閑話 空港から
成田空港三階十七番搭乗口付近の椅子に、翔真と葵生が座っている。
二人は色々な誤解が解けて――無事に葵生のフランス行きのチケットも取れて、搭乗口前でエールフランスAF二七七便パリ行きの搭乗を待つ。
出発時刻まであと三十分。
そんな中、翔真が左手に携帯を持ち耳にあて、右手は葵生の手を握っている。その葵生は頬を染めて俯きがちにちらちらと翔真を見る。
プルルルル……
携帯から発信音が数回なった後、声が聞こえる。
『はい』
「あっ、父さん……ですか? 翔真です」
自分から電話をかけて、相手が父だと分かっているのに、照れくさくてそう言ってしまう翔真。
『ああ、翔真か。葵生ちゃんにはちゃんと会えたか?』
「はい、父さんが連絡してくれたお陰で、葵生とすれ違わずにちゃんと会うことが出来ました。ありがとうございます」
『よかったな。それで、誤解は解けたのかい?』
「ええ、まあ……」
そう言って、翔真が視線を葵生に向ける。
「フランスに一緒に行くことになりました。それで、事務所のバイトなんですが……」
翔真は躊躇いがちに言葉を切る。
『ああ、心配しなくていい。事務所は私一人でも大丈夫だから、葵生ちゃんと一緒にフランスに行ってきなさい』
「はい、ありがとうございます」
『その代わり……私の分も母さんによろしく伝えてくれよ』
「はい……」
翔真は頬を染めて、静かに頷いた。
シナリオ風、空港での一コマです。