▼152▲ 小型ビデオカメラの悪用
小屋に戻り、前回残していった衣類一式をイングリッドの寝室から奪回するエイジン。
「では、私が責任を以てクローゼットに収納させて頂きますので、エイジン先生は持ち帰った日用品の整理をしていてください」
衣類が入った収納ボックスを開け、早速作業に取り掛かるイングリッド。
「いいよ、自分でやるからあんたは休むなり他の仕事をし」
「収納させて頂きます」
仕事に関してエイジンに口を挟ませない所は相変わらずである。
二人が一通り作業を終えると、イングリッドは一着収納せずに残して置いた作務衣を手に、エイジンに迫り、
「それではお着替えのお手伝いをさせて頂きます」
「俺は幼児か。自分で着替えるから出て行ってくれ」
「では、脱がす所までだけでも」
「出てけ」
痴女メイドを寝室から追い出し、ドアを施錠してからようやく着替えを始めるエイジン。
トランクス一丁になった所で、
「お着替えはお済みでしょうか、エイジン先生」
施錠したはずのドアが開いて、小型ビデオカメラを構えたイングリッドがつかつかと入って来た。
「俺は鍵を掛けたはずだぞ」
「私はこの小屋の全ての部屋を開けるマスターキーを持っていますので」
「鍵の意味ねえじゃねえか。それと撮るのをやめろ」
「この動画をネットにバラ撒かれたくなければ、その最後の一枚も脱いで全裸にな」
「やかましい」
「軽い冗談です」
そう言って出て行こうとするイングリッドの肩をつかみ、引き留めるエイジン。
「脱いで頂けるのですか?」
「誰が脱ぐか」
その言葉と同時に、エイジンは素早くビデオカメラをイングリッドから奪取する。
「返してください!」
「動画を全削除したらな」
「やめてください。そのビデオカメラには亡くなった祖母との思い出動画が!」
「嘘つけ、今しがた撮ったばかりの一件しかねえじゃねえか!」
ビデオカメラを取り合ってもみ合う内に、バランスを崩してベッドに倒れ込む二人。
仰向けになったイングリッドに覆い被さる様な格好になるトランクス一丁のエイジン。手には小型ビデオカメラ。
一瞬の気まずい沈黙の後、イングリッドが蔑む様な目で、
「ハメ撮りですか。最低ですね」
「撮らねーよ!」
「顔は映さない様にお願いします」
「だから、撮らねーって言ってるだろ!」
そう言って起き上がろうとするエイジンに抱きつき、しばし着替えを妨害するイングリッドだった。