7-2 《知識でなく智恵を教える》
A: 教育論の2番目は、「知識でなく智恵を教える」だよ。
今の学校では、智恵より知識が重視されているというんだ。
しょう子:知識と智恵はどう違うの?
A:智恵とは知識を応用する能力なんだ。だから両方大切なものだよ。
知識を大事にして智恵をおろそかにしてはいけないし、智恵が大事だからといって知識を無視してもいけない。
しょう子:両方教えることが大切なのね。
A:そう。
ところが残念なことに、今の学校教育では、知識ばかりを教えて知識偏重になっている。
これでは智恵は成長しないというんだ。
しょう子:どうしたらいいの?
A:子供たちに知識を一方的に与えないで、自分で発見させなさいというんだ。
しょう子:私の学校でも授業は一方的だわ。生徒はただノートをとるだけだもの。
A:ほとんどの学校がそうだよね。
さらにこうもいっている。事実を教えるのに、1つだけの解釈を押し付けるのではなく、相反する解釈も提示すべきだといっている。
しょう子:自分で判断させるのね。
A:それが子供たちの成長にとって大切なことだというんだ。
それを日本への原爆投下を例にして説明しているよ。
しょう子:広島と長崎の。
A:そう。
アメリカの今の学校教育では、原爆投下は終戦を早めることによって犠牲者を減らすことができたと教えている。
しょう子:そうじゃないの?
A:日本への原爆投下の是非には、いろいろな意見があるけど、『神との対話』がいいたいことは、それが良かったという解釈を、子供たちに一方的に押しつけてはいけないということなんだ。
その事実のみを提供して、子供たちにその是非を考えさせることが、学校教育では大切なことだというんだ。
しょう子:3番目は、「霊性」を教え育てるだったわ。
A:そう。学校教育の中で、人間の「霊性」を教えなさいといっている。
しょう子:「霊性」を教えるって。
A:第1に、人間は魂-精神-身体からなる霊的存在であること、第2に、人生の目的は、様々な出来事を通して、魂を成長させることにあることを、教育の中で教えなさいというんだ。
しょう子:アメリカはキリスト教の国だからね。
A:ところが現実には、ニールさんが嘆いているように、アメリカの公立学校では、宗教教育はできないそうだよ。
しょう子:日本はなおさらね。
A: 日本では、倫理道徳の教育ですら議論になっているからね。
しょう子:宗教はまず無理……。
A:『神との対話』には、教育方法の手本として、シュタイナー教育が上げられている。
しょう子:シュタイナー教育?。
A:シュタイナー(ルドルフ・シュタイナー)はドイツの人で、ウォルドルフ・スクールを創立したんだ。
ウォルドルフ・スクールでは、生徒だけでなく教師も、幼稚園から小学校までいっしょに進級していく。生徒はずっと同じ教師に教わるんだ。
しょう子:わあ!すごい。幼稚園から小学校まで担任の先生がいっしょなんだ。
A:教師たちは、生徒たちをわが子のようによく知ることができるし、生徒と教師には、ふつうの学校では考えられないほど、深い信頼関係ができるんだ。
しょう子:いっしょに過ごす時間は親子より長い……。
A:そういえるよね。
生徒たちが卒業すると、教師はまた最初の学年に戻って、別のグループの生徒たちと一から始める。
ウォルドルフ・スクールの教育では、人間関係と絆、愛は、知識と同じくらい大切だと考えているんだ。
〈つづく〉
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