青春が崩れ去る声と夜
入学式が終わった後一年二組の教室に移動して自己紹介があった。
「初めまして星花、あー・・・戦蝶院星花です。よろしくお願いします」
その自己紹介にクラスがざわめく。
戦蝶院ってあの!?朝のニュースでもやってたカルノクスの名家じゃん!すっっごい・・・という事は決闘にでも出るのだろうか、見に行きたいな。
「初めまして、エルフの月僧カレンです。趣味は絵描きとピアノと読書です。のんびり屋なので迷惑をかけてしまうかもしれませんがよろしくお願いします」
私も自己紹介を難なく終えて今日の学校でのスケジュールは終わった。
「今日はありがとうね!また明日!」
「うん、また明日」
そして解散になり月僧さんと校門に来た時にまた聞こえた。
「ゆう・・・・・・・しゃよ、われ・・・」
「え?今何か聞こえた?」
なんだか雛高の裏にある山から聞こえた様な・・・
「ううん、何も。もしかして朝の電車の時の?」
「うん、またなんか聞こえた・・・全部は聞き取れなかったけど」
「大丈夫?最近呪われてる物とか触ってない?」
「大丈夫だと思うけど・・・うーん、ま、いっか!ごめんねね変なこと言って。じゃあね!」
「うん、バイバイ」
そうして校門前で別れた後明日からお弁当がいるのでその食材を買いにスーパーに向かおうとして歩き始めた時。
「蓮護さん」
「え?」
呼ぶ声に振り向くとそこには皇さんがいた、後ろには護衛の人もいる。
「皇さん?えっと何か用ですか?」
「・・・まだ車来ないから」
「あ、そうなんだね」
迎えの車がまだ来ないからお喋りしたいのかな?話しかけてくれたし私もそれに応えよう。
「皇さんって主席なんでしょ?凄いね!」
「うん、実は凄いの・・・」
「・・・」
「・・・」
「え、えっと私、実は学業に自信無くてだから主席で合格できた皇さん凄いなって。何か特別な勉強方法とかあるの?」
「・・・別に無い。講師の人がいるから教えてもらってる」
「そうなんだ、凄いなぁ」
「うん」
「・・・」
「・・・」
「あー、皇さんって趣味とかは」
「無い、レッスンとかで忙しいから」
「そうなんだ」
「うん」
「・・・」
「・・・」
会 話 が 続 か な い !
なんだこれは!私が悪いのか?ちょっと後ろの護衛の人なんとかしてよ。気まずいよこの空気!どうしよう、朝集めた話題を振っても会話のラリーが続く気がしない!
「舞桜様、お迎えの車が来ました」
「あ、うん。また明日」
「また明日・・・」
校門前の駐車スペースに黒塗りの高級車が来た後皇さんはそれに乗り込んで去っていった。うーん、苦手だなぁ・・・魔人なのもあるけど何考えてるか全然分かんない。仲良くなるには時間がかかりそう。
皇さんと別れた後スーパーに寄って家に帰った。
「ただいまー!大戦果を上げた優理様のおかえりじゃあ!」
学校に行ってたテンションがまだ残っててご機嫌なただいまになってしまう。
家に帰ると買った食材を冷蔵庫に入れた後カバンを置いて制服を脱いで私服に着替える。
「ふぁあ・・・」
そのままソファに倒れ込みクッションを抱きしめる。入学初日だったが早速友達が出来た、私の望む青春への大きな一歩を踏み出せたと言っても過言では無い。皇さんに関しては気にしない事にしよう。
「ふへへ、んんー!」
思わず声が出てしまう程に嬉しかった。クラスの人達みんないい人そうだったし苦手な魔人もいなかった、星花さんとも友達になりたいしみんなでお昼ご飯食べて色んなこと話して・・・
「あ!月僧さんの連絡先聞くの忘れてた!・・・まあ、明日会うしその時でいいか。高校生になってようやくスマホ買ってもらったからね、これからどんどん連絡先増やすぞ!」
ソファの前にあるローテーブルに置いてあるゲームのコントローラーを取り本体の電源を入れる。
「でもでも、その前に休まないとね」
学校でテンション上げっぱなしだったので少し疲れた、お昼ご飯を作る気力を回復させる為ソファでゴロゴロしながらゲームでもするとしよう。引っ越してから龍昌市を歩き回ったり入学の準備なんかしてたらゲームも久々だ。
「ドクウツキさんいるかな?いや、この時間帯はいないかな」
昔からのネットの友達である人がログインしてないか探すとなんとログインしていた、しているゲームはアクションゲームで所謂死にゲーと呼ばれるものだ。高難易度でやりごたのあるゲームでドクウツキさんと一緒に攻略したゲームでもある。
「今大丈夫かな?チャットしよ」
ゲームのチャット機能で挨拶するとすぐに返事が返って来た。
「お久しぶりです、スレハンさん」
「お久しぶりです!お元気でした?用事が重なってしばらくゲーム出来てなくてすみません」
スレハンとは私のゲーム名のスレッジハンマーの略だ。
ドクウツキさんは私の昔からのネット友達で転勤ばかりだった私にとっては珍しくずっと付き合いのある友達だ。
ドクウツキさんは頭が良くゲームでも作戦をよく立てて強敵を攻略してくれる頼りになる人だ。私はとりあえずゲームでも突っ走るので勝てない相手にはドクウツキさんに泣きつくことが多い。
「いえいえ、私も同じ様な感じでした。私も久しぶりにゲームしましたよ。そこにスレハンさんがログインしたので驚きました」
「奇遇ですね!今日もお供して大丈夫ですか?」
「はい、一緒に行きましょう」
やった、久しぶりにゲームを楽しむとしよう。
この後、ゲームに夢中になってお昼ご飯を食べ損ねたのは言うまでもない。
流石に晩御飯は食べないと行けないので夜になる頃にはゲームを切り上げ晩御飯作りとお弁当のおかず作りに取り掛かっていた。
「・・・しゃ、ゆう・・・われ・・・へ」
「・・・?また?幻聴かな?」
でもやっぱり雛高の裏にある山の方から聞こえるような気がする。一体なんだろうか?気づかないうちにストレス溜まってるのかな?いや、ないな。この私に限ってそんな事はない。
ミニハンバーグを作りながら動画サイトで動物の可愛い動画を見ていると電話の着信音が鳴った、相手はママだ。
きっと今日どんな事があったか知りたいのだろう。
「もしもし、ママ?」
「はーいゆーちゃん。元気?学校大丈夫だった?」
「大丈夫だよ、聞いて聞いて!もう友達が出来たんだよ」
「あら!いいじゃない。良かったわね!どんな子?」
「えっとね、エルフの可愛い子で月僧さんって言って髪とかサラッサラなの!」
「ゆうし・・・・うしゃよ・・・我の元へ・・・」
「あらあら、良かったわね。他には友達になりそうな子いるの?」
「今のところはカルノクスの星花さんかな、入学式でちょっと話したの。そうだ!星花さんあの戦蝶院の人なんだって!凄いよね!」
「ゆうしゃよ・・・ゆうしゃ・・・わが・・・つどえ」
「そうなの、ボディーガードとか決闘の試合で有名な一族じゃない。あんまり失礼なことしちゃダメよ?甲殻触らせてーとか」
「・・・」
「ゆーちゃん?もしかしてもうしたの?」
「うん、初対面の時に・・・」
「ゆうしゃ・・・ゆう・・・我の元へ・・・集え」
「もう!落ち着きなさいっていつも言ってるのに・・・」
「ごめんごめん、気をつけるから。そっちはお仕事今終わったの?」
「うん、いま終わりー!褒めて褒めて」
「はいはい、いつもお仕事お疲れ様。ありがとうね愛してるよママ」
「ゆーちゃん!私も愛してるー!」
「勇者よ!!!我の元へ集え!!!!」
「うるさぁあああああいいい!!!さっきからなんだ!?」
電話してる時にお構いなく呼びかけて来て!常識ってものが無いのか!?てか、誰が呼んでるの!?
「え、あ、ごめんゆーちゃん・・・ママの声うるさかった?」
「え、あ!違うのママ!えっと、そう!テレビ!テレビの音量が少し大きくって、ね?ママじゃないの、急に大声出しちゃてごめんね」
「良かった、ママのこと嫌いになったのかと思っちゃった」
「そんなことあり得ないから安心して」
電話越しで不安がるママを安心させた後電話を終える。
ミニハンバーグを完成させてラップで包んで冷凍庫に入れた後聞こえてくる声に耳を傾ける。
「勇者よ、勇者よ・・・我の元へ集え」
「ゆうしゃ?勇者?え、本当に何言ってんの?」
この声は月僧さんにもママにも聞こえてなかったみたいだし私にしか聞こえてないようだ。
「え、何怖。最近ゲームしてなかったから内なるゲーム欲が幻聴起こしてるの?さっきのじゃ足りなかった?」
馬鹿げた考えだが納得の行く答えでもある。
それ以外だとするとやっぱり病気?でも心当たりとか無いんだよなぁ・・・新生活にウキウキだしストレス溜まるどころか解消されてるし精神疾患にかかる状態じゃ無いと思うけど・・・
「勇者よ、勇者よ・・・我の元へ集え」
うん、やっぱり聞こえてる。そして声は雛高の裏にある山から聞こえて来ている様だ、なんで裏山?
我の元へ集えって裏山に来いって事?そもそもこの声の主人は誰なの?意味わかんないなぁ・・・
「ま、気にしないでいいや。明日には治ってるでしょ」
考えても分からないことをずっと考えても仕方ない。ご飯食べてお風呂入って寝よう。しかし幻聴はご飯を食べている時もお風呂に入っている時も聞こえ続けた。壊れたレコードみたいにずぅーーーーーと!勇者よ、勇者よと言い続けている。
「おやすみ・・・」
色んなことを終わらせて午後の10時には布団に入ったが・・・
「勇者よ、勇者よ・・・我の元へ集え」
「・・・え?寝る時ずっとこれなの?」
睡眠妨害も甚だしい。何の権利があって私の安眠を遮っているんだ?いや、ここまで来たら無視を決め込んでやろう。こんな夜遅くに裏山に来る様に呼びかけてくる常識知らずに応えてやる義理なんてない。布団を頭まですっぽりと被り声に耳を塞ぐが意味は無く頭の中でずっと勇者よ勇者よとうるさい。
「無視無視、気にしたら負け・・・明日も学校なんだから」
「勇者よ・・・勇者よ・・・ビビってるのか?」
「は?」
なんだ、急に変わったぞ!?
「はぁー、まあこんなもんか。ビビって我の所に行こうともしない奴なんて大したことないのだろう」
「はあ?なんだテメェ・・」
「腰抜けな部分も前世から受け継いだのか?それとも今世が更に腰抜けなのか?」
「はあ?はあ?はあ?」
「ま、布団を被って逃げようとしている腰抜け勇者には我の元に来るのは無理かw」
「やってやろうじゃねぇかよこの野郎!!!」
布団を足で飛ばしながら宣言する、クローゼットから洋服を取り出して着て玄関を飛び出す!
「首洗って待ってろよぉお!!!絶対一発殴ってやる!」
そうして私はマンションを飛び出して雛高の裏山へと向かった。




