胸
意を決して彼女に告白した。彼女はそれに応えてくれた。
胸の内にあったものを吐き出し、身体が軽くなったようだった。
彼女は僕によくしてくれた。僕も尽くしたつもりだ。
ある日彼女は言った。
「本当の私を知っても好きでいてくれますか?」
僕はもちろんだと答えた。
彼女は上着を脱ぎ始めた。
僕はドキドキしていた。
彼女は身体を覆っていた布を脱ぎ去った。
彼女には胸が無かった。
別に貧乳とかそういう話ではない。
本来胸が有るべきところに、大きな穴がポッカリと空いていた。
向こうにある壁が見える。
「好きでいてくれますか?」
彼女が言った。
僕は応えることが出来なかった。
彼女は涙を浮かべていた。
僕は逃げた。
涙が止まらなかった。
言葉遊びの類。
そこまで遊んでない。
心に穴が空いていたら良かった。
胸にポッカリと穴が空いていた(物理)