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夏休みはゲーム三昧  作者: 竪川杼緯


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30. 毒消し

「よっしゃー! 倒したぜー」

 活躍した晴樹が杖を持った右手を高く上げる。

 そして相変わらずの称号が二人に贈られた。


 称号:オークの天敵

 効果:オーク系への攻撃力2倍


 変異種を倒せば、称号がもらえる。

 もうそういうものだと思うことにした。

 実際攻撃力が増すのはとても助かるから文句はない。

 それよりもと、二人は座り込んでしまったリータへ駆け寄り、ヒールをかける。広樹と晴樹がそれぞれ1回ずつヒールを使えば、リータのHPは全回復し、彼女はほっとしたように肩の力を抜いた。

「ヒロさんハルさん助けてくださってありがとうございました」

 リータは立ち上がると丁寧に頭を下げた。

「HPは回復できたみたいだけど、他は大丈夫?」

 HPはあくまでもヒットポイントであって、どれだけの攻撃に耐えられるかのポイントでしかない。

 もちろんHPが0になれば戦闘不能――つまり死亡扱いとなる。

 だか、だからといってHPがフルにあれば元気いっぱいというわけでもない。

 精神的なものや魔力的なものは加味されていないからだ。

「はい、おかげさまで毒消しを飲む時間もいただきましたので……あっ、あの! ヒロさんは大丈夫なんですか!?」

「え?」

 問われた広樹は意味がわからなくてきょとんとした。

 先に気づいたのは晴樹だった。

「おい、ヒロ、おまえ毒ってるぞ!?」

「え? まじ!? どこでもらったんだろう?」

「たぶん先ほどのオークの斧に毒が付与されていたんだと思います。私もその毒でいくらかHPを削られましたので」

「そうだったんだ。あ、でも僕毒消し持ってない。どうしようか……」

「すみません、私も先ほど自分で飲んだものしか持ってなくて……」

 リータが申し訳なさそうにするが、晴樹が軽く手を振って気にしないように伝える。

「そういえばキュア覚えてなかったわ。いったん町に帰るか? ポーション屋に行けば毒消しも売ってるんじゃないか?」

 じわりじわりと広樹のHPを削ってはいるが、減りがわずかなため、まだ慌てるほどではないが、変異種のオークを倒したにもかかわらずいまだに効果が途切れないということは、毒消しを飲むか、キュアをかけるかしないと治らない可能性が高い。

「そうだね。いったん戻ろうか。それでついでに魔法屋にもよってキュアとリジェネも買ってこようか」

「リータさんも一緒に町に帰ります?」

「はい。ぜひご一緒させてください。私は武器がこの状態ですので、どちらにしろ戻らないといけませんので」

 リータが持っている短剣は折れてしまっているので、代わりの武器を手に入れないと戦うことができない。

「じゃあこのまま転移するか。忘れ物はないな?」

 広樹もリータもうなずいたことを確認した晴樹は、転移を発動して町へと移動した。

「ワープ、ネクストタウン」


 町へ戻ると、リータは自身が勤めるポーション屋に行って毒消しを買ってくるから、二人には先に魔法屋へ向かうように勧めた。

「助けていただいたんですから、せめてこれくらい出させてください」

 そういわれて広樹は素直に受けることにした。

 広樹と晴樹が魔法屋に到着する前に、リータは毒消しの購入を済ませて走って追いかけてきた。

「ヒロさん、こちらをどうぞ」

「リータさんありがとうございます」

 広樹はリータに渡された毒消しを飲んで、ようやくHPの減少を止めることができた。

「倒して終わりじゃないのが厄介だよなー」

 その様子を見た晴樹がしみじみと言う。

「そうだね。でもガンガン削るタイプでなくてよかったよ」

「まあ、これからそういう強力な毒を使う魔物も出てくるから、今のうちに準備しておけってことなんだろうな」

 話しながら歩いているうちにリータお勧めの魔法屋へたどり着いた。

 大通りにはもっと商業ギルドに近い場所に魔法屋があるのだが、あえてこちらの1本奥へ入った小さ目なところへ二人は案内された。

 店舗は小さくとも二人に必要なものは揃っているうえに、少しだけこちらのほうが安く買える。いわゆる住人向けの店舗だった。

「ここは友人のハンネが勤めている店なの」

 今回は案内役のリータが扉を開ける。

 ちょうどハンネが店番をしているところだった。

「あらリータ、お客様を連れてきてくれたの?」

「ええ、そうよ。こちらヒロさんとハルさん。危ないところを助けていただいたの」

「まあ! それはほんとうにありがとうございます!」

 ハンネは驚きの表情を浮かべると、はっとしたように広樹たちに向かって頭を下げた。後ろで一つにまとめられた三つ編みがぴょんと跳ねる。

 広樹は気にしないように告げ、晴樹はさっそく魔法の購入へと話を切り替えた。

「俺が欲しいのは、結晶化、キュア、リジェネ、リフレッシュ、シャドーボールあたりかな」

「僕もほぼ同じで、結晶化、キュア、リジェネ、リフレッシュです。手持ちがあまりないので、金額によっては何度かに分けて購入することになるかな」

「俺も同じなんで、まずは金額を知りたいかな? あ、一応俺もヒロもファーストの町で全属性解放済み――そういえば11属性で全部かな? こっちの町だとさらに増えたりしてない?」

「属性はそれで全部ですね。――お二人とも全属性をお持ちでしたら、それぞれ1000Gずつでいいですよ。あ、攻撃魔法のシャドーボールだけ2000Gでした」

 晴樹が6000Gで、広樹が4000Gということだ。

「それならなんとか払えそうです」

「俺も」

 ということで二人ともシステムから支払いと購入を済ませて、それぞれ魔法スキルを覚えていった。

「他に覚えていたほうがいい魔法とかありますか?」

 忘れているものが他になかったかと広樹は尋ねてみた。

「あ、そういえば。中級錬成陣ってこちらで買えますか?」

 晴樹が、二人揃って忘れていたことを思い出した。たしか魔法屋だったはずだ。

「はい、ありますよ。ハルさんだけでいいですか?」

「そういえばそれもあったね。僕も買います。よろしくお願いします」

「では一人15000Gですね」

 ようやく中級錬成陣を手に入れた二人。とはいえもう転移を覚えた二人は優先順位は下がっている。まあ金策くらいにはなるだろう。材料さえ手に入れることができれば。

「そうだ。防御系でなにかお勧めはありますか?」

 近接の広樹はいざというときのガード系があればと思いついた。

「動物系の魔物にお勧めなのがサンダーシールドですね。受けた攻撃を弱めると同時に微量ですがダメージを与えることができます」

「じゃあ、それで」

「あ、俺もください。これ離れた場所へも使えますよね? 自分への防御じゃなくて、遠距離の俺が近接のヒロへの防御に使う感じなんだけど」

「はい、そのくらいの距離でしたらお使いいただけます」

 それならと広樹と晴樹は揃ってサンダーシールドを1000Gで購入した。


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