▼106▲ ペットの投げやりお悩み相談室
翌朝、修行場へ行く途中、一晩中全裸のイングリッドに体の上へ乗っかられていた話をエイジン先生から聞かされたアランは、例によって顔を赤くしつつ、
「恥知らずのバカップルの臆面もない惚気にしか聞こえないんですが。もしくは犬猫の飼い主の自虐風自慢」
ややうんざりした様に言う。
「『猫が俺の腹の上に乗ったまま、ずっとどいてくれません』とか、『私の足先に犬がお尻を乗せて座っているので、動けません』とかいうアレか。写真を撮ってネットにアップしてるのをよく見るが、『困った、困った』と言いながらも、飼い主はさぞ幸せそうな顔してるんだろうな、って容易に想像出来るよな」
「犬猫なら可愛いんですが、人間の女性でそれをやられると生々し過ぎます」
「だが不思議なもので、こうも毎日裸で布団にもぐり込まれていると、段々抵抗がなくなって来る。少し大き目の犬猫位の感覚だ。こういうのも調教されていると言うんだろうか。イングリッドじゃなくて俺が」
「勝手にしてください」
とうとうエイジンのエロ話についていけなくなった、常識人のアラン。
「まあ、それはともかく、俺が元いた世界に帰る時、イングリッドも一緒について来ると言い出した件なんだが」
「人一人増えても異世界転移の魔法に影響はありませんし、戻す時も同様に問題ありません」
「それはもう聞いた。ただ、あのダメイドは俺の所に泊まるつもりらしい。宿泊費も払うと言って来た」
「随分気に入られてますね。よかったじゃないですか。何か不都合でも?」
「俺を抱き枕にする癖が付いてやめられなくなったらしい。何とかしつけ直す方法はないだろうか」
「『それは飼い主さんを信頼しているサインです。愛情を持って接して上げてください』」
「俺が悪かった。そう投げやりにならないでくれ」
淡々と応答し始めたアランに、エイジンが謝った。