▼173▲ 公園の危険な遊具で遊ぶ子供達
その後イングリッドから、夕べの入浴時にエイジンと何をしていたかの詳細を聞かされ、
「イ、イングリッドに、した、した事なら、わ、私にも、しなさいよ!」
正気に戻るどころか、ますますおかしくなったグレタは、前を隠そうともせずエイジンの正面に突っ立ち、
「落ち着け。深呼吸して、自分が今何をしているのか、客観的に考え直せ」
説得を試みるエイジンの上に、有無を言わさずまたがる様に腰を下ろし、対面座位の体勢で、ぎゅっ、と抱きついた。全裸で。
すかさずイングリッドがグレタの背後に回り込み、
「夕べの様に、お嬢様を背後に倒して逃れようとしても無駄です」
両手でその背中を、ぐい、と押した。
結果、エイジンとグレタの密着度が上がり、
「きゃひっ!」
グレタは短い悲鳴を上げて、ビクンと跳ね、
「エイジンのが、あた、あた、当たってる」
動揺の余り、おかしな事を口走る。
「もう気は済んだろ? さっさとどいてくれ」
困惑した表情で言うエイジンに対し、焦燥しきった表情で抱きついているグレタは、
「ちょ、ちょっと待って、体が、動か、なひ」
初めて人を斬った者が恐怖と緊張で刀から手を離せなくなってしまう様に、体の自由がきかなくなって、エイジンから離れられなくなってしまった様子である。
「おい、あんたの責任だぞ、イングリッド。お嬢様をはがしてやってくれ」
「しっかり抱きついていらっしゃる様なので難しいですね。例えるなら、夜の校舎で事に励んでいたバカップルが抜けなくなって合体したまま救急車で運ばれるのと同じケースで」
「何そのどこの中学校にもある都市伝説。それと入ってないからな、断じて」
「とにかく、まずはお嬢様の緊張を解きほぐしてあげてください、エイジン先生」
エイジンはため息をついて、混乱状態で抱きついているグレタの頭を撫でてやり、
「なあ、イングリッドに何を吹き込まれたか知らんが、無茶はやめてくれ」
と優しい声音で耳元に囁いた。
「あわ、あわ、あわわわ」
しかし逆効果だった様で、ますます動揺して動けなくなるグレタ。
結局グレタが体を動かせる様になるまで、さらに十五分程かかり、その間イングリッドは何もせず、これ見よがしに指をくわえ、エイジンがグレタを一生懸命宥めている様子を羨ましそうに眺めていた。
ようやくエイジンがグレタを脇にどかす事に成功すると、
「では、次は私の番と言う事で」
「俺は公園の遊具か」
エイジンに正面からまたがろうとして阻止されるイングリッドだった。