25. シークレットクエスト、そして
クエスト種類:シークレットクエスト
・精霊スライムを装備する 1/1個
・精霊スライムに名前を付ける 1/1回
内容:装備した精霊スライムに名前を付けて親密度を高めよう。
依頼主:精霊王
報酬:攻撃速度上昇効果の付いたイヤリング1組
メインクエストの開放
広樹が合流した晴樹に確認すると、同じクエストが達成となっていた。
「ハルも名前つけたんだ」
「だって呼びづらいだろう? 毎回精霊スライムって呼ぶのはさー。だからセイって名付けたんだよ」
「僕は声がかわいかったからニートリヒにしたんだ」
「それも呼びにくくないか?」
「かわいいからいいんだよ。それに他のプレイヤーに聞かれたとしてもなんのことかわからないだろうし、ね」
広樹は少々悪だくみをしてます風にふふーんと笑んだ。
「ははっ、なんだよ、それ。ヒロには似合わない役柄だな」
「えー? そうかなー? まあいいや。それよりこちらエルゼさん。プレインウルフの牙と爪を買い取ってくれるんだって」
晴樹は近くに立っていたエルゼに向かって軽く頭を下げて挨拶をした。
「初めまして、ヒロの友人のハルです。いつも一緒にパーティを組んでいます。俺のも買い取ってもらえるんでしょうか?」
「初めまして、エルゼです。ええ、はい。ヒロさんにも言いましたが、今なら買取制限なしでいいですよ」
ということで、晴樹にも無事納品クエストが発生した。
クエスト種類:納品クエスト
・プレインウルフの牙と爪
内容:ネクストタウンの西側にいるプレインウルフを狩って爪と牙を集める。数は問わない。
依頼主&納品先:武器屋 鍛冶師見習い エルゼ
報酬:100G/1個
広樹と晴樹の二人は、エルゼにお礼を言って武器屋を出た。
しばらく行ったところで、広樹は「ところでさ」と切り出す。
「クエストの確認してたら、見つけちゃったんだけどさー」
「ああ、あれな。俺も見たわ」
二人は揃ってため息を落とした。
シークレットクエストの報酬の最後に書かれていた『メインクエストの開放』の文字。
そして。
クエストの種類:メインクエスト:旅立ち
・巨大スライムソロ討伐 1/1回
・精霊スライム獲得 1/1体
内容:ファーストの町の西門を抜けた先の森の中にいるエリアボス――巨大スライムをソロで討伐して精霊スライムを獲得すること。パーティでの討伐はカウントしない。
報酬:素早さ上昇効果の付いた指輪1個
クエスト種類:メインクエスト:防具を揃えよう
・プレインウルフの毛皮 0/30個
・防具 0/1個
内容:ネクストタウンの西門を抜けた先にいるプレインウルフを狩って毛皮を集めて防具を揃えよう。職にあった防具を1個以上、ドロップ品の毛皮で防具屋に依頼して製作してもらうこと。
報酬:回避上昇効果の付いた指輪1個
「まさかメインクエストがあったとはな……」
「VRだとみんな好き勝手するし、今まで出てこなかったから無いものだと思ってたよ」
「俺も」
「つまり、ここまでがチュートリアルだったってことかな?」
「メインクエってそもそも次のエリアへ進ませるためのものだからなー。プレイヤーが勝手に進んでいけるゲームの場合って、まじめにやるやついないかも? 運営も『どうせクエスト無視して勝手にするでしょう?』って思っていそうだもんなー。まあ報酬がいいから、あればうれしいけどさ」
「たしかに報酬はおいしいよね。あ、さっきのイヤリングと一緒にこの指輪も装備しないと」
「おーそうだった」
どのみちプレインウルフを狩って防具を揃えることは今からやるつもりだったから、広樹たちはもうメインクエストのことは考えないことにした。
それによくよくクエストを見返してみると、思っているメインクエストとは違うようだった。メインクエストとはストーリークエストのことだと思っていたが、ワイスシュトラーゼでは他のゲームのようなストーリー紹介はそもそもなかった。ただこういう世界だということを知らせる映像が公式サイトで流されていただけで、リリース後の現在も世界設定のようなストーリー性のあるものは一切公開されていない。運営も最初からプレイヤーの好きにさせるためにストーリークエストは用意していない可能性が高かった。
メインクエストはあくまでも最低限クリアしていたほうがゲームを進めるにあたって有利になるという運営からのお助けクエストでしかないのかもしれない。
そういうことであればメインクエストが発生した時だけやればいいだろうという結論になった。わざわざ探すようなものでもないだろう。少なくとも先へと進める間は。
「あとは……中級錬成陣を買うだけかな? 他に忘れていることはなかったよね?」
「そうだな。えっと15000Gだったよな? まだまだ全然足りないわ」
「あ、僕、片手剣の取り置きしてて追加で15000Gを貯めないといけなくなった」
「相変わらず俺ら金欠だな」
「ほんとだよ。頑張って狩ろうねー」
「ポーションや魔力ポーションも作ってまた販売システムへ出しておこうぜ」
「あ、それもいいね」
広樹と晴樹は西門手前にある広場のベンチに座ってポーションと魔力ポーションを作成した。ポーションをいつものように165Gで100個、魔力ポーションを220Gで50個出品して、ようやくプレインウルフを狩るために西門を出ていった。
まだ忘れていたものがあったことを思い出すまであと少し。




