたらと結婚した覚えはないんだが。要はあれか、犬を多頭飼いする時は平等に扱え、って事か」
冷静に返すエイジン。
「例え方がやや気に食いませんが、それで合ってます。くれぐれもどちらか一方ばかりをえこひいきして、もう一方を悲しませる事のなきよう、バランス配分に注意してください」
グレタから少し離れた所に椅子を置いて腰掛け、自身の体を洗いつつ、淡々と補足するイングリッド。
「その理屈で言うと、両方等しくゼロもありだな」
「なしよ!」
「なしです」
エイジンの問題発言に、即座に声を揃えて抗議する主従。
やがてグレタの背中と腕を洗い終え、
「じゃ、俺はお先に」
と言って出ようとするエイジンの方を振り向いて、
「まだ、『お姫様抱っこ』が残ってるわ!」
「その様な訳ですので、脱衣所で全裸待機していてください、エイジン先生」
この主従はさらなる「平等な扱い」を要求した。