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記憶引き継いで NEW LIFE  作者: 九〇式日本人
1.NEW LIFE を始めよう
3/16

こうして、NEW LIFE が始まった

 コンコン、とドアがノックされる音で俺は眠りから覚めた。

 続いて、ドア越しに


「シン様、おはようございます。すでにお目覚めでしょうか?」


 と言う、若い女性の声が聞こえてきた。記憶を辿って、誰の声なのか思い出す。

 …どうやら、マリーという名前のメイドさんらしい。年齢は19歳で、まだ見習いのようだ。


「はい、いま起きました」


 と、ドアの前に立っているであろうマリーさんに向けて返す。


「では、まもなく朝食の時間となりますので、食堂へお越しください」


「わかりましたー」


 俺がそう言うと、失礼します、という言葉のあとにマリーさんがドアの前から立ち去る音が聞こえた。


 ベッドの上で体を起こし、部屋の中を見る。昨夜は暗くてあまりわからなかったが、今は窓から朝日が差し込んでいて、何があるのかよく見える。

 机・本棚・クローゼット、見たところ全て木製のようだ。

 ベッドの横には背の低いチェストがあって、その上に時計が置かれている。

 時計の盤面は、前世にあったものと同じで、12を頂点に右回りで1から12までの数字が円形に並んでいる。今の時刻は、午前7時の少し前を指していた。


 …そういえば、この世界の文化水準はどの程度のものなのだろうか?


 部屋を見た限り、電子機器と思われるようなものは存在していない。となると、少なくとも、前世で俺が暮らしていた平成の世界よりも進んでいる、ということはなさそうだ。

 まあ、“魔法”というものが存在している以上、一概に前世の水準と比較するのは難しいかもしれないが。

 とりあえず、この部屋だけでは判断できないので、朝食の後にでも家の中を探索してみようか。


 そんなことを考えつつ、ひと通り部屋の中を確認した俺は、服を着替えるためにベッドを出た。









 部屋を出た俺は、朝食の前に顔を洗おうと思い、庭にある井戸に向かっていた。

 一応、家の中にバスルームはあるのだが、顔を洗うくらいなら井戸でも十分だ。

 ちなみに、俺の部屋は二階にあり、食堂やバスルームなどは一階だ。


 板張りの廊下を進んで階段を下りるが、意外と傾斜が急なので、5歳の俺には結構キツイ。

 一段ずつ慎重に下りていると、突然、後ろから持ち上げられた。


「うわ!」


「おはようシン。ずいぶん大変そうじゃないか」


 後ろから聞こえたこの声は…


「おはようございます、ちちうえ。……いきなり持ちあげるのはやめてください」


 俺の、この世界での父親のものだ。

 名前は、シュウジ・サヴェンスト。

 外見は、イケメンというほどではないが、悪くない顔に黒髪で、少し細身だ。身長はおそらく175cmくらいだろう。年齢は…三十代くらい、か?

 我が家の暮らしぶりを見る限り、けっこうな地位に就いていると思う。のだが、あいにく俺の記憶には父親、改め父上が何をしているのか、という情報がない。

 そのうちわかることだとは思うが、俺の方から聞いてみるのもアリかな。


 俺の抗議を無視して、父上は俺を抱えたまま階段を下りる。


「さあ、ついたよ」


 一階に到着すると、そう言って抱えていた俺を降ろした。


「…ありがとうございます」


 お礼を言っておく。決して、一人で下りられなかったわけではない。けど実際、苦労していたのは確かだから、助かったのは事実だ。

 …少し不満気な声になってしまったかもしれないが。


「はは、気にしなくてもいいよ。それより、これから朝食かい?」


 と、そんな俺の様子を気にすることなく、父上が俺の頭に手を置きつつ聞いてくる。


「はい。けどそのまえに、かおを洗おうとおもって…」


「ああ、なら井戸へいくのか。ついでだし、僕も一緒に行くよ」


 ということで、父上と二人で井戸へ行き、顔を洗ってから食堂へと向かう。

 途中、何人かのメイドさんとすれ違ったのだが、その中にマリーさんもいて、目が合ったら手を振ってくれた。

 マリーさんは、黒髪ショートカットの童顔で背も低く、可愛らしい人だった。






 食堂に着くと、すでに兄上と母上が座っていた。


「二人とも、おはよう。」

「おはようございます」


 と、まずは父上が二人に向かって声をかけて自分の席に座り、俺も同じように声をかけた後、席に座る。


「おはようございます、父上。おはよう、シン」


 最初に返事をしたのは、俺の兄、シュウヤ・サヴェンストだ。

 俺とは10歳離れていて、我がサヴェンスト家の嫡男である。外見は、父上によく似ている。

 俺のことを可愛がってくれていて、最近では魔法の訓練にも付き合ってくれているらしい。


「あなた、シン、おはよう」


 続いて、俺の母であるマリア・サヴェンストが声を返す。

 ウェーブのかかったブラウンの髪が肩まで伸びている。年齢は、父上と同じく三十代くらいだろうか。綺麗と言うよりはかわいい寄りで、優しそうな笑みを浮かべている。服を着替えるついでに見た俺の顔は、母上に似ている気がするな。


 あとは、妹もいるのだが、母上曰くまだ寝ているらしい。後で会ったら挨拶しておこう。


 俺達が席についたところで、メイドさん達が料理を運んでくる。メニューは…


「なっ!?」


「どうしたんだ?シン。そんな大声を出して」


 思わず声を上げてしまい、父上に突っ込まれる。


「い、いえ、なんでもありません!」


 俺が思わず叫んだ理由。それは、運ばれてきた料理のせいだ。

 目の前に並べられた、白飯・味噌汁・玉子焼きに焼き魚。味までどうかはまだ分からないが、見た目は完全に和食だ。

 …まさか転生して再び和食に出会えるとは。


「それじゃあ、食べようか。いただきます」


 テーブルの上に料理が並んだのを見て、父上が手を合わせながら言った。


 和食だけでなく、“いただきます”もあるのか…。これも、この世界では普通なのだろうか、それともサヴェンスト家だけなのか…?

 今のところ、サヴェンスト家以外を知らないため判断できないので、今後調べてみよう。

 しかし、家具や服装なんかは完全に西洋風なので結構な違和感があるな……。


 ひとまず、今は目の前に並んだ和食のようなものを実際に食べてみることにする。

 ……味も、前世で食べた和食そのままだった。







 いい意味で、思いがけない出会いがあった朝食を終えて、食堂を後にする。

 さて、これからどうしようか。一旦部屋に戻るか、このまま家の中を見て回るか……。

 しばらく食堂の前で悩んでいたのだが


「シン」


 と、父上に呼び止められた。


「なんでしょうか?」


「シン、実は今日からお前に家庭教師をつけようと思ってね」


 家庭教師?なんというか、唐突だな。しかも今日からなのか……。


「かていきょうし…、ですか」


「お前ももう5歳だし、そろそろ勉強し始めてもいい頃だろう。…まあ、家庭教師と言っても僕の友達の娘さんなんだけどね」


 父上の友達の娘……、何歳くらいなんだろうか。

 ウチの兄上が俺より10コ上、つまり15歳だから、同じくらいか…?だとすると、家庭教師にしてはかなり若いような気が…。むしろ、“子守”と言ったほうがいいかもしれないな。

 黙り込んだ俺を見て、父上が笑顔を浮かべながら


「勉強と言っても、そんなに難しいことはないから心配しなくても大丈夫さ。とりあえずは読み書き位だし、娘さんは優しい子だから怒られたりしないよ」


 と言ってくれた。実際のところ、特に心配していたわけでもないのだが。


「なら、よかったです。せんせいは、なんじくらいに来られるんですか?」


「多分、あと一時間もすれば来るんじゃないかな?勉強は、シンの部屋で見てもらう事になってるから、このまま部屋に行って待ってるといいよ。僕はそろそろ仕事の時間だからね。」


 チラリと、壁に掛かっている時計を見る。今は、8時を少し過ぎたくらいだ。ということは、だいたい9時くらいか。


「はい。父上、いってらっしゃい」


「ああ、いってきます」


 そう言うと、父上は仕事に向かった。

 にしても、家庭教師か…。この世界のことを知るにはうってつけじゃないか、素晴らしいタイミングだな。

 幸い、俺は5歳だから、常識的なことを聞いても不審には思われないはずだ。

 それから、文化や産業・技術のことなんかも聞きたいな。当然、怪しまれない程度に、ではあるけど。


「よし、とりあえず部屋の掃除でもするか…」


 そんなことを呟きつつ、俺は自分の部屋へと向かった。

あまり話が進みませんでした。


ひとまず、最低でも週に1回は更新したいと思っています。

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