08. 納品クエスト
「どうした?」
「あれ。突発クエのときの女の子」
晴樹の問いに、広樹は少女たちをそっと指さしながら答えた。
「んー、なんか困ってるっぽい? 行ってみるか?」
「そうだね」
二人が向かっていくと、先に気づいた女性が「何か用?」と尋ねてきた。
「なんか困ってる風だったんで、なにかあったのかと思って。なにもないなら俺たちは狩りに戻りますけど……」
「たしかリーシャさんでしたよね? 冒険者ギルドの前で会ったヒロです。うなだれているように見えたんで、声をかけてみました。失礼でしたか?」
「そういうことね」
「あ! 初級ポーションをくださった! あの時はありがとうございました。――いえ、実は、薬草を採りに来たんですけど……」
リーシャは言葉を濁して周囲に目をやった。
広樹と晴樹も同じように見渡してみる。
ついでに鑑定をかけてみるが薬草と出てくるものがない。
広樹は小首をかしげた。
「鑑定をかけても『薬草』って出てこないんですけど……」
「ええ、ここに残っているのはほとんど雑草ばかりです。薬草は誰かがとりつくしてしまったみたいで……」
「それどころか乱暴にむしりとったようなのよね。本来ならなるべく新葉を使いたいから25cmくらいに揃えて専用ナイフで丁寧に切りとるのだけど……そうした形跡はないのよ」
「丁寧に切りとれば、そこからまた伸びてくれるんですけど……」
女性はため息をついて小さく首を振った。
「リーシャ、今日はあきらめて帰りましょう。ここはとうぶん使えないわ」
広樹はとりあえず聞いてみることにした。
「あの、専用ナイフってどういうものですか? どこで買えますか?」
女性はアイテムボックスから小さなナイフを取り出した。
「これよ。ポーション屋か雑貨屋で売っているわ」
「それを使えば僕たちでも薬草を採取できますか?」
「ええ。このナイフは草に負担をかけずに切りとることができるから、長さをそろえて1本ずつ丁寧に切りとれば初心者でも問題なくできるわよ。もしかしてあなたが採集してきてくれるの?」
「そのナイフが手に入ればやってみようと思っています」
「それじゃあ私が持っているナイフを貸すから、薬草を採集してきてもらえるかしら? 報酬はもちろん出すわ」
クエスト種類:納品クエスト
・薬草 0/30個
内容:専用ナイフを使って丁寧に切りとった薬草を集める。新葉から根元に向かって25cmくらいのところを切りとって長さをそろえること。それより短い丈の薬草には手を出さないこと。貸し出したナイフは納品時に返却すること。
依頼主&納品先:ポーション屋 薬師 ティアナ
報酬:3000G
広樹と晴樹はシステムウィンドウを確認してティアナに向き直った。
「やります」
クエストを受領し、それぞれ1本ずつ専用ナイフを受け取った。
スライムを倒しながら薬草を探し、二人はようやく薬草の群生地を見つけた。
「ようやくだねー」
「ほんとここまでだとは思わなかったぜ」
やっと見つかったということで思わず安堵のため息が零れ落ちる。
それっぽいところはどこもかしこもむしられており、まれに『薬草の茎』というものが残っていることがあるだけで、肝心の納品できる薬草はここまで皆無だった。
きっとこの手前まで刈りとって町へと戻っていったのだろう。
生産職の人間なのか、はたまた納品クエスト目当ての戦闘職の人間なのか。いずれにせよプレイヤーの仕業には違いないのだろう。
結構奥まで来てしまったが、まだスライム以上に強い魔物は出てこなかったし、採取地はセーフティエリアになっているようなので、安心してクエストに集中できる。
二人は専用ナイフを取り出して教わった通りに丁寧に薬草を採取し始めた。
「とりあえずここの群生地に生えている分は採取し終わったけど、この後どうする? いったん町に戻って、ポーションが簡単に自作できるようなら僕としては試してみたいと思ってるんだけど」
「確かに自分で作れるようになればなにかと助かりそうではあるな……。問題は作り方次第か」
「うん。だからダメもとでティアナさんに教えてもらえるかどうか聞くだけ聞いてみようかと思うんだよね」
「俺もいつかは魔力ポーションくらいは作れるようになりたいし、一緒に頼んでみるか」
「専用ナイフまで貸してくれるくらいだし、それにこれも……」
そういって広樹がインベントリから取り出したのは、ワープ用のアイテムだった。
広樹たちがファーストの町のポータルへ登録済みだと知ったティアナが、町への帰還用にパーティで使えるワープスクロールを1枚くれたのだ。これがあったから薬草を探してこんなに奥までくることができた。せめてものお礼として追加納品を告げられてもクエストを受けられるくらいには採取できたし、自作の練習用として使える程度の予備も集めることができた。薬草以外の材料はわからないけれど、一番肝心な薬草があれば他はなんとかなるのではないかと考えられる。
「そうと決まれば、サクッと町へ戻って納品クエを済ませて、ヒロの魔法も買っちゃおうか。そのほうがもしかしたらポーション作成に役立つかもだしー」
「たしかにー。んじゃまあそういうことで。初ワープといきますか。忘れ物はないよね?」
「薬草は全部インベントリに片づけたし、専用ナイフも収納済み。うん、大丈夫だ、行ってくれ」
「ワープ、ファーストの町!」
思考発動もできるようだが、アイテムの使用は初めてのため、パーティメンバーの晴樹にもわかるように広樹は声に出してワープスクロールを使った。




