『自信作』
企画の立ち上げから、ずっと頭の中で『自信作』を考え続けておりました。
期は、熟した。
開始一日前に、一気に書き上げました。
創作意欲を取り戻すには「締め切り」が有効だと思います。
これこそ、まさに「先人の知恵」なのです。
自信作の季節になった。
あの人は、天才だけど、変態だからなぁ。
なかなか、満足させられるものを創作するのは、大変な事である。
とりあえず、服をみな、脱いだ。
い、いや、俺は変態ではない。
妙なシガラミやプライド、ウケ狙い、余分なモノ、イラナイ考え。
こうしたものを全て脱ぎ捨て、裸一貫、心機一転で創作に臨む。
大切な事だと思うのだ。
つまり、まずは身を清める、という訳だ。
誤解してはいけない。
そう、それは、やましいことを考える方に責任があるという訳である。
最近の創作AIさんやイラストAIさんは、ポリシーポリシーとやかましいのである。
そんなにポリポリしていたら、客が誰もいなくなるじゃないかと心配しそうになるのだ。
いや「変態はお前だけだから何の問題にならない」と、たかがAIごときに説教されそうなので、このくらいにしておいてやる。
それはさておき。
裸の肌に、塩を摺り込む。
手で塩を掬い、丁寧に、撫で擦るように。
全身をくまなく、白く清く、覆いつくすのだ。
故に、裸になる必要がある。当然だろう。
だから、邪心を抱くような輩は、ポリシーポリシーと……(それはもういいってば)
ぬくもりあるルームに入って、じっくりと汗を流す。
ご同輩も、続々と入ってくる。
みんなで、タップリ、汗を流していくのだ。
世の中のしがらみ、義理人情、上下関係、人としての情愛、生理的な嫌悪感……
そうしたものは、全て、汗となって、全身にまぶした塩と共に、流れ去っていく。
すべて流れていく中で、一つだけ残るものがある。
『自信作』へのプレッシャーである。
いや、これはそのための儀式。
そうやって自分を追い込み、汗を流し、身を清めた上にこそ訪れる至福。
それこそが、そう、それこそが『自信作』ではないだろうか。
そう、そうにちがいない。そう思いませんか?
それをだな。いとも簡単に作れるからといって、AIに丸投げするだなんて、あまりにヒドい、あまりに冒涜だと思わないのですか?
あ、あの人はAIに賛成派だったな。
イカンイカン、作品の内容ではなく、ポリシー違いだと言われて排除されてしまうではないか。
だってさぁ、そんな機械的な市販品みたいな作品なんか、ツマンナイじゃないのさ。
やっぱさぁ、こういうのは人間が書いてナンボだと思うんだよネェ。
……こうやって文体をまぜまぜしてやれば、実はこれ、AIが書いたとは思われないに違いないのだ。
ふふん、どうだ、参ったか?(なにいってんだ? 実際、メッチャ手書きじゃないか)
この施設、温泉もあるのだよ。
もちろん、天然であるのだよ。
塩化物・若干の炭酸水素要素も含まれる、冷泉系である。
ただ、かけ流しじゃないのが、少しだけ残念ではある。
こちらの温泉も、ご同輩とともに、じっくりしっかりと漬かり込む。
人気があり過ぎで、常にイモ洗いのような状態ではあるのだが、そこがいい。
みな『自信作』を書きあげたい、そこにあやかりたいと思っているらしいのだ。
理由?
おれが、そう思っていることが、何よりの証拠ではないか。
他の人の考えなど、おれごときがはかりかねるなど、無理無理絶対に無理。
しかし、その行動は、その考えを、その思いを、その作風を、その変態ぶりを、つまびらかに明らかに、おてんとうさまの下にさらけ出すものだとは、思わないのですか?
だからこそ、温泉は、いい。
だからこそ、温泉は、裸の付き合いなのですよ。
偉い人には、それが分からんのですよ。足なんて、足なんてどうでもいいじゃありませんか!
……何を言ってるんだ?
これは『自信作』なんだぞ?
そんなことで、大丈夫か?
いや、大丈夫だ。あの人は、どんな駄作でも、かならず最後まで目を通してくれる。
そうに、違いない。(と、この辺でプレッシャーを掛けておこう)
さっぱりして、湯から上がり。
とりあえずビールと行きたいところだが。
まだ『自信作』の構想を練り上げていないのだ。
テイストは、甘い甘い恋愛ものにしようか。
それとも、酸っぱい失敗経験談にしてやろうか?
じっくり練り上げられ、熟成した人生の深みをチョイスしてみようか?
ひたひたと、塩辛い旨味で浸してみるのも、面白い。
ピリリと辛い要素も、欠かせないな。
柑橘系のさわやかなキャラクターも、加えてみようか。
うん、創作、楽しいなぁ。
そんな作者としての考え、思い、熱意、情感、技術、能動、変態性(それは必要なのか?)。
計り分け、配合し、調整し、混ぜあわせたファクターを。
両手で、この腕で、この頭で、揉み込んでいく。
透明なモニターの中が、やがて、おれの創作物で染まっていく。
あふれる息遣い。
作品に込められた思い。
ブクマを、評価を、おくれよ!(ん?)
それらが、命を得て、一個の生物として、この世の中に生まれいづるのである。
これこそ、創作の醍醐味。
こんな楽しいものを、AIさんに任せきりにしてしまうだなんて、なんたる喪失、なんたる失態だろう!
ただし、今ここで、よし、できた、うん、傑作!
などと、そう思ってはならない。
今はまだ、勢い任せに仕上げているだけ。
じっくり、保存して。時間が経つのを待て、待つのだ、待つのだよ。
アラや練り込み不足、ツッコまれどころなど、そういう人間としての雑味は、後から気付いたり、現れたりするのだ。そういうものなのだよ。
時間を掛けて、後から見直すことで、その良しあしも分かるし、今後の参考にもなるのだ。
よし、完成。
いい出来だと思う。
これこそ、おれが胸を張って言える『自信作』だな。
さあ、たんとお食べ。たんと、おあがりよ!
カリカリ、ポリポリ。
シャクシャク、ゴクン。
いい漬かり具合だなぁ。
日本人は、やっぱり、漬物でしょ。
手作りの味を覚えちゃうと、市販の作品をわざわざ購入して食べようだなんて、全く思わないね。
おととしくらいから始めた、自家製の漬物づくり。
今年も、美味しい漬物を、漬けちゃうんだもんね。
まさに、おれの『自信作』。
なんか、文句でもあるの?
(おしまい)
企画者ですので、色々な作品を読まれるのだと思います。
本作品は、箸休めに、ドウゾ。
「先人の知恵」=お漬物の作り方




