▼146▲ リニューアルされた監獄
「エイジン先生を再度こちらの世界にお招きするに当たって、老朽化の激しかった前の小屋を取り壊し、新たな小屋を住居として用意させて頂きました」
イングリッドに連れられて、再召喚された直後のエイジンが、かつて住んでいた小屋があった場所まで来てみると、そこには前のものより一回り大きな小屋が新築されていた。
「前のもそうだが、小屋と言うより、もはや立派な平屋一戸建てだな。俺一人の為に、もったいないにも程がある」
それを見て呆れるエイジン。
「元々、前の小屋は近い内に取り壊す予定でしたから」
「だからって建て直す事もないだろう。屋敷の外にアパートでも借りる方が安かったんじゃないか?」
「エイジン先生は、犬や猫を飼うのにわざわざ専用のアパートを借りるのですか?」
「俺の扱いはペットか。一応、武術の師匠として招かれたんじゃなかったのか」
「目の届く場所に置いて、逃げない様に監視する必要がありますからね」
「今度は囚人か。まあ、似た様なもんだが」
「本当なら屋敷の地下倉庫にでも監禁しておきたい所ですが、共同生活を嫌がるコミュ障のエイジン先生の為に、以前と同じく小屋住まいを認めたのです。感謝してください」
「誰がコミュ障だ。ま、気ままな一人暮らしの方が性に合ってるから、こっちの方がいいがな」
「もちろん、内弟子たる私も一緒に住まわせて頂くので、気ままな一人暮らしなどさせません」
「俺は内弟子を取った覚えはないし、取るつもりもない」
「そんなワガママが許される立場だと思っているのですか?」
「俺は師匠としてお招きされたんじゃなかったのか?」
「『師匠の命令は、絶対』ですか? エッチな王様ゲームのやり過ぎですね」
「一度もやったことねーよ、そんなモン。理不尽な命令をする気はさらさらないし、本来俺は師匠って柄でもないんだが、せめて一応の敬意は払えって言ってるんだ」
「つまり、『敬意はカラダで払え』、と?」
「言ってねえ」
「相変わらずの変態ですね。正直引きます。それはともかく、どうぞ中へ入って具合をお確かめください」
エイジンに抗議させる隙を与えず、マイペースで事を運ぶイングリッド。
「中へ入って具合を確かめると言っても、私のナカのこ」
「おお、こうして見ると、本当に前の小屋が小屋に思える程立派だなあ!」
イングリッドにしょうもない事を言わせる隙を与えず、大げさに感嘆してみせるエイジンだった。