▼136▲ 土下座と白状
レンタローは、エイジンとアランを、パーティー会場から遠く離れた人気のない庭園の片隅に誘導し、
「知らぬ事とは言え、船越さんにはとんだご迷惑をお掛けしました。また、改めてお詫びに伺いますので、どうか今日の所はお引き取りください」
早口でまくし立てた後、深々と頭を下げた。
「それより、お前がアフリカのインド象を素手で倒した時の話が聞きたいんだが」
それを無視して嫌がらせをするエイジン先生。
「あ、あれは、その、つい、話を盛ってしまいまして」
「つい、ってレベルじゃねえぞ。それと分かってるとは思うが、アフリカにインド象はいねえからな」
「え」
「素かよ! アフリカにいるのはアフリカ象だ」
「ああ……なるほど」
「なるほどじゃねえよ。ま、それはさておき、随分と羽振りが良さそうじゃねえか」
「いや、その、武術の師範として召喚されたラッシュ家で、厚遇して頂いているので」
「つまり、俺達の流派の技を、お前は金で売ったんだな?」
「い、いえ、その、まあ、そうと言えない事もないんですが」
「お前は金に目が眩んで、私闘に使われると知りながら、俺達の流派の中でもかなり危険な技をリリアン嬢に教えたんだな?」
笑ってはいるが、目が笑っていないエイジンがそう言うと、
「い、いや、そういう、その、あれで………………すいませんでしたっ!」
しどろもどろになって何か言い訳をしようと必死に努力していたレンタローが、万策尽きたらしく、突然その場に土下座する。
だが、エイジンは続けて、
「お前は『大金に目が眩んで、俺達の流派の鉄の掟を破った』、と認めるんだな?」
「本当にすいませんでした! でも、お金じゃないんです! リリアンお嬢様のお話を聞いて、つい義侠心に駆られてしまい、大切な人を取り戻すお手伝いをと……」
「で、本当は?」
「金です。すいません」
エイジンの表情から、ごまかしきれないと見て取ったレンタローは、拍子抜けする位あっさり白状した。