電脳隔絶世界 ハルカゼ Ⅲ
3 ■の間際の約束
空が変わっていく。
人が生まれ変わっていく。
町が作り替えられていく。
今すべての常識と日常が全く別のものに上書きされていく。
この光景こそが私達にとっての地獄。この世界こそが私たちにとっての破滅。
その中で私だけが生き残っている。
誰かが悲しみを叫んでいる。だれかが取り返すことはできないかと地を這う。誰かが次に起こる一瞬の地獄を回避できないかと頭を働かせる。
前見えぬ屍は、一瞬の地獄だけを頼りに世界を彷徨う。
しかし、その瞬間まで抱いていた思いも、決意も、誓いも全て。その瞬間書き換えられた。その光景はあまりにも呆気ない物だった。武装した人間も、その友も、恐らく家族も等しく、そこは書き換えられる。
少し遠くの人が書き換えられた。その人は泣きながら叫んでいた。助けてくれ。死にたくない。と。
もう少しだけ近いところにいた人は、膝を折りガチガチと震えながら手を合わせ、神様、神様、どうか神様と、目がつぶれるほどきつく締めながら祈りを捧げていた。そして救われることなく書き換えられた。
そして目の前にいる武装した人物は、お前のせいだと激高していた。顔を真っ赤にしながら、君に明確な怒りをぶつけていた。許容を超えた怒りが形になろうとしたところで書き換えられた。
では私の足元で倒れている君は?倒れたまま、何も刻むことなく別のものに書き換えられるのか?それはつりあわない。君が働いた代償はあまりにも大きい。君の真意はなんだ?君はそれを私に示すことなく別のものに逃げるのかい?
私はその答えを知りたい。君の答えを。ならば引き伸ばさなくては。だから君は生かさなくては。この私の胸に残る疑問に答えてもらうために、そのままでいてもらわなくては。
きっと思い出させてくれない。それが裏切った者の罪であると。
きっと忘れさせてくれない。あの地獄の断末魔を、その瞬間だけを。
君はいつか日常を手に入れるかもしれない。いつか幸福をその手につかむかもしれない。けれど。それでも。今度こそ私のこの疑問には答えてもらおう。
それで君の行為には意味とつり合いがとれるはずだ。だからここで約束をしてもらおう。
だから。その死は認めない。
忘れるな。その約束が今のお前を、この地獄で生かす理由だ。
―――だからどうか、忘れないでください。




