電脳隔絶世界 ハルカゼ Ⅰ
プロローグ 暗闇の中で
目眩がする。道端でふと、強い目眩を覚えた俺は額に手を当てていた。その場に倒れこんでしまうことはなかったが、それでも顔を下に向けてしまうほどにつらいものだった。
目眩は相当につらいものだったが、俺には目眩が起きるような生活はおよそ送ってきた記憶はない。特に激しい運動をした記憶もない。およそ事故を起こしたり巻き込まれたりといった記憶もない。前日無理な夜更かしをした記憶もない。
しかし心当たりすら痛みで塗りつぶされ始める。いい加減歩こう。そう思いながら俺は足を進めた。歩いている間も目眩はひどく足がふらつき始めた。正直早く横になって休みたいという思いで内心いっぱいだった。
一刻も早く横になりたいと思いながらも、暗がりの中を歩き続ける。辺りは真っ暗で視界が悪い。
―――目眩がする。
唐突に行き止まりにぶつかる。どうやら道を間違えてしまったらしい。ああ、たまったものではない。こっちは一刻も早く休みたいのだ。
そう怒りを覚えるも、頭に響き渡る目眩でかき消されてしまった。取りあえず道を変えよう。振り向いてみれば、やはり視界は悪く真っ暗だった。そして、俺にはどこまで歩けばいいのか全くわからなかった。
―――目眩がする。
しかし足を進めなければどうしようもない。
ここ(・・)に(・)いて(・・)は(・)いけない(・・・・)。早く(・・)ここ(・・)から(・・)離れない(・・・・)と(・)いけない(・・・・)
。体はそう訴えている。だから随分と重くなった足を進める。そういえば俺は今までなんで歩いていたのだろうか。
―――・・・・痛みが走る。
目眩と共に今度は頭痛が走る。わからない。なぜこの体はこんなにも苦痛を感じているのかわからなかった。もういっそこの場で倒れてしまったほうが楽なのではないだろうか?一瞬そう考えたがろくに考えることのできないこの頭では結局わからなかった。
だがそれ以上にわからなかったのはこの状態でも足を止めていないことだった。それでも重い足を一歩ずつ進めようとしたとき。
「―――――――――っ!」
―――意識が僅かに戻る
悲鳴が聞こえた。
誰の?わからない。
なんで?わからない。
どこで?多分あっち。
走れるか?多分。
走れ。走ろう。
―――急げ!
体は重かった。戻ってはだめだと恐怖が圧し掛かる。しかしそれ以外は何もなかったから思いのほか走れた。視界は相変わらず暗いが聞こえた方向はなんとなくわかる。自分が今まで歩いてきた道だと。自分が離れようとした場所だと。自分が・・・逃げてこようとした場所だと・・・!
暗がりでよく見えない道で思わず顔を下げようとしてしまう。それはだめだ。下を向くのはつらいだけだ。
足を止めてしまいそうになる。それはだめだ。二度と進めなくなる。
倒れてしまいたかった。それもきっとだめだ。二度と起き上がれなくなってしまうから。
今の状態の自分に一体何が残っているかもわからなかった。きっと息も上がっている。ひどく情けない顔をしているかもしれない。泣きそうな顔をしているかもしれない。そんな思いすら燃やして走り続ける。
自分について何もわからなくなった中で、それでも今だけは走れと、この体は訴えているのだから。
「―――――っ!」
二度目の悲鳴。もう捉えた。見えはしなかったが問題ない。最初から目は見えていなかったのだから問題なんて何もない。走った分の休息も必要はない。どうせ二度と動けなくなるのだから問題ない。
「誰か・・・助けてよ。」
やっと、声の主の言葉を聞き取れた。
今助ける。俺は自分の口でそういったのか。それとも頭の中でそう思っただけなのか。それはよくわからなかった。
―――それでも。
助けてほしいと言葉を零した人に、この腕は何とか届いた。一瞬、伸ばした腕に華奢と思わせる感触を感じた。
そして。刹那。背中には、なんとも形容しがたい感触を与えられた。一番近いのはやはり痛い。だっただろうか。見ることもできず。音も聞き取ることはできず。
それでもこの目は捉えたのだ。この耳は聞いたのだ。この足は間に合わせたのだ。
呆気に取られている少女の顔を暗闇の中捉えて、ポツリとこぼしたモノに間に合わせたのだ。
「なんで?」
最後に彼女の質問には答えられなかった。答える前にこの身は果ててしまった。嗚呼、それだけが心残りだった。
どうも初めまして。赤木修平です。自分の妄想止まりだったものが文章に変えられるっておもしろそうだな~と思い投稿しました。のんびり投稿する予定なのでご理解お願いいたします。
それでもよろしければ良いおつきあいを!




