グラハム=エンデワルツ
天候:晴れ
環境:都
状況;執務室
雨天無能が来た。
どれだけも召集かけても全く寄り付きもしなかった奴が
どんな心境の変化があったのかはわからないが
だがこれは千載一遇のチャンスだ
次に都にあいつが何時来るのかなんて事、分かるわけがない
いや、来ないという選択肢すらあるのだから
あいつを知らない奴等からすると『そんな事は有り得ない、王家と言うものを馬鹿にしすぎている』と言うのだが
私から言わせれば、あいつにお前らの常識は通用しないと言ってやりたい。
なにせ、3王家を纏めている父上だけでなく残り2王家当主ですら強く出ることを躊躇っている。
父上も私に当主で居たいなら無用な手出しはするなと事ある度に言う。
何故かを聞くと『お前にはまだ早い、知れば二つの選択肢のどちらかを絶対に選ばなければならない、お前達の世代にはまだ早すぎるのだ。』と
たかが1人の亜人でも魔族ですらない人間、爵位も当代男爵と位も低い。
しかもいまだに学院を卒業する事も出来ない落ちこぼれ。
なぜ入学出来たかすら怪しいというのに
「はぁ、一番タイミングがいいのが当家の夜会とは言え、本来の目的ではない2王家に父上も参加する夜会になってしまうとは。」
「子飼いの者達だけのつもりだったのだが、こうなると招待状を出し直さないといろいろ問題になるんだろうな。」
「若様、この度の夜会ですが、中止に出来ないものでしょうか、当家は王家の一つとは言え当主である若様はまだ年若く、他の王家を招くにはまだその準備が出来ておりません。」
「旦那様が国王として国をまとめられてはいますが、若様ではまだ早すぎます。」
「せめて、他王家が主催なら。」
「父上、いや国王陛下も分かっておられる上で夜会に呼ぶようにとのお達しなのだろう、中止は無理だな。」
「そもそも、あいつに招待状を出して来るのか?。」
「都からは出ないように、屋敷を囲み幽閉・監禁状態になっているそうです、と言いつつ雨が降れば無意味でしかないのですが。」
「そうそう、なんであいつは『雨天無能』なんて意味がよく分からない呼び名で呼ばれいるんだ、なぜ、家名と爵位で呼ぶ者がいないのだ。」
「少なくとも私は聞いたことがないぞ。」
「畏怖と言いますか、本人が折につき自ら『雨天無能』と名乗っておりますから、家名や爵位を知らない貴族も若輩者には多いのではないでしょうか。」
「それは貴族として軽んじられて問題ではないのか。」
「そもそも、あの方の家名や爵位は当時の国王陛下や3王家当主、公爵と言った方々が無理やり押し付けたと言ってもいいですから。」
「その中の1人は父上か。」
「お祖父様も一枚噛んでおります、当然、他家の御隠居様々も、表立っては動かれてはおりませんが。」
「あいつはなにものなんだ、亜人でも魔族でもない、ただの人間だぞ。」
「『雨天無能』が一言で表すのではないでしょうか、一執事でしかない私にはこれ以上は分かりませんし、お答え出来かねます。」
「それを知る時が私がこの王家を本当の意味で継いだときか。」
「そうなるかと。」
あいつの『雨天無能』の名が王国の歴史に現れてすでに20年近く経つ
20年前に何があったのか口にする人は居ない、まるで禁忌にでも触れるかのように
私は幼すぎて覚えていない。
私はエンデ王国主催3王家筆頭エンデワルツ王家当主、グラハム=エンデワルツ
エンデ王国現国王、フォン=ガル=エンデの長男