第15話 テイム!
「ありがとう」
なでなで。
あああ、幸せ。いや、ダンジョロイドで触っている感触がVRスーツを通して伝わってくる。
ふほおお。かわいすぎ。
と、幸せな気持ちで撫でていたら、左右からお目女くりくりちゃんとたれ目ちゃんがぐいぐい押してきた。
「あなたたちも撫でさせてくれるの?あなたも……って、えーっと、名前あるのかな?勝手に呼び方決めてもいい?嫌なら言ってね。あ、私はスターマインよ。で、えっと……」
体は一つだけど、頭は3つある。だから、単体の名前でもあり、3つにばらけた名前でもあった方がいいよね?
「チャーシュー麺で、チャーとシューと麺とか。……いや、それはないな……。豆板醤?八宝菜?」
『妾は嫌な感じがするのじゃ』
『おなかすいたー』
『かわいい名前がいいよ!』
なんだか不満そうな顔に見える。ごめんね。名づけのセンスがなくて。
えーっと、うーんと……。
「あ、雪月花ってどう?あなたが雪ちゃん。それからあなたが月ちゃん。そしてあなたが花ちゃんね」
左から順に雪月花だ。一つのまとまりのある言葉になってるし、かわいい名前。
『うむ、妾の名は月』
『私の名は花』
『あたちがゆき』
『『『スターマインと契約を交わす』』』
突然頭に言葉が響いた。
「え?私と契約を交わす?」
『そうじゃ。これで妾がなんと言っているかわかるじゃろ?』
ワンって聞こえるのに、頭の中に言葉となって伝わってくる。
「うそっ、うそうそ、月ちゃんの声なの?本当に?」
ポロリと涙が……出そうだけどダンジョロイドには涙を流す機能はないし、VRゴーグルの中で涙を浮かべるとまずいのでぐっとこらえる。
『ゆきちゃんともおはなしできるよ?』
うわーっ!おめめくりくりのゆきちゃんが幼女ボイスだ!
『私の声も聞こえる?』
お耳が少したれた花ちゃんはちょっと甘ったるいしゃべり方。
嬉しい!ワンちゃんとお話ができるなんて!
「皆の声聞こえるよ!お友達になってくれるの?」
『もちろんじゃ!今日から一緒じゃ!』
『いっちょだよ~』
『危ないっ!』
え?危ない?
首を傾げた瞬間、ワンちゃんがバーンと何倍も大きくなった。
馬……よりも大きい。いや、馬は馬でも、昔の漫画のなんたら王が乗るでっかい馬みたいな……。キリンとか象とかそういう大きなサイズになった。
見上げないといけない大きさ。
大きくなった雪月花は、前足を上げた。
踏みつぶされそうっ!そう思った瞬間、私のすぐ後ろに前足を下ろす。
ん?
ぶちゅっと何やら音が……。
ぶちゅっと何やら音が……。
『危なかったのじゃ。スターマインを狙っておったのじゃ』
『もう大丈夫だよ』
『やっつけちゃったの!』
ええ?もしかして!
「魔物が私を狙ってたの?それをやっつけてくれたんだ!ありがとう、嬉しいっ!」
『いいこ?』
「うん、いい子!」
『もっと褒めるのじゃ』
「すごい!強いんだね!」
『ご褒美ちょうだい』
「えっと、何が欲しい?こんなものしか持ってないけど……」
収納鞄から昨日取ったでっかいコインを取り出す。
『まずそう、いらにゃい』
え?食べ物がいいってこと?
でも、今持ってないし……。買いに行くわけにも……。
『人間はこんなものを集めて喜んでおるのか。ならば見つけたらスターマインにやろう』
「ありがとう……でも、私、お礼ができないよ……?」
『ご褒美もお礼も、かわいいものもっとちょうだいっこういうの!』
花ちゃんが、花の首飾りを見ようとして叫んだ。
『ああーっ!私の首飾りがっ!』
『あああああっ!しまったのじゃ!巨大化したせいでっ』
『うわーん、せっかくかわいかったのに』
……うん。巨大化したせいで弾けてばらばらになって残骸が足元に落ちてます。
そして、シュシュシュと空気が抜けるように雪月花ちゃんが元のサイズ……大型犬に戻った。
前足で踏みつけていて倒した魔物はひしゃげてひどいことになっているかと思ったら、そこには白身の肉の塊がころがっていた。大きさにして、鶏くらい。
『ふむ、肉がドロップしたんじゃな、食うか?』
「私はこの体じゃ食べられないから」
ダンジョロイドは機械だ。流石に食事はできない。
『じゃあ、妾たちで食べるとするかの』
『この味にも飽きちゃったわ』
『あたち、焼いてたべりゅ』
雪ちゃんが口からぼふぉと炎を出して肉を焼いた。




