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誓って殺しはやってません!

「・・・言い過ぎたなぁ」


外に駆け出した後しばらくしてたどり着いたショッピングストリートの噴水前のベンチに座った私は夜の空を見ながら言った。あの後あてもなくぶらぶらと歩き回っていた、電車にもバスにも乗らずただただ歩いていた。最初は怒りでいっぱいだったが頭が冷えてきて自己嫌悪に襲われていた。


 「私が悪いのに・・・」


自販機で買ったあったかいおしるこを飲んだ後に言う。クリカラはただ世界を救いたいだけし、あっちの方が正しい。期限が正月だから焦るのも積極的に攻めていかないといけない事もクリカラの言う通りなのだ。


私はただ現実から目を背けていただけだ、まだ時間はあるからと、まだ仲良くなる時間はあると。使命にムカついて私が望んだ青春をまだ味わっていたかっただけだ。世界が滅びればその青春は過ごせないというのに。


 「・・・後で謝らないと」


ママに対する侮辱もクリカラは知らなかっただけだ。数千年前から常識が変わっていないクリカラが淫魔とか言ってしまうのは仕方のない事だろう、実際クーリエの事も獣人とか呼んでたし。あの場は私が怒らずに冷静に対処すれば良かっただけだ、クリカラが今の常識が無いって事ぐらい分かっていたのに怒りが抑えきれなかった・・・


 「はぁ・・・全部前世の私が悪いのに・・・」


全ての原因は私の前世にある。魔王と恋人になる為に世界を天秤にかけるとかマジでバカとしか言いようがない。苦労するのは前世の私ではなく今の私だというのに無責任も良いところだ。


なら、クリカラの言う通りこの一年くらい皇さんと恋仲になる事に全力を尽くすほかないだろう。


 「・・・私の青春」


ずっと、ずっと、憧れていた青春。転勤が多くてあっちこっちに行ってたから親友と呼べる人はいなかった。ママとパパの帰りは遅いし帰ってこない日もあった、習い事も転勤が多いから長く通えなくて別れる人が増えるだけだったから行かなくなった。だからゲームをしたりして寂しい夜を誤魔化していた。ママとパパは大好きだ、だからついて行ったけど高校では私の道を歩みたかった。誰にも邪魔されず好きな事を好きなだけやれる、そんな青春の為に頑張って勉強して雛高に合格して一人暮らしの為に色んな事学んで・・・ここに来た。だから一秒、一瞬たりともこの時間を無駄にしたくなかった。私のずっと憧れていた道を今まさに歩んでいるのだから。


 「・・・しかないよね」


でもそれも世界の命運と比べてたら小さなものだろう。私一人の一年の青春を捧げて世界を救えるのなら安いものだ、そうに違いない。


ため息をつくこうとしたその時、聞き覚えのある音が鼓膜を揺らした。バイクの音だ、それも複数、多いね。てかここバイクとかの乗り物入っちゃダメなんじゃなかったっけ?


 「見つけたぜ!」


複数のバイクは歩行者をその大きな音で威嚇して道を開けさせた後私を囲む様に並んだ。赤いバイクと黒いバイク、赤い方は見たことある、愛絶兎論(メタトロン)の連中のバイクだ。


 「へへ、特徴的なスカートとくせっ毛の髪は分かりやすいな。うちの部下がアンタを見つけてこっそり追ってたんだよ、朝のリベンジに来たぜぇ」


 「・・・そう、どっか行ってくれない?今、とっても気分が悪いの」


手でシッシと動かすが奴らはニヤニヤと笑うだけだった。


 「逃すかよ、朝にやられた借りを返さないと気が済まねぇんだ!お前を倒す為に別のトゥループと合体して今は愛絶兎論(メタトロン)じゃなくて我武龍栄流(ガブリエル)なったがな!」


なるほど、見慣れない黒いバイクは別のトゥループの連中か。相手のメンバーは種族もクーリエしかいない様だ、暴走族集団のクーリエどうし息があったってところかな?


 「前のメンバーも戻ってきて総勢24人!しかもぉ!」


総長の・・・なんだっけ、あい・・・アイサ?いや、違うわね・・・アイ、アイネ!そう!アイネだ、アイネが合図すると全員それぞれ武器を取り出した。鉄パイプに金属バット、木の棒に片手ハンマーと色んな武器が全員の手に握られている。


 「へへ、驚いたか?これでお前も終わりだ、病院送りにしてやるよ!」


 「アンタ正気?流石にこの人数差で武器まで持ち出したら喧嘩じゃなくってただの暴力よ、警察の厄介になっても良いの?」


 「うるせぇえ!テメェに負けたままじゃあメタトロンに戻れねぇんだよ!」


周りの通行人達がザワザワと騒ぎ始める、いくら喧嘩の多いこの国でもこれほどの人数が一人を相手にするのは流石に犯罪になるからだ。スマホを向ける人もいれば騒ぎから離れようと急足になる人もいる。

 

 「・・・話し合うつもりは無い?」


 「あるか!テメェをぶちのめしたくってうずうずしてんだよ!」


 「・・・そう」


対話不能、喧嘩の意思あり、ならやるしか無い。


 「丁度良かった、私、気分悪かったの。イラついて自己嫌悪してムカムカしてたの。そしたらサンドバッグが向こうからやってくるなんてやっぱり運がいいわね私」


 「バカかお前、この人数差で何言ってんだ」


 「私、弱いものいじめは嫌いなの。先手は譲ってあげるわ、そうしないと可哀想だから」


私はおしるこを飲み干してそのスチール缶を握りつぶした後遠くのゴミ箱に綺麗に投げて入れた。ブラウスを脱いでそのまま出てきたからちょっと寒かったのよね、体を温めるいい運動になる。


 「はぁ?」


 「あと、救急車呼んでおいた方がいいわよ。今の私だと加減できそうに無いから」


 「ほざけェエーーー!!!ガブリエル総長アイネ!ぶっ潰す!」


 「私立多種族共同雛菊女子高等学校一年、優理。かかってこい」



<ここで蓮護優理の昔話をしよう。優理が新しい中学校に転勤した時の事だ。そこの体育教師はなんともいけすかない奴ではあったが決闘(一対一のスポーツ)の世界大会にも出たことがある凄い人だった。その体育教師の体育の授業でバジリスクの女の子をからかった事がきっかけだった。それでクラスの一部は笑い、体育教師はニヤついた顔を見せて、からかわれたバジリスクの女の子はただ顔を下に向けて耐えるだけだった。>


<しかし優理だけは違った。苛立ちを隠さずに体育教師に謝罪を求めると、体育教師は反感を露わにして優理もからかいの対象にした。優理は対話を求めたが体育教師は意に介さない。だから優理は体育教師をぶっ飛ばした>



<元世界大会の決闘選手はその一撃で怒り自身の技術を披露しようとしたが優理を捉えられなかった。優理は小柄な体格を活かした喧嘩殺法を身につけており、身体能力の高さを発揮して体育教師の後ろに回り込んでぶん投げた後、そのままボコボコにした>


<優理は決して自分を曲げたりしない。気に入らない事は気に入らないしそれを押し付けてくる奴は嫌いである。それ故に喧嘩になることが多く病院送りにして来た人は50人を超える。その喧嘩の経験とゲームで見出した複数戦のコツを活かして大人数での喧嘩でも負けなしだった。相手が雑魚なら例え50人でも一対一を50回やれば勝てるという理論を元に喧嘩を続けて来た>


<この体育教師も優理の餌食となったのだ。そして優理は言った。さっき笑ってた人、謝りなさいと。笑ってたクラスメイトは全員謝った。こうして転校初日で優理は有名人となり体育教師は生徒への体罰も明らかとなって懲戒免除となった。日々の喧嘩で磨き上げて来た優理の素早く動き各個撃破する喧嘩殺法は今でも役に立っている>


 「ぶへらぁ!」


相手の一人からバット奪い取りそのまま殴打、左からくる敵の鳩尾に左ストレートを入れてよろめかせてた後ヘルメットを上からバットで叩きつけて地面とお付き合いさせた後追撃の蹴りも忘れない。



正面から来る敵をそのまま後ろに投げ飛ばして後を追うと私にみんな付いてきた、よしよし、人数差では不利だ囲まれるのは避けて一対一の状態を作り続けないと。


 「せいゃぁあああ!!!」


投げ飛ばした敵を追って来た敵にぶつけて転倒させた後その横から来た敵を対処する。膝蹴りをヘルメットのバイザーに叩き込み、裏に回ろうとした敵を裏拳でバイザーごとぶち割り、起き上がった連中はバットの餌食にした。


 「チェエストォオオ!!!」


バットでヘルメットをぶん殴り一名気絶、地面に倒れたので追撃で蹴りを入れておく。横から鉄パイプで殴りかかられるが左手で受け止めて引っ張ったら相手はこちらに来るので肘打ちをバイザーを叩き割り地面に倒す。地面に倒れたので追撃の蹴りも忘れない。


 「叩きのめす!まだのめす!さらにのめす!もっともっとのめす!」


バットで4人を撃破した後跳躍して膝蹴りをかまして着地した足をバネにしてアッパーカットを放つ!それで敵は地面に倒れたので追撃の蹴りも忘れない。


 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!オーラッ!!!」


ラッシュを繰り出した後敵は地面に倒れたので追撃の蹴りを入れるも残りは半分になっていた。


 「な、なんなんだよお前は!?人間じゃねぇ・・・!」


 「はぁ・・・人間よ。アナタ達が弱いだけ。どうする?今なら尻尾まいて逃げてもいいけど?」


 「ふざけるなよ!私にはコレがあるんだ!」


総長のアイネは手に持った武器を捨てると懐からナイフを取り出した。それに周りのしたっぱは反応した。


 「姉御!?それはダメです!」


 「ッ!?アナタ刃物なんて正気!?20年は檻で暮らしたい馬鹿なの!?」


 「うるせぇ!これでテメェはおしまいだ!」


喧嘩においては刃物は御法度だ。鈍器はまだ体格差などを埋める為に黙認される事が多いが刃物は血が出るので死に関わる為喧嘩で使ったりなんかすると重い罪になる。薬草の錠剤は万能ではあるが失われた血液を瞬時に戻す事は出来ない為刺されて放置されたら出血死で死んでしまう為この国の銃刀法はかなり厳しい。


 「仕方ない、それごと投げ飛ばしてあげる!」


その時だった、轟音と共に何かが着地したのは。


 「!?」


その音の主は着地の衝撃で噴水を下敷きにして壊した、その轟音は私達を凍らせてしまった様に動けなくした。あまりにも大きな衝撃に私は思わず目を瞑った。


轟音と衝撃で起こった煙が晴れるとそこには化け物がいた。


 「う・・・そ・・・魔物!?」


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