6.交流、ニューコスチュームは涙の味
「セレナ!どうやら勝利したみたいじゃねえか」
ヴォルフ。数ヶ月だけど共に修行した仲だ、私は第一試合だったためにこのあとふらついても支障はないが、ヴォルフは別ブロックということもありかなり待たなくてはならない
「札をいくつかと奥の手をひとつ切ってしまいましたがね。」
「ああ、あのゲージがもりもり増えてくあれな。まぁグングニルNG何て俺でもねらってやるのはなあ…。」
レイドラはまさしく強敵でした。あのNGは卑怯です。
「見つけたー。セレナー!」
私を呼ぶ声が聞こえる。見てみれば自称トレジャーハンターの少女ミカンの姿がそこにはありました。
「ミカン。来ていたのですか、いえそれよりも久しぶりですね。お変わり無いようで安心しました。」
「久しぶりね。試合見てたわよ。
というかお変わり無いようで安心しましたってどういう意味よ」
「宝探しに夢中になりすぎて変なものを食べさせられたり知らないうちに魔改造されていたりしてないか心配してましたので。」
「あんたの中での私の評価が酷すぎて、笑いが出そうだわ。ほら、勝利祝いに服買ってあげるからいくわよ!」
「いえ、私は服なんて要らないのですが…。それに次の対戦相手の視察をしたいのですが。」
「前私があげた服ですら着ないでそんな痴女みたいな格好して。セレナは美人さんなんだからもっと着飾りなさいよー。それに視察なんてしなくたってあんたなら勝てるわよ」
「動きづらいのは困るのですが…。というか引っ張らないで、ちょ…。」
良いから、と引っ張られていく私。ヴォルフに視線を送れば、見といてやるよとサムズアップで送り出される始末。
ちくしょーと内心思ってたりしながら連れ去られ天空都市内を進むこと10分。ちょっと寂れた区域にある一つの店の前、目的地へと着く。
二体の狼の像が左右対称で飾ってあり扉は黒一色に看板がぶら下がってます。なんとも怪しい店です。
「もぐもぐもぐ――」
「先食べちゃいなさいよ。セレナって焼きクレープ好きよね。そんなに美味しい?」
「もぐもぐ―――――ごっくん。ええ、甘いものは私にとっては燃料みたいなものなので」
「あんだけ食べてこの体型とか世の女性に喧嘩売ってるよねー。」
とか雑談をしながらも【一見さんお断り】とかかれた看板の置いてある扉を開けて通る、中にはヘンテコな機械や訳ありそうな書物、翼のあしらわれたやたら豪華な槍など様々なものがおいてあった。
呼んでもいないのに手にグングニルが召喚される。え、なんで?
「グングニルか、始めてみたワイ。大方ゲイボルグに嫉妬しているのであろうよ」
奥から出てきた白髪のおじいさんはそういってくれるけど、グングニルが嫉妬?ツンモード登載しているこの子が?
見ただけなのに嫉妬というのも違う気がするけど。とりあえず一回送還させよう。
「ローデン、この子の服がほしいのだけど」
「随分めんこい娘だが、ワシにはセンスがあらん。その子を着飾れる気がせんワイ。じゃから勝手に奥の部屋のものを使って構わんから着飾ってみい」
「了解。さあいくよ!」
ローデンさんが奥へと指を向けてちょいちょいやるのを見て、私を笑顔で引きずり連れて行くミカン。え、ちょっと待って………!
「しくしく。お嫁に行けません。」
「元々畏れ多くてあんたを嫁に貰える奴なんて稀有な存在よ。」
「しっかし馬子にも衣装とはいうが、元がしっかりしてるのに良い衣装を渡すと大変なことになるのぅ。」
鏡を見せられる。
上質な白いマントに胸元の開いた真紅のドレスに真紅のスカート、黒い編み上げブーツ…。え、なにこの痴女。私?
「こんな、こんな姿恥ずかしいで2回戦出ろっていうんですか!?」
「そこまでやばくないでしょ。」
「似合っておるぞ?」
この二人、センスがないのでしょうか?いえ、服自体は割と良いのですよね、DEFが5上がってますし。何故か上がらなかったあのDEFが!
ミカンの好意ですし泣く泣くこの格好で出ることとしましょうか。
「そーじゃお前さん、魔法をメインにつかうんじゃろならばこれをやろう。」
ローデンさんが突然銀色の腕輪を投げてきたので慌ててつかみます。ちょっと古いですがデザインは悪くありません。
「そいつは魔力を闘気に代えてくれる代物でな、最近は魔力使える奴がいないから腐ってたもんじゃ。」
そう言って白い歯を見せてくれるローデンさん。その白い歯が入れ歯だと判ってもかっこよく見えます。
とは言え、貰ってばかりでは気がすみません。なにか出来ることをと言おうとしたところミカンに止められました。
どうやら、私とミカンが宝探しでゲットしたものはローデンさんへと買ってもらっているらしく、ミカンの持ち込むものはいつも品質がよかったり希少なものであったりと、ローデンさん側もかなりの得をしているためになにかお礼をしたいという気持ちで今回天空都市に来ていた私を連れてきて貰ったというわけでした。
売ったりするのは全てミカンに押し付けてましたからね。しかし、そんな希少なものを私たちは見つけていたのですか…。まぁバズーカ団とかいうのが居たくらいですからね。
それならば、と遠慮なく貰っておきます。服装はもはや諦めましょう。ド派手で痴女だなんて事は忘れて、ええ、実力が伴っていれば問題はありませんし。
ローデンさんにお礼をいい店を出ます。
「どう?いい気分転換になったでしょ?あんだけ激戦だったんだから疲れてたと思うし。」
それなら寝かせてほしかった等とは言いません。ミカンなりに私を労ってくれてるのでしょうし、何よりあれくらいならばベッドが恋しくなる程の疲労はありません。
「ええ、お陰で良い気分転換になりました。」
服装さえもう少しセンスよければ満点だったのですが………。
コロッセオへと戻り入り口を抜けたところで声をかけられて立ち止まる。
オレンジ色の胴着と黒い胴着の二人組が目の前に。
「セレナさん、と言ったか。先程はお互い死力を尽くしたいい勝負だった。」
「こちらこそ良い闘いが出来ました。それと、貴方の想いの籠った技を模倣して申し訳なかったです。」
そう言って頭を下げる。結構シリアスなシーンなのですから後ろで小さく「頭を垂れよセレナンダー」とか言わないでくれませんかね…。
「いや、気にはしていないさ、貴女の奥義か何かなのだろう?それに仇はこのザゴンがとってくれるみたいだからな!」
紹介されたザゴン君、原作にも登場しているキャラで所謂レイドラのコンパチキャラである。
そのため彼も『タイガーボンバー』を使ってくるかもしれない。とは言え腕輪がある今2倍のゲージを吐かなくてすむのはありがたい。『守りを捨てし猛者』はもう対策されてしまっているだろうし。私の雷自傷コンボもあのタイミングで使う=LIFEを減らす価値があるってことだしね。そもそもあのタイミングで雷が打てたこと事態奇跡みたいなものですし。
「おいおい、勝手に決めないでくれよな。俺はザゴンだ、宜しくな。」
「もし闘うとしたら決勝戦ですね。会えるのを楽しみにして居ます。」
「ああ!だがそっちのブロックには前回覇者がいるぜ?一筋縄じゃいかねえと思うけど平気そうかい?」
「平気かどうかではなく、平気にする。それがこの場に居る以上の心の持ち方かと。」
その答えに満足したのか笑みを浮かべるザゴン君。
「ところでなかなか扇情的な衣装だな。わざわざ着替えてどうしたんだ?」
「似合うとは思うが目のやりどころに困るな…。前のもそうだったが。」
そこは空気を読んで最後までスルーしてほしかったです……。
前回私を破りベスト8と輝いたアメリアちゃん。ヘンリーという少女と戦い敗北。ヘンリーとかいうキャラも私はしらない。でも、ヴォルフのような例外もあるし…。
「……………着替えたのか、まぁ似合うと思うぞ。」
ヴォルフがやって来る。これは優しさなのでしょうか。なにか可哀想なものを見る目で私を見ていますが。
試合を見ることはできなかったですが、結果を見るにストレート勝ちだったようです。
「ごめんね、でもヴォルフなら勝てるとは思ってたました。」
「たりめーだろ。飛び道具主体な奴なら俺が負けることは基本ねーわ。お前みたいに一撃必殺をもってねえ限りな!」
ヴォルフの対戦相手は原作キャラのアスカという弓使いの娘で、ガー不な技を多く持っている代わりに近距離が極端に弱いというキャラであった。
NGに『滅!』があるヴォルフは遠距離相手ならかなり有利に闘える為に心配はしていなかった。
むしろアスカは私が闘いたかった。ガード出来ない私にガー不なんて意味ないしね。
「そういえば、私の対戦相手はどういった相手でしょうか?」
「ああ、お前の相手はドクターNEO。変幻自在とか呼ばれてるやつだ。」
ドクターNEO。彼も原作に登場するキャラです。変幻自在の名の通りトリッキーなキャラで苦手なのは投げキャラ。これまた手こずりそうな相手に当たってしまいましたね…。
とは言え対策は出来ます。彼は私同様紙装甲の筈です。ならば固定ダメージのサラマンダーが活きます。
ドクターNEOとの試合は明日。ならば対策もたてられることでしょう。
今回も原作キャラが相手です。今から楽しみでワクワクが止まりません。