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31. 肉狩り

 ようやく肉狩りだ。いや、オーク狩りだ。

 何度も脱線してしまったが、広樹と晴樹はいつも通り薬草の採取を済ませると、肉を集めるためにオークの元へと向かった。

「連携の練習もしないとね」

「そうだな。称号のおかげで勝手に攻撃力が増加されてしまうけど、最初は新しい魔法の検証も含めて抑えめに試していくか」

「魔法の検証はだいじだね」

 新しい魔法はほとんどが回復系の魔法だが、晴樹はシャドーボールを覚えており、またシャドー系の上位の魔法を解放させるために積極的に使っていく必要がある。

 防御系の魔法もサンダーシールドを覚えたので、使うタイミングの練習も必要だ。

 晴樹はまずは一番近くにいるオークへと狙いを定めてシャドーボールを放った。

「シャドーボール!」

 ボール状の暗い影のようなものが3つ、やや扇状に広がりながら飛んでいく。

 精霊スライムにはこちらがタゲった瞬間から魔物のHPバーを表示する設定にしているので、この攻撃によってどの程度削ることができるのか把握できる。もっとも数値は表示されないため、ざっくりとした割合しか判断できないが、それで十分だ。

 左に飛んでいった一つは外れたが、右2つは無事オークに当たった。これでおよそ20%ほど削れたので、本来であれば1玉5%といったところか。

「思った以上に削れたね」

「だな。まだレベルが低いからもっと弱いかと思ってたんだけど、少なくともここのオークには使えそうだな。ラッキー」

「アイスニードルとアイススピアはどんな感じ?」

 攻撃されたことでアクティブになったオークが晴樹へ向かって走ってくる。

「アイスニードル」

 晴樹は冷静に攻撃を撃つ。

 こちらは慣れたもので、しっかりとオークの顔面にヒットして怯ませることができた。

「これも20%くらいかな」

「じゃあこれで最後かな? アイススピア!」

「残念。まだ20%くらい残ってるよ」

 ここで広樹がオークに向かい、スラッシュで切り込んだ。

「あーアイススピアで40%くらいだったか。クリティカルが出てたらいけたかもなー」

「よし!」

 無事オークのHPを削り切り、倒すことができた。広樹は嬉しそうに軽くこぶしを握る。

 ドロップのオーク肉も無事ゲットだ。

「まあなんとかなりそうだね。どんどん行こうか」

「次はヒロの魔法だな。アイススピアとアーススピアとライトニングストライクを順に撃ってみようぜ」

「わかった」

 結果。アイススピアとアーススピアでそれぞれ25%程度。ライトニングストライクで30%程度だった。最後はまたスラッシュで締めだ。だからスラッシュは20%以上出ているのはたしかだろう。

「やっぱり本職に比べると魔法の威力が落ちるね」

「杖ってやっぱだいじなんだなー」

 晴樹が笑いながらも実感を込めて言う。

「この剣も魔法の威力を上げる効果がついてるらしいけど、それでもこれだけ差が出るんだから、それぞれの職の適正に合わせた武器ってだいじなんだね」

「あとまだ使ってないのはサンダーシールドか?」

「たぶん」

「オークが持ってるあのモーニングスターの打撃にどれだけ耐えられるか……」

「あれをまともに受けるのは無理だからね」

「わかってるって。でもまあ威力が衰退すれば避けやすくはなるんじゃないか?」

「避ける前に挟んでいく感じかな。まあいろいろ試してみようよ」

「おーし、それじゃあまたシャドーボールからいくぞー」

「なるべく広げないようにね」

「おぅ! イメージしてみるわ」

 何度か試していくうちに、晴樹もコツをつかんだのか、シャドーボールの広がりを抑えることができるようになり、オークへ3玉すべてを当てることができるようになった。これにより最初に30%削ることができるので、ますます戦いやすくなっていった。

 晴樹のシャドーボールで釣り、広樹の魔法を挟んで、また晴樹のシャドーボールを当てる。残ったHPは広樹のスラッシュで削り切る。シャドーボールをたくさん使ってレベルを上げることも目標のため、どんどん使い込んでいく。


 そんな二人のもとに、またもやどこからか助けを求める声が聞こえてきた。

 笑い声とともに「助けてー」という男性の声がだんだん大きくなってくる。

 こちらがその人物を認識したとほぼ同時に相手も気づいたようだ。

 広樹のところへその相手からメッセージが届いた。

Jude(ジュード):ヘイ、ブラザー! 助けてー!』

 そのメッセージを見た広樹は、「助けてだってさ」と晴樹に伝える。

 すぐに同じものが晴樹にも届いた。

「俺のところにも来たわ」

「どうする?」

「まあこれもMMOかな? せっかくの出会いだし、パーティに誘ってやろうぜ」

「わかった」

 すぐに広樹がパーティへの招待を飛ばした。

「ありがとう、ブラザー!」

 同じパーティに入ったことでJude(ジュード)のHPが見えるようになったので、晴樹がすぐにヒールをかけてあげた。

 追ってきていたオークたちはモンスタートレインというほど多くもなく、3体ほど。

 Jude(ジュード)に向かって振り下ろそうとしていた先頭のオークのモーニングスターには広樹がサンダーシールドを当てて一瞬動きを止め、その腕をスラッシュで切りつける。

 腕を振り上げることによって開いた胴体には晴樹がアイススピアを撃ち込んだ。ここでクリティカルが発生し、もともと多少削れていたHPは全損して光の粒子へと姿を変える。

 残りの2体には晴樹がシャドーボールを当て、広樹が奥のオークをアーススピアで足を止める。

「ライトニングストライク!」

 そのすきに広樹は手前のオークにライトニングストライクをお見舞いし、晴樹がアイスニードルとアイススピアでとどめを刺す。

「スラッシュ!」

「ダークスラッシュ!」

 最後の1体は、広樹のクリティカルが出たスラッシュと、ようやく戦闘に復帰したJude(ジュード)が放ったスキル――ダークスラッシュで倒すことができた。

「こんにちはブラザー! 助かったよ、ありがとう」

「どういたしまして」

「3体まとめてはちょっときつかったけど、なんとか倒せてよかったよ」

 陽気に手を振るJude(ジュード)に、広樹も晴樹もちょっと苦笑い。

 Jude(ジュード)の外見がとても見覚えのある姿だったからだ。

「ジュードさんはどこの国の人ですか?」

「私はフィリピン人です」

 やっぱりと二人は思った。

「日本のアニメは好きですか?」

「はい、私は日本のアニメが好きです」

「その姿は『ヘルダン』の『ハルヒロ』ですよね?」

 Jude(ジュード)は日本のアニメ『ヘルダン』に出てくるキャラクター『ハルヒロ』にそっくりだった。真っ黒の燕尾服にトップハット。丁寧に撫でつけられた髪は深紅。本来ならばステッキを持ち、戦闘になればそのステッキに魔法の刃を光らせて大鎌に変え、敵をさくさく狩っていく姿にファンも多いキャラだ。

 さすがに武器までは真似できなかったようで、Jude(ジュード)はバトルアックスを持っていた。

「そう! あなたたちの名前と同じです。私はとてもうれしい!」

「ははは、僕たちの名前はそのアニメとは関係ないですけどね」

「よくそこまでそっくりに作りこめましたねー」

「私は頑張りました。ところでブラザー、私の任務を手伝ってもらえませんか?」

 突然の申し出に、広樹たちはちょっと考えた。

「うーん、どんな任務ですか? 僕たちはここでオークを狩って肉を集めている最中なんですけど……」

「私も同じです。オーク肉を30個集める任務です」

「まあそれくらいなら一緒に集めてもいいですよ」

「ありがとう! ありがとうブラザー! 助かります」


 Jude(ジュード)は攻撃力も防御力も弱かった。

 まだオーク狩りができるレベルには届いていないと思われる。

 だが、こうして無理をするのもそれぞれのプレイスタイルなので、広樹たちはなにも言う気はない。

 ずっと手伝うことはしないし、パワーレベリングを要求されれば当然断るつもりだ。

 オークを一緒に狩って肉を集める。

 その同じ目的の範囲内で少し手助けするくらいは時間を割いてもいい。そのくらいの認識で軽く流した。

「終わりましたブラザー。ありがとうございます。今度は私がお二人を手伝います」

 Jude(ジュード)はそう言ってくれたが、晴樹はそれを断った。

「俺たちは二人でだいじょうぶだよ。ジュードさんは任務の報告があるんだろう? 先に町に帰っていいぞ」

「そうそう。僕たちは特にいくつ集めるって決まっているわけじゃないから、適当なところで引き上げるし、手伝いは必要ないよ」

「そう? わかったブラザー。それじゃ私は先に町へ行きます。ありがとう!」

 Jude(ジュード)はパーティを抜けると、走って町へと帰っていった。

「あれ? ジュードさんってワープ覚えてないのかな?」

「もしかしたらワープポータルも未解放かもね」

「十分あり得そう。なんというか、生産職の仲間と頑張って衣装だけは作りましたって感じだったね」

「そのうち武器までそっくりなものを作り出しているかもな」

「はは、それはいいね。今度会う時が楽しみかも」

 そうしてまた二人だけの狩りへと戻っていった。


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