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魔術と暴力  作者: 純一郎
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原始の双子

「グンマー」ネタです。その手のものに不快感を示す方はご遠慮下さい。

 丸太から削り出された棍棒が風を切り、石の穂先の槍が鋭く迫る。棍棒は銃を持った男の頭を粉砕し、槍は正確に心臓を貫いた。しかし、暴力の化身、狩りの神の祝福を受けた二人はそれに満足をしない。なおも自分たちを取り囲む完全武装の軍隊を相手に、その原始的な武器でもって迫り、逐次粉砕していく。銃などでは、原始の怒りに勝てはしない。

 ――という想像から始まるストーリーが彼女たちの好みだ。双子の姉妹、ネミィとサミィは大変仲が良く、秘密の場所で二人でそんな想像をしながら空想上の軍隊とぶつかり合う。そう、相手は空想だが、彼女らが手にしている得物は本物だ。大きな木の棍棒に、石を削り棒に括った槍。どちらも彼女らのお手製である。彼女たちは齢十三、つまり中学一年生であるというのに、異様な怪力を誇っている。遺伝的なものなのかはわからないが、彼女らの力のルーツはつまるところ、彼女の出身地からなる。彼女達の一家は群馬の某地域からこの御影市にやってきたのだ。どういうわけか、彼女たちに言わせれば、群馬ではなく“グンマー”であるが……。

「ねぇサミィ。てっぽーって、やっぱり当たると痛いかな?」

「痛いっていうか死んじゃうよね。てっぽーは怖いよ?」

 彼女たちは得物を振り回すのをやめ、それぞれ得物を置いて話し合う。軍隊との戦争はひとまず休憩だ。より想像の精度を高めるための会話は、彼女たちを強くする。彼女たちの怪力は、今は空想の中でしか振るわれずにいるが、一度現実でその力を解き放ったときは、何者よりも強い純粋な暴力へと変貌するのだ。彼女たちはまだそれに気づいていない。

「どんぐらい早いのかな。ばーん! ってなってからよけれる?」

「ううん。てっぽーのたまは、音よりも早いんだよ。だから、ばーんって聞こえた時にはもう身体に穴があいちゃってるよー」

「うぇ。ダメじゃん。じゃあ、引き金を引くよりも先に避けてないとダメだね」

「そうなるね。見てからはよけられないよ」

 簡単そうに彼女達は言う。実際、彼女達からすれば簡単なことだろう。彼女たちの観察眼と瞬発力をもってすれば、決して難しい芸当ではない。確かに、銃の発砲を視認してから弾丸を回避するということは、いくら機敏な獣にも出来ることではない――しかし、逆に言うならば、機敏な獣に出来ることならば、彼女達にも出来るということなのだ。

「どんぐらい強いのかな。この棒で防げる?」

「難しいと思うよ。テレビで、ちょーふとっちょなコンクリートに穴あけてたから」

「うぇ。木じゃダメダメだね。防ぐことはできないね。やっぱり、避けないとだめか」

「そうだね」

「強いね鉄砲。ねぇネミィ。お腹すかない?」

「そうだね。お腹がすいたねサミィ」

 子供の会話は多くが突飛で、脈絡がない。今鉄砲についての話をしていたら、急に空腹に気がついたのだろう。ネミィは姉におやつを提案した。サミィも違和感なくそれを承諾する。身体を動かすのが二人は好きだが、食べることはもっと好きだ。

「マジねぇのとこにいこうよネミィ」

「そうだね。そうしようサミィ。今日のマジねぇのお菓子はなんだろうね」

「きっと今日はシュークリームがあるよ、ネミィ」

「どうかな。今日はプリンかもしれないね、サミィ」

 “マジねぇ”というのは、彼女たちの住むマンションに住んでいる若い女性のことだ。魔法使いのお姉さん、だからマジねぇとアダ名がついている。彼女は二人と交友があったのだ。二人は、休日のお昼時には彼女からおやつをもらうのが日課となっている。最近では彼女も慣れたもので、お昼からは二人にお菓子を用意するようにしている。二人の両親もそれは知っており、たまにお礼と称して何かを贈ったりするようになった。若い一人暮らしの女性の家計を圧迫するのが申し訳なく思うのだろう。そうでなくても、両親は何かにつけて彼女を気にかけるようにしていた。……彼女の身長が、自分たちの中学生の娘より小さいということも、両親の庇護欲をくすぐるには十分な要因ではあったが。

「いつかこれでかっこよく戦える日がくるといいね、サミィ」

「そうだねネミィ。ヒーローのようにみんなを救えるような戦いをしたいものだね」

「グンマーだもんね」

「グンマーだからね」

 二人は笑い合いながら、マジねぇの部屋を目指して歩いていった。すでにベランダから、彼女は微笑みを浮かべて、二人がくるのを待っていた。


「マジねぇ」とは2話目登場の魔女のことです。

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