第6話 ライブ動画視聴開始
飛行機に乗ってもソワソワしてしまう。
義姉ちゃん……大丈夫だろうか?
初級ダンジョン。レベル50もあればモンスターに一方的にボコられても傷一つつかないような場所だ。
レベル999の俺の……いや、俺たちのダンジョロイドなら全く問題ないとは思うが。
ピロリんと通知音が鳴る。
「お、ログインしたか。配信を見よう」
ライブ配信では、横に視聴者のコメントが流れていく。
自分の配信をアーカイブでチェックするのと違い、リアルタイムで見るのは始めてだ。自分の動画視聴は、苦戦したボス戦とかまで早送りしてみる、反省用だったからなぁ。
ダンジョロイド。
名前はスターマイン。4代目のダンジョロイドだ。だけれど、変わっているのは中身だけ。外側のカバーデザインはずっと一緒。あ、髪の毛の長さとかマイナーチェンジはしている。
ちなみに、好きな写真や絵を持ち込んで、版権に抵触しないようにAIで加工しそれっぽいキャラや人物を作ってもらう。その画像を基に3Dにして女性素体ダンジョロイドのカバーを作ってもらうのだ。
ちなみに素体には、グラマー女性素体、普通女性素体、幼女素体、ムキムキ男性素体、普通男性素体、ショタ素体がある。
身長は素体オプションでシークレットシューズみたいなパーツを足につけて伸ばすことができる。筋肉は素体ではなくカバー側に詰め物をしてよりムキムキにすることができる。
使っているのは普通女性素体。だって、義姉ちゃんグラマーとはいいがたいからね?あの顔にグラマー体形じゃぁアンバランスすぎるでしょう。
あ、さっそくステータスを開いて見ているな。配信ではステータスの内容はモザイクになって見えない。
ん?振り返った。
【お、おお!今日もマインちゃんかわいいにゃ】
【俺のこと見た!】
【いや、おまえじゃない、俺だ!】
【まてまて、もちつけ、目が遭ったのはワイやで】
そうだろう、そうだろう。かわいい。うちの義姉ちゃん最高にかわいい。
だが、お前らを見たわけじゃない。ドローンのカメラを見ただけだ。
って、なんで?
がっかりした顔してまたステータス画面に戻った。
ん?まさか、顔を確認しようとした?やばい。
そういえば、義姉ちゃんをモデルにしたって言ってない。勝手に写真使ったの、言ってない……。
っていうか、もう3年も配信してるのに、一度も見てないとかありえないだろう?
ってか、マジか?
やっべぇ。……えーっと、言い訳考えないと。うーん……。
【あ、走り出したぞ!】
【超初心者ダンジョンで、マインちゃん何する気だ?】
【聖剣様だぞ。SS冒険者ですぞ。考えがあるに決まっておる】
【壁を気にしているぞ?】
……単に、VRの動かし方を確認してるんだろうな。壁に触れた感じとかも。
こんな目的もない、動画配信でも、勝手に考えて楽しんでくれるのはありがたいが……。
【お?今度は飛び跳ね始めたぞ?】
【かわいいなぁ!】
【かわいいなぁ!】
【かわいいなぁ!】
かわいいなぁ!
「あ!」
思わず声が出て慌てて口を押える。飛行機の中だ。周りの人の迷惑になってはいけない。
……義姉ちゃんなにしてるんだよ……。天井に頭をぶつけるとか……。
初級ダンジョンは天井が低いんだから、レベルカンストして伝説級装備つけてるんだから思いきりジャンプすりゃぶつかるって……。
まぁ、知らないか。
【あ?マインちゃん大丈夫かな?】
【聖剣様には何かお考えが……】
【頭おさえてるよ?】
【痛かったのか?】
【ああ、なでなでしてあげたい!】
【けがは舐めると直るよ、ペロペロ】
……ブロック、ぽちっ。消えろ、下種め!
義姉ちゃんを言葉でも汚すのは許さん。
「大丈夫かな……」
怪我をしたり痛みを感じたりはしないはずなんだけどな……。
頭を押さえてしゃがみこんでいるスターマインを見て心配になる。
まさか、コックピットの中でも思いきりジャンプしてリアルで頭をぶつけたなんてことは……。
ないか、身長180の俺でもぶつけないのに、150しかない義姉ちゃんがどんだけ頑張っても無理だろう。
【おい、見ろ!何か落ちてきたぞ】
【見てるぞ、何だあれは】
【金色のコイン】
【まさか、あれか?】
【そうだ、あれだ!】
【詳細キボンヌ!】
【死語www】
【キボンヌwwww】
いや、知らなさそうだな。ダンジョンが好きなわけじゃなくて、スターマインファンか?
義姉ちゃんをモデルにしたスターマインは超かわいいからなぁ……ファンになるのも頷ける。
だが、俺のだかんな。っていうか普段は中身は俺だから。残念!
それはそうとして……。
当然義姉ちゃんはあれが何か知るわけないよなぁ……。ちゃんと持って行ってくれるかな?その辺にぽいってしないよな?
ん?立ち上がって上を見た。
右手をグーにして突き上げたぞ?
スキルガチャコインとっただー!って、時折ポーズをとるやつがいるけど……。
まさかそれを知っていた?
そんな馬鹿な。
【あのポーズ!間違いない。聖剣様はスキルコインガチャを手にしたんだ】
【スキルガチャコインだろ、間違ってんぞ】
【お前を試したのじゃ】
【wwww】
【で、じゃれあいはいいから、詳細キボンヌ】
【Ggrks】
【死語www】
【ググレカスwwww久しぶりに聞いたわ!】
【ググった。スキルガチャコイン、スキルを得られるガチャが引けるコインだな】
【まんま!ガチャってことは、ランダム?】
【そうらしい】
【おいおい、もうちょっと説明してやれよ。マインちゃんのすごさが伝わらないだろう】
【スキルは漫画なんかだと生まれつき備わっている者だろう?1つか2つ。たぶん小さいダンジョンもそういう世界のダンジョンなんだ】
【ふむふむ】
そういう説が確かにあったなぁ。
【だから、スキルを後天的に得られることはめったにない】
【ふむふむ】
そうそう。って、いまいち説明へたくそか!伝わってるようで伝わってない……。
【スキルをもったダンジョロイドはほとんどいない。スキルを後天的に得ることが困難だからだ。つまり、スキルガチャコインはレアアイテム】
その通り。初級ダンジョンのボスを倒すと100回に1回くらいドロップする。
中級ダンジョンのボスで80回に1回くらいドロップする。
上級ダンジョンのボスを倒しても50回に1回くらいしかドロップしない。
大ボスでそれくらい。中ボスになるとその3分の1ほどの確立になる。
そして、ドロップしたコインを使ってスキルガチャを引いても、有益なスキルを得る可能性は数パーセント。
まぁ、俺みたいな学生が、長期休暇に毎日部屋にこもってボス戦しまくって、やっと10回ガチャが引けるかどうか。
十連ガチャしても、有益スキルが得られる可能性は低く、この1年の間に有益スキルを得たダンジョロイドは10体程度だったはずだ。まぁ、だんだんいろいろなことが分かってきて、1体のダンジョロイドを複数人が交代で動かし24時間動かしてレベルを上げるとか、人を雇ってスキルガチャコインを集めるとかしている富豪も出始めている。
この先はもう少し多いペースでスキル保持者が出てくるとは思うが……。




