第十八話 邂逅
今日はシュンくんとスバルさんと一緒に訓練をしました!
うちはシュンくんが少し苦手だけど、何事もまずは慣れですよね!
「シュンくんは好きな食べ物ありますか?」
「カレーかな! お姉さんは?」
「えーっと……海鮮丼ですかね」
「わたしは寿司が好きだ」
「……てめぇには聞いてねぇんだよ」
「まあまあ……」
どうしてこうなるのか……
ここは話題を変えてみましょう!
「好きな場所はありますか?」
「博物館や美術館です! 妹が好きなので」
「ほう……、妹が好きなのか……」
「いやその言い方は語弊があるだろ!」
「あ、あはは……」
仲がいいんだか悪いんだか……
うちはそう思いつつ、今日も訓練をしにトレーニング施設へ向かう。
すると……、道中でさわやかな髪型をしたスーツの子どもを発見しました。
「やあ、お兄さんたち。初めてだな!」
「なんだ? このガキ?」
「見ない顔ですね……」
「そうだな。貴様、何者だ?」
「もっと言い方があるだろうが!」
「まあまあ……」
それにしても、どう見ても十代後半のこの少年は、どこから入ったのでしょう?
「【停止】!」
「な、なんだ? 身体が動かねえ!」
「えっ? うちは動きますよ!」
「わたしもだ」
「でもよ、能力が出ないぜ? おれだけ?」
「一体どうして……あ!」
「なんですか? お姉さん」
「さっきあの子、ストップって言いましたよね?」
「むっ! そういえば……!」
うちとスバルさんは慌ててあの子の後を追います。
「よし、【停止】!」
「むっ!? 身体が動かん……」
「スバルさんまで!?」
「あはは! おらおら!」
その少年はスバルさんを蹴りまくりました。
うちは必死に止めに入ります。
「や、やめてください! こら!」
「うるさい! いまいいところなんだよな!」
「きゃっ!」
うちが打たれると、鬼のような形相のシュンくんがその子を突き飛ばしました。
「おいクソガキ! お前は許さねえ」
「ぎゃっ!」
「あっ! 大丈夫ですか?」
すかさず助けに入るうち。
すると、うちにも仕掛けられます。
「馬鹿だな! 【停止】!」
「あっ! 藤さん!」
うちも身体が動かなくなりました。
どうやら、心臓を止めたりはできないみたいだけど……
「うおーっ! いまならエロいことし放題じゃねーか!」
「シュンくん……?」
「じょ、冗談ですって!」
声色を少し変えるだけでこの反応。
ちょっぴりおかしいですね。
でも、いまはそんな状況ではありません。
「わたしがやる。もう大丈夫だ。『理解』したからな」
「スバルさん!」
「うおー! いけ、くそ野郎!」
「なに格好つけてるんだ! 停……」
「【停止】だ!」
「うっ……、身体が動かない……!」
スバルさんの方が一手早かったようで、その子は止まってしまいます。
「さすがはスバルさん!」
「だな! じゃあ藤さんに、エロいことすっか!」
「くだらんことをしようとするな。蹴るぞ?」
「冗談だっての!」
「ま、まあまあ……」
喧嘩する二人……。
それより、助けてほしいんですが……
「やれやれ、どうしてわれがこんなことをせねばならんのだ……」
「あっ、マネルさん!」
「あいつ、スバルに少し似てるな!」
「誰だ貴様!?」
「貴様こそ誰だ? 【再現】! そうだな……、【解除】!」
「うおー! 助かりました!」
「ト丸、油断はするな」
「はい! すみませんでした!」
「帰るぞ。【移動】!」
「じゃあな、お兄さんたち! またいつか!」
「待て!」
そうして、そのスーツの二人組は消えてしまいました。
「あれは、コピーか?」
「おそらく……」
「あんなの卑怯だろ! 味方にもいるけどよぉ!」
「…………それはわたしのことか? とりあえず、ボスに報告だ!」
「ですね!」
「そうだな。ボスさんなら、なにか知ってる筈だ!」
「行きましょう!」
「ところでお姉さん、身体は?」
「あっ、動ける……!」
「よかったな! 少し残念だったけど」
「残念?」
「うん。お姫様抱っこで運ぼうと思ったのにさー」
なんてロマンチックなのでしょう。
……とか、一瞬思っちゃううち。
……って、駄目です! シュンくんはそんなつもりで言ってるんじゃないのに……!
ここは話題を変えなければ……!
それとも、真摯に向き合った方がいいのでしょうか?
悩んだ末に、うちは決めました!
「では、今度お願いしますね」
「は、はい!」
「やれやれ……」
そうして後日、ボスにを報告しました。
どうやら、緑のスーツの子がト丸。
グレーのチェック柄のメガネの人はマネルと言って、「はじまりの世代」の方々のようでした。
「しっかし、あの二人なかなかやるよな!」
「はい!」
「たしかに。蹴りも重かったし、かなりのやり手だった」
「気をつけてね。特にマネルは強い。コピー能力の使い手だからね」
「マジっすか?」
「そんな人が相手だなんて……」
「ふむ……引き締めなければな……」
「それよりさ、リーダーに言って、仲間にしていいか許可もらおうぜ!」
「え?」
「は?」
うちとスバルさんが疑問符を浮かべる。
リーダー? 一体誰のことなのでしょう……?
「もしかして、シュンも創立メンバーなのか?」
「お前もかよ?」
「ああ。ほぼな」
「マジか!」
「あのー、なんの話ですか?」
「あ! そういえば、お姉さんは知らなかったのか!」
「トキマたちの組織のことだ。君もどうだ?」
「面白そうです! なんて名前ですか?」
「『新・時空自警団』です!」
「えっ?」
本当なんだろうか?
でももし本当だとしたら、あの組織に対抗できるかもしれない。
「だから、『新・時空自警団』ですって」
「いえ、聞こえてました! 少し驚いただけです! うちもいいですか?」
「はい! 許可は取ってます!」
「いつ取ったのだ?」
「後でな!」
「貴様は馬鹿だな」
「なんだと?」
「まあまあ……。それよりも、さっきの話を詳しく!」
「ああ、いいけど……」
「一応言っておくが貴様ら、ボスの前だからな。失礼なことをして、申し訳ありません!」
「いいんだ。それにトキマたちは、僕も誘おうとしてるみたいだしね」
「マジか! それじゃあやっぱり、『はじまりの世代』を誘うのもありですかね?」
「うん。それはトキマたちに相談しなくちゃわからないけど、試しに聞いてみるといい」
「ご意見あざっす!」
「いいのか……」
「楽しみです!」
そうして、うちもトキマさんのところへと向かいます。
「おっ、いたいた! おーい!」
「あっ、シュンさん! 藤さんも!」
「なんの用ですの? お兄さま」
「いやそれがさ……」
「うちも例の組織に参加してもよろしいですか?」
「はい! いいですよ!」
「わたくしがサブリーダーですわよ?」
勇気を振り絞って聞いてみると、許可が出ました。
何事も、まずは試してみるものですね!
「はい! よろしくお願いしますね!」
「うおー! やる気出るなあ!」
「お兄さまはいつもですわよね?」
「はははっ……」
「なにを笑ってる?」
「あっ、スバルさん!」
「スバルさんも、ご用ですの?」
「ああ。藤くんも参加したのだろう? わたしも正式に入団したい。いつまでも保留だと、格好つかんからな」
「はい! お願いします!」
「スバルさんも加わるとなると、賑やかになりそうですわね!」
「おれは?」
「お兄さまはいつも賑やかですわ」
「まあまあ……」
ということで、正式に入団したスバルさんとうち。
こっちでの生活も、ますます面白くなりそうです。
ト丸 男 ??歳
十八話で登場。
特殊能力は停止。
自分や他人の時間を止める。
「はじまりの世代」の一人。
性格は勉強熱心でさわやか。
ただし野心もあり、いつか「はじまりの世代」のトップになることを夢見てる。
口調は「~だな!」や「~な!」といった語尾をつける。
基本的に呼び捨て。尊敬してる人は「~さん」と呼ぶ。
ドライアップバングショート(短髪のさわやかな髪型)
髪色は黄緑
一人称は「ぼく」
濃い緑色のスーツを着ている。ネクタイはしていない。
若い
見た目は十代後半くらい
マネル 男 ??歳
十八話で登場。
特殊能力は再現。
見た能力をコピーする。
模倣みたいな能力だが、こちらの方が上。
「はじまりの世代」の一人。
性格は高圧的。
ウルトラマリンブルーの髪色で、ビジネスショートツイストスパイラルパーマ(青色で短髪)
メガネをかけている。
一人称は「われ」
グレーのチェック柄のスーツで、ネクタイは青。
見た目は二十代後半くらい