▼150▲ 超薄型タイプ
買い物客よろしく、倉庫のあちこちを移動しながら日用品を手に取りカゴに放り込んで行くエイジンと、そのカゴを乗せたカートを押すイングリッド。二人から少し離れてアランが付き従う。
エイジンが、
「自分で押すから」
とカートに手を掛けても、
「私の仕事ですから」
と主導権を譲ろうとしないイングリッド。
薬局のコーナーに差し掛かると、イングリッドはつかつかと足早にカートを押して行き、棚からカラフルな小箱を手に取り、
「これは必需品中の必需品です」
と言って、カゴの中に入れて戻って来た。
エイジンはその箱を手に取り、商品名を一目見て、
「要らん。棚に戻して来い」
イングリッドに突きつける。
「まさか着けないでナマで事に及ぶつもりですか、エイジン先生」
「それ以前に事に及ぶつもりはねえよ」
「私の体の事も考えて頂かないと」
「人の話を聞け」
「どうしてもナマがいいと言うのであれば、医者に処方してもらいますが」
「どうしても人の話を聞かないんだな、あんたは」
「使う使わないは別として、一応用意しておくのは紳士の嗜みではないでしょうか」
「それはまあ正論かもな」
エイジンは背後を振り返り、イングリッドが受け取ろうとしなかったその箱をアランに差し出して、
「そんな訳で、これはアラン君にプレゼントだ。紳士の嗜みだぜ」
と淡々と言う。
「要りません!」
顔を真っ赤にして受け取りを拒否するアラン。
「いやいや、アラン君。大事な彼女の事を思えば、恥ずかしがる必要はないと思うぞ」
さらにセクハラじみた攻撃をするエイジン。
「……もう、持ってますから」
小さな声で恥ずかしそうにぼそっと呟くアラン。
「聞きましたか、エイジン先生。あれこそ紳士の鑑です」
「使う予定があるアランと使う予定がない俺を一緒に論じるな」
「もう、勘弁してください!」
言い争いを始めたイングリッドとエイジンを前に、悲鳴を上げるアラン。