チャプター7 孤独
照和47年4月某日。
小学二年生になった雪子は、色々と悩んでいた。
まず、クラスメートと話が合わない。
表面上は誰とでも適当に相槌を打っているものの、全然楽しくないのである。
男子は幼稚でガサツだ。話にならない。
女子はまあデリカシーはあるけど、なんであんなに噂話が好きなんだろう?
それから勉強は好きだけど、授業が退屈に思えて仕方がない。
第一、進度がノロノロし過ぎだ。
時間のムダとさえ思えてしまう。
あんまり暇だから、本屋に行って、六年生までの国・社・数・理の各教科の参考書を、立ち読みで全部読みまくった。
そしてドリルなどの練習問題も、六年生の分まで全部買って来て、すっかり解いてしまった。
これらの件について父に相談すると、「じゃあ、読書をしてみたら?」と言われた。
どうやら彼女の父親も、子どものころ、同じ思いをしたらしい。
早熟な天才は、精神的に孤独なのである。
それからは、平日は学校の図書室、休日になると図書館で、あらゆる本を読みふけった。
雪子も自分の飢えた知識欲を、ジャンルを決めない数々の読書で満たすことにしたのだった。
恋愛小説や、SF小説、推理小説や、伝記などのノンフィクションまで。
色々読んでみたが、一番興味を惹かれたのは科学の本。特に宇宙や物理の本だった。アインシュタインの相対性理論なんて、シビレル内容だった。
一度そうなると、中学や高校の物理の参考書などを中心に読みだした。
そしてしだいに、大学生が読むようなものにまで手を出し始めたのだった。
そこで、一つの壁にぶち当たった。
より最先端のモノを知るためには、英語やドイツ語などの外国語が必要なのである。
当然、雪子は外国語の勉強に着手した。
その結果、小学二年生の終わりまでに、英語の日常会話は、ペラペラにしゃべれるようになっていたのだった。
もうすぐ三年生か。そう言えば、お父さんが「春休みに引っ越すから、学校も転校になる。」とか言ってたな。
まあ、いいか。どこに行こうが小学生は同じ。
適当に話を合わせておいて、私は好きな物理を楽しもうっと。
そんなことを目論む雪子であった。




