爆殺怪人クリスマ・スー
リア充爆発しろ。
それは愛を得られなかった弱き者たちの心の叫び。
残酷な強者への憎悪から生まれた呪いの言葉。
多くの非モテ達が切に願うも、決して叶うことのなかった望み。
それを今、実現させようと企む者がいた。
「くくく……遂にこの日がやってきた!……奴らに地獄の苦しみを与える日が!!」
薄暗い研究室で、巨大なマシンを背に叫ぶ白衣の男――喪武 狂太郎。
彼は十年間という長い歳月を、リア充撲滅のための研究に費やしてきた。
そしてその研究の成果が彼の背後にそびえ立つマシン、その名も怪人製造機。
マシン上部の投入口に素材となる物体を1つ、もしくは複数投入することで、素材に近い特徴を備えた凶悪な怪人を自動で生み出すことができる機械だ。
狂太郎はゆっくりと後ろを振り返ると、マシン中央に配置された電源スイッチに手を伸ばした。
『怪人製造機、正常ニ起動ガ完了致シマシタ。素材ヲ投入シテ下サイ』
天井のスピーカーから無機質な合成音声が発せられる。
それを聞いた狂太郎は、部屋の片隅に視線を向ける。そこにはガムテープで口を閉じられた大きめの段ボール箱がいくつも積み上げられていた。その中の一つを開封し、素材を探し始める。
「確かこの中に……あった。」
彼が取り出したのは導火線が生えた筒、すなわちダイナマイトであった。
リア充どもを殺せればなんでも良いという訳ではなく、あくまでも彼の望みは「リア充爆発しろ」を実現させること。それを叶えるためには爆発物を素材に用いることが必要不可欠なのだ。
不気味な笑みを浮かべながら、さっそく見つけたダイナマイトを投入口に放り込む狂太郎。
あとはスイッチを押せば怪人が出来上がる……のだが、ここで突然ひとつのアイデアが浮かぶ。
――せっかく計画の実行日を今日にしたのだ、怪人もそれに相応しい姿でなければ勿体ない。
狂太郎は先程の段ボールの山を1つづつ開け、中を確認してゆく。
箱を開け始めてから約30分後、あれから7つの箱を開け、ようやく目的のモノを発見する。
見つけたのは埃まみれになった小さなサンタとクリスマスツリーの置物と、トナカイの角を模したカチューシャ。これらを手に取ると、雑な手つきでマシンの投入口に投げ込んだ。
「これで準備は整った……」
そう小声で呟くと、狂太郎は怪人製造機の動作レバーに手をかけた。
レバーを握った手に力を込め、ゆっくりとレバーを下げる。
完全にレバーが下がったと同時に、聞きなれた合成音声が部屋に響く。
『コレヨリ、怪人ノ製造ヲ開始シマス。暫クオ待チ下サイ。』
それから数分後、怪人の完成を告げる音声とともにマシンの前面に取り付けられた大きな鋼鉄の扉が開き、中から完成品が現れる。
怪人製造機によって生み出されたソレは、蹄のついた二本の足で立ち、樹皮のようにごつごつした赤い肌と鋭い角を持つ、この世のものとは思えない異様な生命体であった。
その姿を見て実験の成功を確信した狂太郎は、怪人に向かって叫ぶ。
「さぁ行くのだ怪人よ!忌まわしき聖夜を血で赤く染め上げるのだ!!」
次の瞬間、研究室全体に轟音が響き、狂太郎の身体は跡形もなく吹き飛んだ。
結論:クリスマスは非モテを殺す