一話
道場の更衣室を開ける。すでに袴に着替えた堀ちゃんがにやりと笑って、こちらに近づいてきた。
「さっきぃ、早く着替えて。おもしろいもの見せてあげる」
と、堀ちゃんは手招きをして更衣室を出ていった。更衣室の隅で固まっておしゃべりしていた年下の子たちが、「サキちゃん、おもしろいものってなあに?」と目を輝かせた。
「知らない。堀ちゃんに聞いてよ」
さっさと道衣に着替えて、スポーツバッグをロッカーに突っ込んだ。年下の子たちに、「あんたたちはもうストレッチ始めてて。あと、先生が来たら言っといてね。自分と堀ちゃん、ちょっとだけ遅刻しますって」と言いつけて、自分は更衣室を出た。
道場の玄関前で、堀ちゃんはもうスニーカーを履いて待っていた。自分は呆れながらも、やむなく運動靴を履いて堀ちゃんに駆け寄った。
「堀ちゃん、もうすぐ稽古はじまるよ」
「ちょっとくらい遅れたって大丈夫だってば。だって今日の師範、宮子先生だよ」
さらっと言って、堀ちゃんは歩き出す。宮子先生は気の弱いお姉さん先生だ。小学生なのに、教え子の堀ちゃんの方が偉そうな口を利く。
ちなみに、堀ちゃんの言う『ちょっと遅れる』は、ふつうの感覚での『ちょっと』じゃない。自由な女の子なのだ。おおいに遅刻する気でいるのだろう。
そう思って、あたしはチュッパチャプスを一個持ってきていた。更衣室で包装をやぶって、もう口に入れてある。三十本入りで買って、最後まで余ったやつ。プリン味。デザート系の飴はあんまり好きじゃない。
堀ちゃんは道場を横切って、隣にある公民館の裏手に回った。公民館の裏には林があって、その中へと足を踏み入れる。雑草が靴と袴の間からちくちくと触る。痒みと秋の寒気に耐えながら、必死に堀ちゃんのあとを追う。
ふいに堀ちゃんが足を止めた。
日当たりが悪いためか、その一角は周りと比べて薄暗く、木や草があまり生えていない。空を見上げると、日光を遮るように高速道路の底面が頭上を覆っていた。
「さっきぃ、あれ」
堀ちゃんがあたしの肩をたたいて、痩せた木の根元を指した。そこには真っ黒い何かが横たわっている。いきなり堀ちゃんから背中を押され、ちょっとつんのめりながら、自分はその黒いものに近づいた。そして、小さな悲鳴を上げる。
カラスの死体だった。
黒い翼には枯れ葉がつもっている。二日前に降った季節外れの粉雪も、いまだに残っていた。首すじのところについばまれた跡がある。そこだけ赤黒く凝固していた。生気のない目を虚空に投げ、カラスはぐったりと死んでいた。
カァ、と頭上で鳴く。見ると、痩せた木々にとまった数羽のカラスが自分たちを見下ろしていた。
堀ちゃんが駆け足でやってきて、木の中腹にキックした。騒々しい音を立て、臆病なカラスが二羽逃げていく。それ以外のカラスは我関せずとばかりに木を譲らない。
舌打ちをして、堀ちゃんはカラスの死体のそばに屈んだ。
「さっきぃ。このカラス、ちょっと普通じゃないんだよ」
たしかに普通じゃない。だって死んでいるんだもの。
「埋めてあげる?」
堀ちゃんは首を振った。誰がそんな面倒くさいことするもんか、とでも言いたげに。その代わりに堀ちゃんは、彼女の考えるそのカラスの普通じゃないところを説明した。
「この死骸、昨日見つけたんだ。二日前に降った雪が積もってるから、たぶん、こいつが死んだのはもっと前。だけど、少なくとも昨日からぜんぜん変わってない。おかしいでしょ」
「おかしいかな」
堀ちゃんが頭上を指さした。一羽のカラスが、ばさり、と羽ばたく。
「カラスは共食いする動物なんだ。だけどこいつ、一回首んとこ突つかれただけで、ほとんど食べられてない。しかもこんな地面で倒れている。普通、カラスって自分のねぐらで死ぬものでしょ」
堀ちゃんの話を聞きながら、口の中でプリン味を転がす。死骸の目を眺めていると、心なしか息が詰まった。
堀ちゃんは足もとにあった枝で死骸につもった枯れ葉と雪をどけた。いっしょに羽が抜けて、寒そうな肌が間からのぞく。
「きっとこのカラス、病気持ちだったんだよ。体に毒を持っていて、ねぐらに帰る前に力つきちゃったんだ。そんで、ちょっと食べてみたカラスが、うえ、まず、って。だからみんな、こいつのこと食べないんだよ」
あたしは首を傾げる。
「じゃあ、なんでカラスたちはこの死骸に集まるんだろう。もう食べるつもりなんかないんだよね」
言いながら、ふとある光景を思い出す。いつか堀ちゃんたちと、家族ぐるみで原宿に出かけたことがある。駅前広場の隅っこで、これと似たようなカラスの死骸があった。それは何日間も放置されたように腐りかけていて、不思議に思った堀ちゃんが、通りかかった警官にこう尋ねた。
『なんで片づけないんですか?』
そんな彼女の質問に、警官はあごに手を当てながら答える。
『ああいうのは区の仕事だから、おじさんにはよく分からないよ。でもおそらく、ああして仲間の死骸を晒すことで他のカラスを寄せ付けないようにしているんだろう。戦国時代の晒し首みたいにね。悪さをしたら、おまえらもこうなるんだぞって。そういうカラス除けなのさ。いやしかし、いくらなんでもそろそろ除去するよう言わないとなあ。ご忠告ありがとうね、お嬢ちゃん』
なんとも悪趣味な話であった。
堀ちゃんは空中で枝をぐるぐるさせながら、うぅん、とうなって考えた。堀ちゃんもそのときのことを思い出しているのかもしれない。
自分も、堀ちゃんと一緒に考えてみる。原宿の警官が言うように、カラスの死骸がカラス除けになるのなら、こうして彼らが死骸により集まってくるのはおかしい。加えて、共食いをする気もないようだ。ならば、彼らの目的は一体なんだろう?
堀ちゃんの手にした小枝が、空中で止まった。
「たぶん、こいつらは仲間の死骸を餌に、獲物が来ないか見張ってるんだよ。カラスって弱肉強食では上位だから。野犬や野良猫でもかまわず襲うって話だよ」
うん、きっとそうだ、堀ちゃんはそうつぶやいて、枯れ葉をどける作業に戻った。自分はチュッパチャプスを口から出して、小さくため息を吐いた。
こうなった堀ちゃんは長い。彼女は死を見るのが好きだ。死んだものを延々と眺めては、なんでこいつは死んだのかとか、こいつの人生はこうだったとか、あれこれと想像を巡らせる。終いには、あたしがいることを忘れて独り言までつぶやきはじめる。そんな彼女の口からは、『かわいそう』という言葉は出ない。いや、言うには言うが、自分には、彼女が心の底から『かわいそう』と言っているようには思えない。体裁でしかないのである。
合気道の稽古を終えると、外は暗くなり始めている。母の迎えがくるまで、自分たちはまたカラスの死骸を眺めていくことにした。
カラスの死骸はずたずたに荒らされていた。代わりに、そのそばで一匹の猫がカラスたちによって喰われていた。ハイエナしにきた野良だろう。運悪く、あの猫は罠にかかってしまった。
「あたしの推理は正解だった」
堀ちゃんは嬉しそうに笑って、カラスの集団に突っ込んでいった。カラスたちはぎゃあぎゃあと喚きながら四方に散っていく。残ったのは荒らされたカラスの死骸と、さらにずたぼろにされた野良猫の醜い姿だけだった。
野良猫は片目の暗い眼底をこちらに見せていた。眼球を垂れ、管を地面へとのばしている。堀ちゃんは雑草で目玉を包むようにして、猫の片目にはめてあげた。そしてこちらを振り返る。
「埋めてあげよっか。カワイソウだし」
堀ちゃんは、無垢で純粋な小学六年生の笑顔を作った。自分は複雑な心持ちで、そんな堀ちゃんを真似して笑ってみせた。
「うん、埋めよう。カワイソウだし」
とがった石を探してきて、堀ちゃんの隣に座る。「手まり飴、食べる?」と勧めてみたが、堀ちゃんは首を振って「いらない。これ吸いたいし」と、バージニア・エスをくわえて火を点けた。
「うわっ。煙草とか不良ー」
「格好いいでしょ」
ふー、と堀ちゃんは煙を吐く。自分は手まり飴を舐める。それから穴を掘り始めた。
そんな堀ちゃんは、どういうわけか、死体や事故現場によく出会う。まるで堀ちゃんの意に沿うように、彼女は何度もばらばらの肉片やどろどろの血を見つけ出す。彼女と行動をともにすると、自分もそういう現場に数回ほど立ち会えた。
堀ちゃんとの出会いは小学四年生のとき、西養館の少年合気道部への入会がきっかけだった。そのわずか一週間後、自分は最初の事故を目撃する。
西養館の師範の縁で、都内の武道館で行われた試合を見学したときのこと。大人同士の試合で、受け身を誤り、じかに頭から落下した女性がいた。
自分たち子供は二階の観客席から見学していた。広い武道館の中、いくつもの試合が同時に行われていたにも関わらず、堀ちゃんは目敏くそれを発見し、あたしの肩をつっついて教えてくれた。
「さっきぃ。あれ、あれ」
名前を呼ばれたのはそれが初めてだったのに、彼女はあたしをへんてこなあだ名で呼んだ。戸惑いながらも、自分は彼女の示す方を見やる。
審判が、倒れた女性に恐る恐る近づいているところだった。仰向けに伏した女性は、遠くから見ても分かるくらい深刻な痙攣を起こしていた。びくりびくりと、死にかけの小魚みたいに。やがて彼女は、口から泡を吹きだした。
「救護、早く!」審判がどなった。
会場全体が異変を察知し、場は騒然とする。自分のとなりに座っていた小さな男の子は、彼のお父さんによって目をふさがれた。
堀ちゃんがあたしの手をつかんだ。
「下に行って、もっとよく見てみよう」
急いで一階に降りて試合場に向かったが、入り口を大人たちが通せんぼしていて、入れてくれなかった。
あとで聞いた話だと、その女性はすみやかに病院へ搬送され手術を受けたが、大人たちの連携むなしく半身不随となってしまったそうだ。
二回目はたしか、それから半年後。
合気道がきっかけで、うちの母親と堀ちゃんのお母さんが仲良くなり、四人で長野へスキー旅行に出かけた。
ペンションの一室に宿泊した夜のこと。四人いっしょの部屋を取っていたのだが、その早朝、堀ちゃんがこっそりとあたしを起こして、「散歩に行こう」と誘ってきた。前日のスキーと乗り物疲れのため、初めは断ったのだけど、堀ちゃんは何かに追い立てられるみたいにあたしを急かした。
できる限り厚着をして、二人でペンション近くの山に登った。スキー場を一望しながらぼんやり歩いていると、堀ちゃんが「あっ」と言ってあたしの注意を引いた。
一匹の子狐が、山道を横切っていく。
「かわいいっ」と自分たちは声をそろえた。真っ先に子狐の後を追い、木々の間に入った。
雪に足をとられながらも、子狐を見失わないように必死で走った。
間もなくして、空気を切り裂く乾いた音とともに、子狐の小さな体が跳ねた。子狐は雪に倒れ伏し、横腹から血を流していた。雪が赤く染まっていく。
なにが起こったのか分からず、自分たちは呆然と足を止める。無言で、じゅくじゅくとしたストロベリーのかき氷みたいな雪を見つめた。何者かの命が奪われる瞬間を見るのは、自分にとってそれが初めてだった。
「こらっ、おめえたち!」
とつぜん、野太い男の人の声が響きわたる。現れたのは、重厚な猟銃を脇に抱えたマタギのお爺さんだった。
「撃たれてえのかおめえら。危ねえだろが、さっさと失せろっ!」
一通りまくしたてられて、おめえらの親にもひとこと言ってやる、とまで言われてしまう。マタギのお爺さんはかなり怒っていた。自分たちは手をつないだまま、お爺さんから逃げるように下山した。
そのようにして、堀ちゃんと一緒にいると、自分は幾度も残酷な光景を見ることができた。
学校帰り、隣の市立小学校に通う堀ちゃんと待ち合わせをして遊びに行くと、途中の川で入水自殺らしき死体が流されていた。背広を着た禿げ上がったおじさんで、自分たちは橋の上から長い時間をかけてその膨れ上がった死体を眺めた。おじさんはゆったりと流されていく。もうすぐ見えなくなるというところで、自分は携帯電話で警察に通報した。
ある日には、真白ヶ丘駅の閑散とした駐輪場で、高校生の太った女の子が、一心不乱で猫を殺しているのを発見した。道場の帰り道、偶然の目撃であった。女の子はぶつぶつと何事かを呟きながら、トンカチを何度も猫の頭に降りおろしていた。ぴくりとも動かない猫は、口から薄ピンクの白子のようなものを吐き出していた。堀ちゃんは太った女の子に手を振った。女の子は堀ちゃんを一瞥しただけで、その残虐な行為を機械的に繰り返した。
またある日には、川崎の街道で拳銃を持って暴れ回る男の人を見た。これはのちに、全国的に有名な事件となる。サングラスをかけた恐い顔のおじさんが、男の人の足下で死んでいた。そのとき自分は、堀ちゃんと、堀ちゃんのお母さんの三人でファミリーレストランにいた。窓際のテーブルで、惨劇はそこからよく観察できた。堀ちゃんのお母さんが慌てて自分たちの頭を掴み、テーブルの下に伏せさせた。外では大勢の警察がやって来て、男の人を囲んでいた。堀ちゃんのお母さんは顔をうつむかせ耳をふさいでいたが、自分と堀ちゃんはテーブルとソファの間からその様子を眺めた。幾度かの銃声のあと、男の人は射殺された。
堀ちゃんは言う。「あたしは呪われているんだ」と、どこか楽しそうに。自分の知らないところでも、堀ちゃんは様々な死に遭遇するのだという。たしかに呪われていると思う。自分はそんな、堀ちゃんの危うげなところが好きだった。
中学へは、堀ちゃんも自分と同じ学校に通うことになった。真白ヶ丘市の北にある中学校だ。堀ちゃんは隣の市から四十分もかけて通学した。
北中は合気道部がないので、自分たちは柔道部に所属した。西養館の合気道道場では二人の実力は拮抗していたが、柔道では堀ちゃんの方が頭一個抜けて才能があるようだった。
二年の夏の合宿を終えた帰り道、男子柔道部の幸司くんと、一年生の清美と、堀ちゃんの四人で歩いていたときのこと。
後輩の清美が「この前、面白い噂を聞きました」と、自分たち三人の興味を引いた。
「真白ヶ丘市に、いわくつきの廃墟ビルがあるって話。聞いたことあります?」
清美はこういう噂をたくさん知っている。オカルティックなものが好きなのだ。それに答えるのは幸司くんだった。
「聞いたことあるぜ、おれ。たしか吉門町にあるっていうお化けビルだ」
自分と堀ちゃんは、それを聞いて震えあがった。死体は日頃から見慣れていたが、お化けはいまだに苦手だった。それをいち早く察知して、清美がまず堀ちゃんをからかった。
「堀先輩、もしかして怖いんですか?」
「怖いもんか。ばかにするな」
次に、彼女はあたしをからかう。
「先輩は?」
「正直、ちょっと怖い」
「さっきぃ先輩、かわいー」
一年生のくせに、清美は生意気だ。ちょっと背が高いからって自分を子供扱いするし、あだ名だって堀ちゃんの真似っこだ。
自分は、前々からこのあだ名が気に食わなかった。何度も普通に呼んでくれとお願いしているのに、堀ちゃんも清美も口をそろえて、「名前が古くさいんだから、このあだ名の方がかわいい」と返されるばかりだった。名前が古くさいだなんて、この二人だけには言われたくない。
コンビニで市のポケットマップを買って、人気のない公園で広げた。幸司くんと清美があれこれ言いながら、お化けビルの場所を探した。
「たしか、ここですよ」
清美が指したのは吉門の四丁目だった。
「おれはここだと聞いたけどな」
しかし幸司くんは六丁目だと言う。自分と堀ちゃんは知らんぷりで、二人の気が済むまで黙っていた。自分は手まり飴を舐めて、堀ちゃんはバージニア・エスを吸った。
やがて言い合いにしびれを切らした幸司くんが、ぱたりとポケットマップを閉じた。
「清美とおれ、どっちが正しいか、今度調べに行こうぜ」
「二人で行きなよ。デートついでにさ」
堀ちゃんが冷めた顔で言った。幸司くんは顔を真っ赤にして「この四人で行くんだよ」と声を荒げた。
それから、幸司くんと清美が交互に吉門のお化けビルについて説明してきた。その結果、自分たちもそのビルに興味を持つようになってしまう。吉門のお化けビルは、ただでまかせに幽霊が出るというだけではなく、具体的な事例に基づいた噂だったからだ。
およそ三年前、ある女の子が飛び降り自殺したのだという。深夜だったため、彼女が飛び降りる瞬間を見た者はいない。遺体は早朝、犬の散歩をしていたお婆さんによって発見された。
「現場には、奇妙な落書きがあったそうです」と、清美が鼻息を荒くして言った。
女の子の遺体は、赤いドーナツ状の円の上で倒れていた。それと同じような赤い円が屋上にも描かれており、その円の中に彼女の靴がそろえて置かれていた。そして屋上の縁には、生と死、二つの円の境界を隔てるように、これもまた真っ赤なラインが引かれていたのだという。
「その意味深な模様のある方が、噂のお化けビルってことになるな」
幸司くんはそう言うが、自分には少なくとも、事件があった場所にそんな落書きがいつまでも残されているとは思えなかった。自分はじっと、ポケットマップを見つめていた。
「ちょっと面白そうかも、お化けビル」
そんな自分の言葉に、清美がくすりと笑う。
「あれえ、さっきぃ先輩、お化け怖いんじゃなかったんですか?」
「うるさいなあ」
堀ちゃんは後ろで煙草を吸いながら、そんなあたしたちのやりとりを眺めていた。明らかに興味を持っていたが、いまいち踏ん切りがつかないようである。
「堀ちゃんはどうする?」
訊いてみると、堀ちゃんはかかとで火種をつぶしながら悩んだ。
「あたし、忙しいから行かない」
「そんなこと言って、堀先輩もやっぱり怖いんですよね、お化け」
例によって清美はからかうが、堀ちゃんはクールにそっぽを向いた。そしてぽつりとささやく。
「さっきぃ、お化けビルに行ったら報告よろしく」
そんなに興味があるなら行けばいいのに。やれやれといった風に自分は首肯した。