とあるレポート提出
酷評は悲しいのでしないでください
やぁ、はじめまして!
俺はどこにでもある県立高校に通う学生だ。
で、そんな俺は今ピンチに陥っている。
理由?
単純さ。
明日、いや正しくは今日。
現在は午前0時10分。
だから、今日になる。
レポートの提出があったりする。
題材は『現代社会について』
めんどくさそうな題だ。
俺みたいなレポート課題を直前まで忘れていたやつには辛い題材。
そう。
俺は期日直前まで忘れていた。
存在を。
普段なら「かったるい。まぁ、怒られればいいか」で済ませる。
だが、しかし!
今回は話が別。
俺の留年がかかってるんだよっ!
ヤバイよ。
留年なんてしたら、一人暮らしも無しだし、小遣いも大幅削減だろう。
それだけは免れなければいけない。
まずは資料を探さねば!
という事でPCを立ち上げた。
真っ黒な画面が少しして見慣れたデスクトップに切り替わる。
「よし」
俺はYahooを開く。
いつものくせでニュースをチェック。
その途中で手が止まる。
「こ・・・これは・・・」
とある魔法少女アニメ
魔法少女まどか☆マ◯カのついてのニュース。
しかも全話録画したけど、見れていないアニメ。
「むぅ」
途端に俺の中で強力な力が働いた。
見たい。
このアニメ、超見たい。
「いやいや、レポートをやらねば。」
でも、見たいし。
だけどレポートも大事だ。
・・・・・・
「一話だけ。一話だけみよう。」
そう言って、録画していたアニメを見始めた。
やべぇ、おもしれえ
ちょっ、これは次見ないと!
一話見終わった時点で俺は完全にレポートの存在を頭の中から消していた。
約6時間後。
「見ちゃったよ。一気に全十二話は見ちゃったよ・・・」
達成感がどっと押し寄せてくる。
やったぜ!
見終わった。
しかし、ほむほむ可愛い。
マジ可愛い。
言葉にすればレポート用紙100枚でだってすぐに埋められるほどの可愛さ。
あ、ほむほむっていうのは、出てくるキャラ 暁美ほむらの愛称だ。
さてと、ほむほむの画像を求めて、ネットを旅するとしよう。
更に30分後。
「ふっ、この充実っぷりに我ながら感嘆の声を上げざるを得ないな。」
PC相手にカッコつけていた。
そして、偶然。
机の上に広げられたレポート用紙が視界に入った。
「・・・・・・やってしまった。」
ヤバイよ。
マジでヤバイよ。
ヤバイヤバイ。
ケータイで時刻を確認。
6時38分。
学校は8時30分からだ。
遅刻してでも完成させるべきだ、と思うんだが、そうもいかない。
朝のHRが始まる前に出しにこいと言われている。
だから、20分には学校につきたい。
家から学校は約一時間。
朝飯を抜き、支度の時間を最速で済ませたとして、レポートに当てられる時間は30分が限界だろう。
「どうする?レポート用紙50枚なんて30分じゃかけないだろ!」
そこで俺はさっき自分が心の中で言った事を思い出す。
「ほむほむについて書くか・・・」
いやいや、テーマは現代社会についてだ。
・・・現代社会=現代の日本文化
現代の日本文化=サブカルチャー
サブカルチャーの中の魔法少女ま◯か☆マギカ。
いける!
これしかない!
現代社会というのは即ち、現代の文化によって構成されているものだ。
だから私は現代の日本文化。
サブカルチャーについて少し書かせてもらおうと思います。
私が注目したのは、最近放送された魔法少女まど◯☆マギカ通称まどマギです。
こんな出だしでいこう。
後は途中で話題をほむほむの可愛さに差し替えればOK。
「完璧だ・・・」
後で思えばこの時の俺は頭がおかしかった。
徹夜のしすぎでハイになっていたし、変な空気に酔っていた。
かくしてレポートは完成した
「やべぇ!急がねぇと!」
着替え、荷物を持ち、家から駅までダッシュ。
学校の最寄駅からはチャリで爆走。
8時24分学校着。
ふぅ、なんとか間に合った。
後は担当の先生に渡すだけだ。
これまた運のいい事に担当の先生は朝の挨拶的な仕事で昇降口にいた。
「先生!」
と俺は呼びかける。
おっ!来たね。
と先生は振り返り、俺を見る。
いつ見ても人の良さそうな人相をしている人だ。
先生は若くて優しいから人気がある。
俺に今回のようなレポートというチャンスをくれたのもこの人だからだ。
他の人なら即留年決定だったはずだ。
そのチャンスも俺はひどい終わらせ方にしようとしているわけだが・・・
「じゃ、お願いします。」
レポートの束を渡して俺は自分の教室へ。
呼び出しがあったのは昼休みだった。
4、5人で集まって飯を食べていた俺は全校放送で名前を呼ばれた瞬間にレポートの事だと思った。
事実ハズレではなかった。
「君さ、これはねぇ~」
先生が難しい顔をしながら俺のレポートを見ている。
終わったな。
留年だ。
さらば俺の一人暮らし。
これで夜中にアニメを見るのが大変になるな。
そんな事を考えている俺に向かい合って座る先生は俺のレポートを一通り目を通しふぅと息を吐いた。
さぁ、来い!
なんだって受け止めてやるぜ!
怒られるか、呆れられるか、アニヲタの俺を偏見の目で見るか。
どれだ?
俺の予想だと二番目だ。
この先生ならおそらく呆れられておしまい。
んで留年決定。
「言いたい事は沢山あるんだけどね、一番は・・・」
「一番は?」
ゴクリとつばを飲み込む。
緊張の瞬間だ。
「先生は・・・ほむらよりもマミさん派だ。」
「なん・・・だと・・・・・・・?」
思ってもいなかった反撃がやってきた。
まさかの第四の選択肢でくるとは。
考えもしていなかった。
「マミさんの戦い方がかっこいいんだよ。更にさー」
先生は一人雄弁を奮いはじめた。
あれ?
これは留年なの?
留年じゃないの?
一番言いたかった事がマミさん派だって事は留年じゃない?
やったぜ!
一人暮らし継続!
思わずグッと拳を握る。
昼休みが丸々先生の語りで潰されようが聞いていよう。
昼飯を食えていないが、このレポートでオッケーを出して、留年を取り消してくれるんだ。
それくらいは当然だ。
しばらくして、昼休み終了のチャイムが鳴る。
「おっと、ずいぶんと語ってしまったね。昼飯を食えなかっただろう?すまないね。」
「いえ、問題はないです。じゃあ、俺はこれで。」
そう言って職員室から出ようとする俺を先生が引き止めた。
「結果を聞かないのかい?」
「だいたい予想はつきましたから。」
わかっているさ。
留年じゃないんだろ?
わざわざ聞かないとわからないほど俺はバカじゃないぜ。
「そうか。でも一応伝えておこう。」
そんなに俺を喜ばせなくてもいいって。
にへらぁ~っと笑ってしまいそうになるのを頑張って抑える。
「君がほむらを大好きなのはわかった。」
先生が俺に微笑む。
「途中からほむらの可愛さを語っているだけになっているからな。」
「はい。」
なにせほむほむ大好きになりましたから!
「でも、留年だ。」
「は?」
「留年だ。」
「マジですか?」
「マジだ。」
一呼吸。
「マミさんについて語っていて、いうのを忘れてしまうところだったよ。」
ははは、と笑う先生。
「先に言えよ!」
ぬか喜びしたじゃねえか!
「常識的に考えて、アニメキャラの可愛さを語ったレポートが許されるわけないだろう?」
「ですよねー」
やっぱり俺は留年だった・・・