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枯れゆく時に思ふこととは  作者: 靉靆
桜の眼差し
8/13

桜の眼差し、人のこれから

「すごいなぁ」


 一人の学生服に身を包んだ少年が満開の桜の木を見上げながら感嘆の声を漏らしている。桜の木は四百年近く生きて来た為、このような言葉は幾度も聞いている。


 そんな桜の木の思いを知るはずもない少年は、桜の木を見て目を大きく見開いている。


――ここまで大げさに驚いている人は今までにはいなかったかな。


 その少年の様子は桜の木には些か滑稽に感じられた。


 ここまで驚いているのだから少年はここに来るのが初めてなのだろう。だからと言ってそこまで驚く程のものなのかは桜の木にはわからなかった。また、このような印象的な少年はそんなにいるものではない為か、桜の木は少年に少しだけ興味が沸いてきた。


 桜の木が少年の様子を見守っていると、少年は徐に桜の木に近づいて来た。すると、少年は不意に両手を大きく広げ、桜の木の幹に抱きついた。


――不思議な事をする少年だな……。


 桜の木がそんな感想を抱いていると、少年から行動の理由と思われる言葉が発せられた。


「あははっ。当たり前だけど全然届かないや。この桜の樹齢はもう数百年になるんだろうなぁ……」


 どうやら少年は桜の木の太さから樹齢を考えていたらしい。


 少年が自身で言葉にしていたが、桜の木の幹が少年の手では届かないのは当たり前のことである。桜の木は既に四百年近く生き続けている。その間、毎年少しずつではあるが桜の木は幹を太くしていった。その結果、桜の木の幹の周囲は今や七メートルを越える太さにまで達している。長寿な桜の木であれば千年以上行き続ける為、四百年と言う時間はそれらの桜の木と比べるとまだ若い。それでも人間が相手にならないほどの大きさになっていることには変わりなかった。


「あの……」


 桜の木の周りを興味深げにぐるぐる回っている少年に誰かが声をかけた。


「……ええと……僕ですか?」


 周囲をキョロキョロと見回して他に話しかけられたであろう対象がいないことを確認した少年は、自分を指差してそう答えた。


「あ……はい。その……何をしていたんですか?」

「あぁ……なんと言いますか……この桜の木が立派だったので樹齢がどれくらいなのかと思いまして」


 少年は何をしていたのか尋ねられ、少し照れくさそうにそう答えた。


「そういえば君のその制服……僕が行く学校の制服だよね? あの、よかったら名前を聞いてもいいですか?」


 桜の木は少年を変わった子だと思い始めた。


 少年がここに現れてすぐの奇行とも取れる行動や、初対面の人に対して物怖じせずに名前を求めていること。なかなか大胆であり、今までは少年のような人を見かけた記憶がなかった。


「はい。私は二年生の日野山楓(ひのやまかえで)です。あの……あなたは?」

「あ、名乗るの忘れてた……ごめん。僕は季渡守伸吾(きどもりしんご)と言います。実は今日からこの学校に通う事になるんだけど僕も二年生なんだ」


 伸吾と楓は少しだけ順序が狂った微笑ましい自己紹介をしていた。


 すると、何かを思い出したように伸吾が焦り始めた。


「あんまりのんびりしてたら遅刻しちゃうね。早く行こうか、日野山さん」

「ふふっ、そうですね」


 一組の少年と少女は少し早足で学校に向かい始めた。


――ちょっと面白い子達だったな。


 桜の木はそんな感想を抱きつつ、伸吾と楓の背中を見送った。


 これが桜の木と伸吾の最初の出会いであり、伸吾と楓の最初の出会いだった。

今回はすっごく短いです。言い訳になりますが執筆時間が全然確保できませんでした。。。

楽しみにしてくださっている人がいるようでしたら本当に申し訳ないくらいに短いです><


次回はちゃんとある程度文章量書けるようにしたいのですが……


ということで今回はほとんど物語が動いてません。

しかも妙にあっさりしています。

気軽な息抜きだと思ってくださればと思います。

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