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07. スライム狩り

「アイスニードル」

 スライムに晴樹の魔法が当たって動きが止まったところで、広樹が剣でとどめを刺す。

 スライムに氷属性は相性がいいようだ。半ば凍った状態だとスライムの核も動きを止めるため、初心者の広樹でも簡単に攻撃を当てることができた。今はまだスキルを買っていないのでただ刺すか切るかしかできないが、それでじゅうぶん討伐できている。

 色は問わないという表現が気になっていたが、赤いスライムも水色のスライムも緑色のスライムも違いは感じられず、同じように倒せていた。ただスライムゼリーの色がそのスライムの色になっているだけだったので、そこは安心した二人だった。

「リポップ間隔短くしてるのかな?」

 次々とリポップしてくるスライム。おかげで他のプレイヤーとモブの取り合いになることもない。周囲と少し距離を置けば5人フルパーティでも十分湧き待ち無しで狩り続けることができるだろう。

「スタンピードの予兆っていう設定だったりしてな」

「リリース直後の最初のイベントとしてはどうなの? 強いボスクラスの魔物が出てきたら、低レベルの僕たちじゃクリアできないんじゃない?」

「エリア解放用のフィールドボス1体ならありえそうじゃないか?」

「ハル……なんか変なフラグ立ててない?」

「ええー? 面白そうだなって思っただけなんだけどー」

「僕もちょっと面白そうって思ったけどさ」

「だよな!」

 わざわざ声に出してスキル名を唱えなくても攻撃したいスライムに杖先を向けるだけで魔法が発動することがわかってからは、晴樹も雑談しながらさくさくとアイスニードルを打ち込んでいくようになった。

 特に今はアイスニードルしか使えない状態で、スライム狩りもパターン化している。フルパーティでボスに挑むようなときであれば、事故防止に都度スキル名を発したほうがいい場合もあるだろうが、パーティメンバーにはフレンドリーファイアは起きないことはすでに確認できているので気楽なものだ。

「あ」

 システムからの通知音を受けて表示されたメッセージに目をやった広樹は小さく声を上げた。

「ハル、そろそろ休憩を取らないといけない時間みたいだよ」

「あ、今、俺のところにも来た。いったん落ちるか」

 きょろきょろと見回した広樹は、少し行ったところに1本の樹が立っているのが見えた。

「もしかしてあの樹の周辺ってセーフティエリアだったりしないかな?」

「とりあえず行ってみるか」

 スライムを避けながら向かってみると、その樹の周囲だけスライムが避けているような動きをしているのが見て取れた。

 そこだけ白い小さな花畑のようにも見える。

 広樹は試しにその花を鑑定してみたのだが、『???の花』としか見えなかった。

 そのことを晴樹に伝える。

「もしかして鑑定のレベルが足りないのかな? ま、いいや。マップにセーフティエリアの表示があるから、ここでいったんログアウトしようぜ。1時間後にまたログインでいいか?」

「うん、わかった。何かあったらスマホに連絡入れるよ」

 二人は樹にもたれかかるようにしてログアウトした。


 広樹たちの祖父母の時代までは、夏休みの宿題というものがあったが、ほとんどの宿題は親が手伝い――家庭によってはすべて親のみが作成している宿題もあり――社会問題となっていた。それを受けて親世代には徐々に宿題というものは無くなっていった。ただ自由課題だけは残っている。そのためメタバース内の学校の図書室は年中無休で24時間開放されておりいつでも利用可能だ。

 広樹と晴樹はその自由課題にワイスシュトラーゼを選択してすでに学校にも届けを出している。

 ゲーム会社のほうもそうした状況を把握しているため、学生に向けて学校へ提出用のデータを自動作成する設定も設けてある。個人コードはデバイスに登録してあるため、あとは提出先の学校名と学年とクラスをゲーム側に入力すれば、自動で始業式の日に学校へ提出されるというわけだ。

 実質的な宿題は、いまはもう毎日生身の体を動かして運動することだけだ。

 中にはそれすらこなせない者がいることも事実だったが。


 広樹はベットから起き上がると、ヘルメット型のデバイスを外して深呼吸する。

「楽しかったなー」

 軽く体をほぐすような動きをしながら台所へ行き、昼食を取ると、外へ出て散歩をする。

 帰ってきたら、水分の補給をして、トイレを済ませて再びゲームへログインする。

 夏休み中はたぶんずっとこんな感じで過ぎていくんだろうなと思いながら、広樹は微笑み目を閉じた。


「よ、ヒロ、お帰りー。僅差で俺の勝ちー!」

「ただいま、ハル。よくわからないけど、待たせたんじゃなければよかったよ」

 さてスライム狩りの続きでもと思いながら剣に手をかけた広樹は、少し離れたところにいる二人組に気がついた。

 一人の女性は腕を組んで立っており、もう一人の少女は草むらの中に座り込んでいる。

 広樹はその座り込んでいる少女に見覚えがあった。

「あれ? リーシャさん?」


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