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夏休みはゲーム三昧  作者: 竪川杼緯


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60. ライトラウペ狩り

 広樹が冒険者ギルドの前で待っていると、すぐに晴樹が戻ってきた。

 晴樹に羽の説明をする。

「それすっげえ楽じゃん」

 晴樹は弾ける笑顔で期待感を表した。

 そして時間になった旨のアナウンスが二人だけに聞こえると、瞬時に転移して、気づけばダンジョンの中へ立っていた。

「おー、ここがA区画ってやつか」

 各部屋の扉にはアルファベットが書かれたプレートが取り付けられ、扉のすぐ横には羽が挿せそうな器具が取り付けられていた。

 広樹が持っていた羽を所定の場所に挿す。すると、扉が静かに開いていった。

 部屋の中は想像よりもずっと広かった。たぶん拡張されているのだろう。扉をくぐってすぐはセーフティエリアになっているようなので、とりあえず中に入る。二人が入ると扉は自然と閉じていった。

「なんか閉じ込められたような感じがする」

「その感覚も間違いじゃないけどな。3時間は出れないわけだし」

 実際は出れないわけではないのだが、出るつもりもないので特に問題はない。

「さて、それじゃあさっそく『暗闇のアイテム』ってやつを使ってみるか」

「あ、ハル、これ」

 広樹は『暗視眼鏡』を晴樹へと渡して、自分も装着する。

「よっし、んじゃ、使うぞ」

「おけ」

 インベントリから『ドゥンケルハイト』を指定して『使う』を選択する。すると一気に部屋の中が真っ暗になった。

「へえー、こんな風になるのかー」

 晴樹は暗視眼鏡をつけたり外したりして確認する。まあほとんど遊んでいるようなものだが、広樹も同じことをしているので同類だ。責めるものなどどこにもいないので、とうぜん問題なしだ。

 暗視眼鏡をかけると、色の識別はできないが、物の形はちゃんとわかるようになる。カラーの世界から白黒の世界へ変わるだけといった感じだろうか。外すともちろんなにも見えなくなる。

「ニートリヒ、『ライトラウペ』のいる場所はわかる?」

『わかるよマスター』

「案内お願い」

『こっちー』

 空中に矢印が浮かんで向かう先を示す。

 通路は広く、通常のダンジョンとほぼ同じだ。歩くだけなら4~5人が横になっても余裕がある。広樹が持つ片手剣くらいの長さなら問題なく振れるだけの広さがあった。

 数メートルほど進むと脇道があり、そちらに最初のライトラウペが食事をしている場面に出くわした。洞窟タイプのダンジョンだが、草花はあちらこちらで生えている。ライトラウペはそうした植物を食べていた。

 広樹たちの登場に気づいたライトラウペが頭を持ち上げる。やや上体を反らすような動きをしたため、広樹は回避準備を取り、晴樹は後ずさって壁を盾にした。

 予想通り唾液を飛ばしてきたので、広樹はいったん横に避けてから、剣を構えてライトラウペへと走り寄る。

「ダークスラッシュ」

 広樹の剣がライトラウペの体に傷をつける。

 ライトラウペは嫌がるように後ずさりながらも、再び広樹へ向けて唾を吐いてきた。

「ウィンドシールド」

 シールド魔法でどの程度防げるのか。実験を兼ねて避けながら魔法も放った。

 試してみた感じ問題なさそうだ。しかも唾液が床に落ちずに相殺されるため、足場のことを考えると状況によってはシールド魔法を優先使用することも手かもしれない。

「アーススピア」

 うにょうにょと体表を伸縮させながら小さな脚を使って広樹へと向かって来ようとしていたライトラウペを、土の槍で突き刺して足止めする。

「ウィンドエッジ」

 暴れながら胸部を反らしたライトラウペの胸元を半ばほど切り裂く。

「シャドウエッジ」

 壁からそっと顔を出した晴樹が放った魔法が、残り半分を切り飛ばしてようやくライトラウペを倒すことができた。

「うーん、外のラウペよりはちょっとだけ強い感じかなー?」

「今度は俺も最初から参戦するわ」

 晴樹もセイに頼んで、ライトラウペがいる方へ案内してもらう。自分が契約している精霊スライムに直接聞いた方がより正確な位置が伝わるのだ。

 次のライトラウペはすぐに見つかった。

 どうやら小部屋みたいにちょっとだけ広くなっている場所に1~2体ずついるようだ。

 予約時間は3時間と有限だ。広樹と晴樹はいろいろと魔法を試しながらもずんずんと進んでいく。どれだけ進んでも小部屋にはライトラウペがいるので湧き待ちをする必要がない。とはいえ3時間ずっと走って移動をするのはさすがに疲れるので、歩く速度は普通だったけれど、休みなく移動は続けた。

「アーススピア」

「アサルトクロウ」

「ダークスラッシュ」

「シャドーボール」

 見つけ次第『アーススピア』の魔法で動きを制限し、その間に魔法やスキルを叩き込んでHPを削る。その繰り返し。

「アイスニードル」

「シャドウエッジ」

「ウィンドエッジ」

「アイススピア」

 すでに胸部を持ち上げた状態だったときは、頭に『アイスニードル』を撃って唾液の吐き出しを阻止してから、魔法でHPを削っていく。

 何度か繰り返して倒していくうちに、このやり方が割と安全に狩れることに気がついた。

 飽きないように2回目以降の魔法はいろいろ変えてみているが、今持っている魔法の中では雷属性だけ使わないようにすればドロップ品に影響はないとわかった。

 そうやって進んでいると、少し先に大部屋というか大広間のような場所が見つかった。

『マスター、あそこにライトラウペがいっぱいいるよ』

 ニートリヒとセイが同時に注意を促す。

「ヒロ、どうする?」

「雷属性が使えないのが痛いねー。こういう時はチェインライトニングが鉄板だったのに。まあ1体ずつ呼び寄せて狩るしかないかなー?」

「ははっ、狩るのは確定か」

「えー、だってせっかくの高品質の糸だよー? 僕らの装備を更新するのにぜひ手に入れたいじゃない」

「よっしゃ、じゃあそれでいくか。でもまじで危なくなったらチェインライトニングを使うぞ」

「うん、わかった。僕もそうするよ」

 まず広樹がそっと覗く。ちらりと見渡してからすぐに顔をひっこめた。

「すぐ近くにはいないね。とりあえず左側にいるやつを釣ってみるね。ウィンドカッターでいいかな?」

「それが無難かな」

「んじゃやるよー」

「りょ」

「ウィンドカッター」

 小声で魔法を唱える。広樹は入り口の右壁ぎりぎりに立って、そこから視線の先にいるライトラウペへ向けてウィンドカッターを放った。

 食事中のライトラウペへ見事命中し、小さなうめき声のような音を発してから、広樹がいる方へと頭を向けた。歩みは遅いながら、小さな脚を使って近寄ってくる。

「よし、釣れた」

 ある程度引きつけてから、これまでのように魔法を当てていく。

「アイススピア」

「シャドーエッジ」

「ウィンドエッジ」

「シャドーボール」

 これで1体無事に討伐完了だ。

 今度は入り口左壁ぎりぎりに立って、右側の壁面近くで食事をしているライトラウペへと同じように攻撃をする。これで2体だ。中にはおよそ20体ほどおり、しかも中央にはやや体の大きい個体が光る石のようなものをかじっている。

「真ん中のアレって、ボスみたいな感じかな?」

「他と比べて体が大きいし、可能性はあるよなー」

 なるべく気づかれないようにと気をつけながら、次に近い位置にいるライトラウペへウィンドカッターを当てたところで、中央にいる特殊個体が顔を上げて「ぐきゅ」と鳴き声のような音を発した。大広間にいたほかのライトラウペがいっせいに顔を上げてこちらを向く。

「やべっ気づかれた」

「こうなったらやるしかないね」

「おーし、俺の華麗な魔法を食らうがいい」

 晴樹がやけになってやや壊れかけたが、それでもやることはやっている。

「ヴィントシュトース」

 近づいてきたライトラウペをいったん突風で飛ばして距離をあける。

「ヴィルベルヴィント」

 つむじ風の魔法を使って、可能な範囲で固まるように仕向けた。

「テンペスト」

 暴風雨の魔法で、散らばっていたライトラウペがようやくある程度のまとまりをみせた。

「よーし! いくよ! 桜吹雪!」

「桜吹雪!」

 広樹と晴樹が持つ範囲攻撃魔法の中で、一番頼りになる魔法だ。

 どんどんとHPが削られていく中、わずかに残っているものを個別で討伐していく。

 しばしのちに残ったのは、中央にいた特殊個体だった。

「あ、やっぱこいつボスだ」

 鑑定をした晴樹が警告する。

「りょ」

 広樹はダッシュで近づき、アースインパクトをお見舞いすると、すぐにバックステップでさがった。さっきまで広樹がいた場所にボスが吐き出した唾液がかかって白い煙を上げる。

「アサルトクロウ」

 晴樹の魔法が直撃し、ボスは嫌がるように体をくねらせる。

 ボスの後ろに回った広樹がダークスラッシュで切りかかり、晴樹がダークエッジで首を狙う。

 晴樹のほうへ向かおうとしたボスを、広樹が足止めする。

「アーススピア」

 雷属性が使えないとなると、広樹はやや攻撃力に欠けてしまう。ここは晴樹に踏ん張ってもらおうと、広樹は補助に回ってボスをほんろうしようと努めた。

「ダークスラッシュ」

 唾液を吐き出す動作を始めると、切りかかって邪魔をする。

 その間に晴樹はどんどん魔法を撃ちこんでいった。

「シャドースコーピオン。シャドーエッジ。シャドーボール。アイスニードル。アイススピア――」

 そして。

「ダークスラッシュ!」

「ダークエッジ!」

 ようやく頭と胸、胸と腹が切り離されて、ボスは倒れた。


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