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05. 合流

 商業ギルドの建物脇は比較的プレイヤーの数が少なかったため、広樹はそちらへ移動してフレンド欄を開いた。

 晴樹のフレンド登録はデバイスナンバーからすでに済ませている。

 晴樹のキャラ名である『ハル』の文字がログインを示す白色になっていることを確認して、広樹はメッセージフォームを開いた。

 ゲームによって、個別チャット(個チャ)ささやき(ササ)ダイレクトメッセージ(DM)などと呼び名は異なるが、いずれも1対1で会話ができるチャットシステムのことだ。ワイスシュトラーゼではメッセージと呼ぶようだ。

『ヒロ:ハル? ヒロだけど、チュートリアルは終わった?』

『ハル:おー、さっき終わって、今から窓口で報酬受け取るところだ』

『ヒロ:ちょうどよかった。パーティ申請飛ばすから、それで僕の居場所を確認して来てくれる?』

『ハル:りょ』

 パーティを組めばマップにパーティメンバーのいる場所が点で表示されるようになる。

 マップを見ていると、すぐに冒険者ギルドから商業ギルドへと移動してくる点を確認することができた。

 その方向を見ているとフード付きのローブを羽織り杖を持った見慣れた顔の見慣れない姿の少年が近づいてきた。顔はあまり手を入れていないが、いつもは短髪な晴樹がストレートロングの金髪エルフになっていたので、見慣れるまでは少々時間がかかりそうだ。

「無事合流できてよかったよ」

 パーティチャットに切り替えてしゃべると、チャットログには『ヒロ:無事合流できてよかったよ』と表示された。これを見れば聞き逃した言葉も確認出来て助かる。

「合流早々悪いんだけど、ちょっとこっちへ来てくれる?」

 広樹は噴水のところにあるワープポータルへと晴樹を案内した。

「この石なんだけど、石が光っているのがわかる?」

「お? なんだこれ? ヒロに言われて初めて光ってるのがわかったんだけど」

「これ、ファーストの町のワープポータルらしいんだよね」

「あー? チュートリアルでそんなこと教わらなかったぞー? どこ情報だよ、それ」

「さっき門番のトラヴィスさんに教わったんだよ。やっぱり石のことを誰かに教わるまでは光っていることに気づかない感じかなー?」

「まだ始まったばかりだからなー、何かきっかけになるクエストをクリアするか何かすれば自然と解放される可能性もあるんじゃねぇ?」

「ああ、それはあるかも。じゃあとりあえずは登録だけしてればいいかな?」

「で、その登録ってどうやるんだ?」

「石に手を触れるだけでいいみたいだよ」

 晴樹が教わった通りに石の上に手を置く。すると晴樹の頭の中に『ファーストの町のワープポータルを登録しました』というシステムアナウンスが流れた。

「よしよし。俺も登録完了だ」

 冒険者ギルドで登録は済んだし、チュートリアルも受けた。フレンド(フレ)との合流を果たし、ワープポータルも解放したということで、次は何をするかという話になる。

「俺は魔法を使いたいから最初に魔法屋に行きたいんだけど」

「僕も一応使えるようにしておきたいから、とりあえず魔法屋に行って、いくらくらいで売っているのか確認してから今後のことを考えようか」

 二人揃って魔法屋に向かいながら、広樹は先ほどあったリーシャとトラヴィスとの状況を説明した。

「それって臨時クエストじゃないか? 突発クエストとか、呼び名はいろいろだろうけど。クエスト一覧見てみろよ。載っていないか?」

 晴樹に言われてようやくそのことに思いいたった広樹は、早速メニューを開いてみる。

 クエストの項目を探して見てみると、確かに『突発クエスト』の欄に『困っているリーシャを助けよう:クリア』となっていた。

「やっぱりそうか。で、報酬は何だったんだ?」

「忘れてた。そういえばリーシャが作った試作品のポーションを貰ったんだった」

 広樹はさっそく取り出して鑑定してみる。『鑑定』はプレイヤーが最初から持っているスキルだ。

「え……」

 小瓶を見つめたまま固まってしまった広樹の顔を覗き込むようにして見た晴樹は、「どうした?」と言いながら、自身もその小瓶を鑑定する。

「うわぁ……、HP全回復ポーションか……。成功率50%とはいえ、失敗してもHP50%回復だし、こんなリリース直後に手にするようなアイテムじゃないよなー」

「こんなの貰ってよかったのかな?」

「正当なクエスト報酬なんだから問題ないだろう。使う機会はまだまだ先だし、インベントリに入れておけばいいんじゃないか?」

「もったいなくて今はまだ使えないよね」

 ようやく肩の力を抜いた広樹は、小瓶をインベントリに片づけて歩みを再開する。

「でもさー、そんなアイテムがもらえるんなら、このゲームの突発クエストっておいしいのかもね。困っているNPC(住人)見つけたら、俺も積極的に声かけていくわ」

 そんな話をしながら歩いているとようやく魔法屋らしき店が見つかった。

 扉は閉まっていたが、晴樹が気軽に開けていく。

「こんにちはー、ここ魔法屋であってますかー?」

「あっているよ、見慣れない坊やたち」

 答えたのは、小さな店の奥にあるカウンターに座っている女性だった。こういう女性のことを妖艶なというのだろう。キセルを持って、広樹と晴樹へとよこす流し目は何とも言えない妖しさがあった。


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