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ジャージ侍  作者: ゆーぼ
3/3

2話 ありえない!

目が覚めるとそこは木の匂いが鼻をつつく、古い民家だった。自分はなんでこんなところで寝ていたのだろう、何があったのか、思い出せない。辰美は混乱した。

近くから、ドタドタという足音が近づいてきた。辰美はこちらに近づいてくる小さな子供を見つけた。子供はなぜか大昔の、教科書で見たことあるような着物を着ていた。

「母さん!母さん!この人、目が覚めたよ!」

子供はなぜか興奮していた。おかしくて吹き出しそうになったが、子供の母親らしき人が来たのでこらえた。こちらも着物だったので辰美は不思議に思った。

「おやまあ、ずっと気を失っていたから、てっきりもう目を覚まさないかとおもったよ」

縁起でもないことを言う。辰美は顔を青くした。

「あんたの真っ青で奇妙な着物、干しておいたから。ビショビショでまだ乾いてないけど」

どうやらジャージのことについて言っているらしい。そういえばさっきからやけに服の材質が気になるとおもった。待てよ、なんでそもそもこんな家で気絶なんかしていたのだろう。そしてなぜジャージがビショビショになっているのか、辰美は頭をえぐるように考えたが、やっぱり思い出せなかった。

「体調はどうだい?かなり具合悪そうだけど」

子供の母親がいきなり質問してきたので少しおどろいたが、すぐに答えた。

「体調はおかげさまで大丈夫ですが、なぜ俺はこんなところにいるのでしょう?」

親子は不思議そうな顔をしてお互いに目を見合わせた。

「あんた覚えてないのかい!?あんたは川から気を失って流れて来たんだよ」

「あ!!!」

何か忘れていたのを思い出した。そうだ俺は誰かに川に突き落とされて、気を失ったんだ、辰美は一瞬ほっとした。しかしあることに気づくとバカな、と叫んだ。

「どうしたの?お兄さん」

子供が「お兄さん」と自分のことを言ったことなどまったく動じないほど、辰美は強いショックを覚えた。

「あの川は俺が流された場所から暫く行くと、そのまま海に流れていく筈だ!その過程でこんな古い着物を着た親子が住んでいる民家など聞いたことない!俺がここに流れて来ること事態おかしいんだ!」

辰美は強く否定した。その顔には不安の色がにじみ出ていた。

子供の母親はちんぷんかんぷんな顔で言った。

「でも、ちゃんと川から流れて来たよ」

「嘘だ!」

「嘘じゃないよお兄さん。俺だって川で洗濯手伝ってたんだから。流れて来るのはこの目でみたぜ。おかしいのはお兄さんの方だよ」

辰美は、はあはあと息をきらしていた。

「ジャージ、いえ、青い着物を干していただきありがとうございました。多少濡れてても大丈夫です」

辰美はどこかぶらぶら歩きながらゆっくり落ち着いて考えようとした。

「あら、どこかに行くのかい?私達これから墓参りに行こうとしていて、あんたに留守番頼もうとしていたんだけど…。くれぐれも山賊には気をつけてね」

ん?山賊?まぁいい、きっと聞き間違えだろう、辰美は一応お辞儀して、行ってきますと言ってから家から出た。


凄いことに町ではない村らしきこの場所はみんなあの親子と同じような家に住み、同じような服装をしていた。ここの住人は稲作が主な仕事らしく、くわで田んぼを耕す姿は、まるで昔話の絵本を読んでいる気分にさせた。

「いい場所だなぁ」

辰美は大きく息を吸って吐き出しながら言った。ここに来てからありえないことが連続して起こっているから、落ち着くためには空気の美味しい場所でリラックスしながら歩くに限る。

辰美はふとそこらへんの家とは違うでっかい家を見つけた。

「でけ〜」

「あの家はこの村の村長さんの家だよ。あの家にはいろいろなものがあるから村民の人達はなにか物が必要なときは村長さんの家まで借りに行くそうよ」

「へ〜。へ?」

辰美は全く訳がわからないような顔をした。それもそのはず、辰美のまわりには人が1人もいなかった。つまりどこから声が発せられたのかわからないのだ。

辰美はマジに焦った。

「せっかく落ち着けたというのに。これじゃあ意味がないじゃないか」

辰美はキョロキョロと周りを見渡したが、やはり誰もいない。辰美は恐怖で顔が青くなっていくのを感じた。

「私はここだよー、辰美」

今度はからかっているように聞こえた。だが、そのおかげで声の主の居場所がわかった。

辰美の頭上には大きな木がある。きっと木登りをしている子供だろう。辰美は上を向いた。そこには確かに自分と歳の近そうな女の子がいた。しかしそこから先は辰美が期待していたのと違った。

彼女は木登りをしていたのではなく、宙に浮いていたのだ。

「ワァー!!」

辰美は恐怖で思い切り叫んだ

辰美は白目をむいてそのまま気を失ってしまった。

「あらら、少しからかい過ぎたかな?」

彼女はさっき自分がからかったのが原因だと考えているらしい。

なんか申し訳なさそうだった。

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