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勇者よ世界を救え、救うのだ。

月僧さんの降りる駅まで付き添ったので少し遅くなって帰宅した。


 「はぁ・・・」


溜め息を吐きながらソファに倒れ込む、明日から学校行きずらいなぁ・・・


 「こら、しわになるぞ」


 「うるさい・・・疲れてるの、誰かさんのせいで」


家の中だからかクリカラが姿を表してふよふよと浮かびながら私に言ってくる。けど可愛い制服にしわができるのは困るのでブラウスだけ脱いでしまう。


 「・・・はぁ」


どうしてこんなことになったんだろう。私は普通に青春を送りたいだけなのに・・・絶対クラスの中で浮いたよね私、マジでどうしよう・・・てか、これでもし付き合うことになったら恋人になるってことだよね?まだ心の準備とか出来てないんだけど・・・いや、フラれる確率の方が高いのは分かってるけどさ。


 「お主よ、休憩が終わったら勉強するのだぞ。月僧カレンから教わらずに終わったであろう」


 「アンタのせいだけどね。てか、私種族学得意だから別にいいし」


 「そうなのか?ならなぜあの時分からないと言ったのだ」


 「アンタが余計な事言ってくるからでしょ、それで月僧さんのこと無視しそうになったし」


 「余計な事ではない。よいか、お主の行動でこの世界に生きる全ての人の命運が決まるのだ。この一年くらい皇舞桜と恋仲になる為に使わぬと世界が滅ぶぞ。その後でもお主の望む青春はできるであろう」


 「一年くらい・・・?」


なんだコイツは・・・私はその言い方に無性に腹が立った。ソファから立ち上がってクリカラに真正面から言う。


 「私にとってはこの一年も大事なの!勉強とか色々頑張ってやっっと掴んだ高校生活よ、三年間全部大切に決まってるでしょ!なにその言い方、気に入らない。アンタにとってはただの一年でしょうけど私にとっては念願の青春の三分の一を捨てろって言ってる様なものよ!」


それに三年生は就職や進学で忙しくなるだろうしその為の勉強をしないといけない。高校一年目というのは高校生活で比較的に自由にできる時間があるのだ。その一年を捨てろと?


 「気持ちは分からんでもない。しかし後269日で世界が滅ぶだ、諦めて皇舞桜と恋仲になる事を考えよ」


 「その言い方マジでムカつく。なに?なんでアンタなんかに私の人生決められないといけないの」


 「そうしなければ世界が滅びるからだ。お主ならやれる」


なんだコイツ、私の何を知っていると言うの。私ならやれる?そんな訳ないでしょ、相手は住んでる世界も違うしそもそも同性だ。今日だって相手にされるまで一苦労だったじゃないか、あの護衛の人に目をつけられたかもしれないし警戒されてもう話しかけれないかもしれない。それなのに私ならやれる?ふざけないで。

 

 「・・・アンタさ何か勘違いしてない?」


 「勘違い?何をだ?」


 「私は勇者なんかじゃない、普通の女子高校生だよ!私の前世は凄かったね、勇者になって魔王を倒して世界に平和をもたらして来世に希望を託してパッピーエンド。でもね、今の私はただの女子高校生なの!なんでもできる勇者なんかじゃない!」


気づけば私は叫んでいた。ここまでの理不尽な目にあったことについて吐き出す様にクリカラにぶちまけた。


 「・・・しかし、お主は勇者の生まれ変わりで」


 「だからなに!?私は私!前世なんて知らない!私は自分の道を他人に決められるのが大っ嫌いなの!前世が勇者だったから今世も勇者になれって?冗談でしょ?大体、私は!」


そこで鞄に入れていたスマホから着信音が響いた、この時間はママだ。出ないとママを悲しませてしまう。


 「・・・」


クリカラを睨みつけた後スマホを取り出して電話に出る。

スマホから聞こえてくるのは優しく元気なママの声だった。


 「もしもし、ママ?」


 「はーい!ママでーす!ゆーちゃん元気?」


 「まあ、元気だよ。今お仕事終わったの?」


 「うん!今終わったー!なに、元気ないねゆーちゃん。何かあったの?」


あったよ、色々。でも話しても不安にさせるだけだ。


 「・・・雛高の授業やっぱり難しいなぁーって!今は最初だからついていけてるけど後半心配」


 「大丈夫!ゆーちゃんはやればできる子だから!ママはちゃんと知ってます。パパとママの自慢の娘よ、できないことなんてありません。分からないところは周りの人に頼ればいいの。それに赤点取らなかったらとりあえずOKだから!」


 「もう!流石に赤点は・・・いや、取るかもしれないけども!けど、ありがとうね」


 「元気出た?」


 「でた、でた。ありがとう、ママ大好き」


 「ママもゆーちゃん大好き!」


ママの声を聞いていると自然と落ち着いてきた、最後に会ったのは一週間前ぐらいなのにもう会いたいと思ってしまうのは色んな事があったからだろうか。


 「うん、本当にありがとう。学校は楽しいから安心してね!」


 「念願の雛高だもんね、楽しんでねゆーちゃん」


 「うん!じゃあね、ママ」


 「はーい、またねゆーちゃん」


それで電話は終わって私はクリカラに向き直る。


 「さっきのは母君か?」


 「うん、ママだよ」


 「愛されておるのだな、声から伝わってくる。どんな人だ?」


 「ほら、これがママとパパだよ」


スマホの待ち受けにしている写真を見せる。その写真はこのスマホを買ってもらって初めて撮った写真で私とママとパパが仲良く映っている。


しかしその画像を見たクリカラは固まった。


 「なッ!?・・・お主の母君は・・・淫魔か!?」


淫魔、それはサキュバスとインキュバスに対する蔑称。他人を誘惑するフェロモンを持ち人の生命力などを吸い取って生きるサキュバス達は昔は毛嫌いされていた、ママはそんなサキュバスだ、昔からサキュバスである事で演奏した音楽を否定されたりして苦労してきてサキュバス達のイメージを変える為にママ達は音楽などの様々な事で戦い続けて現代では偏見は無くなってきている。


ママは音楽講師で色んなところを飛び回っている、自分の道を貫いて演奏しているママは私の憧れで大好きだ。


そんなママを今、コイツは淫魔という蔑称で呼んだのだ。


 「ッ!」


私は反射的にスマホをクリカラにぶん投げた、怒りに任せて投げたそれはクリカラに当たった。


 「なにを、」


 「ふざけないで!!!」


心から、腹の底から大声を上げた。今は私の中には怒りしかなかった、それはまるで抑えの効かない波の様に溢れ出てきて止まらなかった。


 「本当になんなのアンタ!?人の人生滅茶苦茶にした挙句ママを侮辱!?アンタ何様!?アンタも女神も碌なもんじゃない!」


 「な、なにを」


 「もううんざり!好きでもない相手を好きになれとか、そうしないと世界が終わるとか!しかもみんなの前で告白!?ふざけるな!私の青春を返してよ!私が望んだ青春を返せ!!!」


 「お主・・・」


クリカラが近づいてくるが私は怒りのままに拒絶した。


 「近づかないで!来たらマジで世界を終わらせるから」


 「ッ!」


 「前世なんて知るもんか・・・世界の終わりとか知らない!」


私はそのまま駆け出してドアから外へと出ていった。


 「・・・我は・・・」


部屋に残ったは一振りの剣だけだった。


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