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45. 新装備

 噂をすればというわけではないのだろうが、広樹たちがゴブリン狩りをしているところでDresser(ドレッサー)から装備が完成したと連絡が入った。

 今日はそろそろ引き上げようとログアウト場所を探していた二人だったので、ようやく見つけた白い花畑に立っている1本の樹のそばにマップピンを刺してからクランハウスへと飛んだ。

『ヒロ:ドレッサーさんお待たせしました』

 クランチャットで声をかけてから生産部屋の扉をノックすると、すぐにDresser(ドレッサー)から返事があった。

Dresser(ドレッサー):おぅ、入ってくれ』

「お邪魔しまーす」

 中に入ると、ちょうど正面に2体のトルソーがおいてあり、2着の衣装が着せられていた。

 アニメ『ヘルダン』に出てくるいずれかのキャラの衣装になるのではないかという予想は半分くらいは当たっていた。

「本当は狩衣と水干をそのまま着せたかったんだけどなー」

 そういうDresser(ドレッサー)の言葉通り、そのままであれば『ハルヒロ』の仲間である双子『ナギ』と『レン』の衣装になる。

 ただここにあるのはまったく別もののように見えた。

 元は狩衣なのだろうが、ひとえの代わりにシャツを着、指貫さしぬきの代わりにパンツをはき、宛帯あておびの代わりに革ベルトを巻くといった感じにかなり手をくわえられている。もう狩衣というより西洋ファンタジー感マシマシのマントかローブみたいになっていた。生地も無地ではなく、かなり柄が入っている。杖持ちの晴樹が着ると、いかにもといった感じになるだろう。

「僕もこれを着るの?」

 色や柄は変えているがほぼ同じデザインの2着の衣装。

 杖を使う晴樹はいいだろうが、広樹は片手剣使いだ。

「おう。ヒロは剣を使うからな。一応袖は邪魔にならないように控えめにしてるぞ。とりあえず試着してみてくれ。問題があれば直すぞ」

 広樹のほうはどちらかというと和風な柄だった。なおさら片手剣には合わないのではないだろうか。

 そう思いながら試しに装備してみる。

 片手剣を抜いて振ってみると、見かけほど邪魔にはならなかった。これならすぐに慣れるだろう。

「大丈夫みたいです」

「そりゃよかった。んでだな、ヒロにはこれをやるわ」

 それは刀だった。

「え? 僕は刀は使えませんよ?」

「心配するな。これは見た目を変えるだけのアイテムだ。剣でも槍でも槌でも、一応近接武器であればどれでも刀に見えるはずだ」

「へえー、このゲームでも実装されてたんですね」

「まあ課金アイテムだけどな」

「え?」

 素直に使おうといていた広樹はぴたりと動きを止めた。

「いえいえ、そんな課金アイテムなんて貰えないです」

「気にすんな。生産者としての俺のわがままなんだからよ」

「えー……、いや、でも……」

「だったらそうだな……。またなにかドロップ品を分けてもらうってのはどうだ? 次の町周辺で装備に使えそうなアイテムがドロップしたらそれを優先的に売ってくれ」

 それでも悩む広樹を見かねて、晴樹が口を挟んだ。

「ヒロ、貰っておけよ。どうせもう返品はきかないんだからさ」

「……それもそうだね」

 晴樹の一言に納得した広樹は、Dresser(ドレッサー)にお礼を言って、ありがたく受け取ることにした。

 広樹が刀を使用すると、片手剣の見た目が刀へと変わる。

 Dresser(ドレッサー)はそれを見て満足そうにうなずいた。

 それはそうとして。

「そういえば今まで着ていた防具はどうしよう? 買い換えたばかりなんだよね」

「そうだよなー。せっかくアルバンさんが作ってくれたのにな。住人とはいえちょっと悪いことしたって気になるわ」

「まあおかげでネクタウダンジョンを無事にクリアできたけど、けっきょくネクタウダンジョンでしか使わなかったことになるよねー」

 Dresser(ドレッサー)が軽く首をかしげながら会話に加わる。

「素材はなんだ? 最近ってことはプレインウルフか?」

「はいそうです」

「だったら販売システムに中古品で出したらどうだ? 出品するときに『中古』にチェック入れるだけだから簡単だぞ」

「え? そんな機能ありました?」

「あったぞ。まあ最初から実装されていたかどうかまでは知らんが、何度か利用したこともあるぞ」

「ドレッサーさんが実際に使っていたんなら間違いないですね」

「おぅ。だいじなのは今その機能が使えるかどうかだからな」

「ですね」

「ちなみにドレッサーさんだといくらで出品します? これ毛皮持ち込みで、製作費も持ち込んだ毛皮で払ってるから売値ってよくわからないんですよね」

「プレインウルフ製なら欲しがるやつは山ほどいると思うぞ。中古ってことを考えても12000Gくらいはいけるんじゃないか?」

「それじゃ試しにそれで出してみます」

「俺も同じ金額で出してみるわ」

 売れ残れば金額を下げて再出品すればいいだろうと広樹たちは気軽に考えて販売システムに登録する。すると売れ残るどころか、あっという間に売れていった。

「あれ? もう売れたんだけど……」

「登録して数分で売れるとか、まじか……」

「売れただろう? 大半のプレイヤーはまだネクストタウンにいるからなー。需要はあると思ったぜ」

 王都ラッヘルにたどり着いているのはトップランカーの数人程度。その他ランカーでドリッテで活動中といった感じだ。

 ライト勢はネクタウダンジョンすらクリアできていない者も多い状況らしい。

「へえ、そんな感じなんだ。んじゃ俺らもそろそろドリッテ目指すかな?」

「そうだね。でもドリッテ着いた後にいったん戻ってきて、ちょっと北のオーガ狩りを試してみたいかな」

「そういやーオーガがいるって言ってたな。やっぱ定番は抑えておくか」

「うん。それでいこうよ」

「ほおー、オーガか、いいな。ドロップをちょっと分けてもらえるか?」

「いいですよ」

「なにが落ちるかなー。楽しみだな」

 角、骨、牙、爪あたりが落ちることは住人との会話でわかっているが、他にもなにか落ちるかもしれない。

 エリアボスのホブゴブリンが倒せたなら、オーガもきっと倒せるはず。

 広樹たちはそう考えて予定を立てた。

「それじゃあドレッサーさんまた。僕たち今日はこれで落ちますね」

「おぅまたな」

「装備、ありがとうございました」

 明日のボス戦を楽しみにしながら、広樹と晴樹はログアウトしていった。


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