閑話 ため息の帳
お見舞いが済み、葵生が病室を出てから一時間後。
社長の入院している病室で――
翔真「なんですか、にやにやと締りのない顔をして」
社長「ん? 見舞いで頂いた花を見てたんだよ」
翔真「また、仕事関係者の見舞いですか? ちゃんと安静にしてないと、入院が長引きますよ」
社長「違う、違う、葵生ちゃんからだよ。今日、見舞いに来てくれたんだ」
銀司に背を向けていた翔真はぱっと振り返って、微妙な表情で銀司を見つめる。
社長「葵生ちゃんは、よく気のきく子だろう? 仕事も熱心だし」
翔真「まあ、仕事に向き合う姿勢は立派ですね。でも細かいミスが多いし、集中力が切れると、再び集中するのに時間がかかって……正直、今はあまり使えませんね」
翔真の言葉に、はぁーっと大きなため息をつき、額に手を当てる銀司。
社長「全く、お前は……」
言いながら、首を左右に振る。
社長「そんなんじゃ、好きな子に“好き”って言っても、信じてもらえないぞ?」
翔真「なっ……」
真っ赤になって、瞠目する翔真。
社長「好きな子にはもっと優しくしてやらなければ、気持ちは伝わらない。全く、仕事熱心なのはいいが、そんなんじゃ恋人の一人もできないだろうに……。葵生ちゃんはお前みたいに優しくない男はタイプじゃないそうだぞ?」
呆れた様なため息をつく銀司に、身を固くする翔真。
(全く、この人は……どうして、そう痛いところを突くのだろうか……)
翔真は病室の窓から漆黒の夜空を見上げ、そっと溜息をもらした。
シナリオ風、社長と翔真の一コマでした。