▼163▲ わざわざ呼び出した目的
稽古場に向かう途中、エイジン先生はアランを携帯で呼び出し、昨晩痴女ドレスを着たグレタに乳丸出しで迫られた事と、イングリッドと一緒に入浴し、全裸のままお姫様抱っこで寝室に運んで、ベッドを共にした事の顛末を詳しく報告すると、
「そんな事を聞かせるだけの為に、わざわざ呼び出さないでください」
以前と同様、身近な女性達の生々しいエロ話に当てられて真っ赤になったアランに苦情を申し立てられた。
「そんな事をさせられるだけの為に、わざわざ再召喚されたんだぞ、俺は」
悪びれずに、しれっと言い返すエイジン。
「それは、その、すみませんでした。でも、やっぱり、その手の話はもういいですから」
「いや、詳しく話しておかないと、あの二人の行動の異常性が伝わらないだろ。イングリッドはある意味通常運転だが、グレタ嬢は一ヶ月見ない間に格段に痴女度がアップしてる」
「原因はエイジン先生だと思います」
「俺はグレタ嬢に無意味な修行をさせた覚えはあっても、エロ調教をした覚えはないぞ」
それを聞いて何かいけない想像をしてしまったらしく、アランはますます顔を赤くし、
「そうじゃなくて! 普通に考えれば、グレタお嬢様がエイジン先生に好意を持っているから、精一杯誘惑してるんじゃないかって事です」
「この世界ではあれが普通なのか。じゃあ、アラン君もアンヌに時々ああいう痴女まがいの事をされてる訳だな」
「こっちに話を振らないでください」
「否定しない所を見ると図星か」
「ともかく! グレタお嬢様にとってエイジン先生は危機から救ってくれた恩人ですし」
「恩を仇で返すタイプの女だな」
「復讐じゃなくて、単に一緒にいたいから呼び戻したんだと思いますが。そんな訳で今回から、私とアンヌは稽古場に同行しません。修行はグレタお嬢様とエイジン先生のマンツーマン体制で行う、と申し渡されました」
「神聖な稽古場で、二人きりでイチャつけってか」
「イチャつくなり、真面目に修行をするなり、好きにしてください。イチャつく場合は、その内容を私に報告しなくていいです」
「一応報告はしとく」
「やめてください。グレタお嬢様は、この一ヶ月間、エイジン先生と再び会える日を心待ちにしておられました。それが実現した今、多少羽目を外してしまうのも無理のない事かと」
「『多少』なら構わないんだがな。『多少』なら」
「もし行き過ぎがあったと思われたのなら、それは直接グレタお嬢様に指導してもらえないでしょうか。出来れば穏便に」
「初手からツッコみ切れない程行き過ぎていたんだが、まあ努力はしてみる。それはそれとして、この世界と言うか、この国の法律について少し聞きたい事があるんだが――」
エイジンはアランにいくつか質問をし、その回答を聞いて何やら得心していた。