▼121▲ ベッドの上の追い剥ぎ
就寝時間となり、寝室の照明をナイトランプに切り替えてから、イングリッドはパジャマを脱いでベッドにもぐり込み、
「昨晩の反応がイマイチだったので、元に戻します」
先に寝ていたエイジンに横から抱き付いた。全裸で。
「戻さなくていい。それと、いい加減下の布団で寝てくれ」
言っても無駄だと分かっていながら注意するエイジン。もちろん、布団にもぐり込んで来る動物に言葉の説得は通じない。
「ところで、いつも私だけ全裸というのも不公平だとは思いませんか」
「じゃあ、服を着ろよ。それで対等だ」
「いえ、私が全裸である以上、エイジン先生も全裸になるべきだと思うのです」
そう言ってイングリッドは、片手でエイジンの着ている作務衣の上衣の紐を解き始めた。全裸で。
「やめろ。勝手に人の服の紐を解くな」
「人の裸を散々見ておいて、自分だけ着衣ですか? 図々しいにも程がありますね」
「じゃあ聞くが、あんたは街で露出狂の変態に出会ったら、自分もお返しに服を脱ぐのか?」
「失礼な。誰が露出狂の変態です」
「あんただよ」
しょうもない事を言い合いながらもみ合っている内に、イングリッドはエイジンの作務衣の上衣を剥ぎ取る事に成功し、
「まずは上半分。次は下半分です」
戦利品の上衣を投げ捨て、エイジンの下衣の紐に手を掛けた。全裸で。
「バカ、やめろ。悪ふざけにしても、超えちゃいけないラインってのがあるだろ!」
「往生際が悪いですね。さっさと脱いでください」
そこでエイジンは抵抗をやめて、イングリッドのうなじに人差し指を当て、そのままつーっと背筋に沿って尾てい骨の先まで滑らせる。
「はうっ!」
イングリッドは思わず変な声を上げ、紐から手を離してビクンとのけ反った。全裸で。
「な、何を」
「超えちゃいけないラインってあるよな?」
ナイトランプの薄暗い灯りの下、ベッドの上で全裸の女と半裸の男が、しばし互いに無言で顔を見合わせた後、
「おやすみ」
上衣を取りに行くのも面倒くさかったのか、エイジンは上半身裸のまま仰向けになって布団を掛け直し、静かに目を閉じた。
流石に懲りたのか、イングリッドもそれ以上ちょっかいを掛けずに大人しく隣で横になったが、翌朝には横向きに寝ているエイジンの正面からがっちり抱き付いた状態になっており、目を覚ましたエイジンが抗議する前に、
「失礼しました。寝相が悪いもので、つい」
と言いつつ、エイジンの背筋に人差し指を当て、上から下までつーっと滑らせた。
「はうっ!」
ビクン、とのけぞるエイジン先生。