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夏休みはゲーム三昧  作者: 竪川杼緯


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16. マップにマーキング

「そろそろ本格的に金策しないといけないねー」

「確かになー」

「やっぱ、スライムの乱獲かなー? 僕たちと相性もいいし」

「そうするか。スライムゼリーと魔石を集めて販売システムで売りまくろうぜ」

「値崩れしない程度にね」

「それはそうだな。残ったものはポーションにでもして、さらに売りさばこう!」

「それにしても……、町へ戻るのはワープで簡単だけど、狩場に行くのが大変なのがなんとかなってほしいよねー」

「ああ、そうだなー。マーキングとかできて、そこへワープでひとっ飛びとかできたらいいのになー」

「できますよ?」

 東門へ向かって歩いていた広樹と晴樹の会話に突然の闖入者あり。

「え?」

 二人はびっくりして立ち止まり、声の主へと顔を向けた。

 そこにいたのは雑貨屋の露店の店番をしている売り子の少女だった。

 ポニーテールに結んだ栗色の髪が、傾げた小首につられて揺れる。

「あ、申し訳ありません、つい会話に入ってしまって……」

「いや、そんなことより、今言ったことは本当か?」

「あ、はい。マーキングした地点へのワープですよね? アイテムを使ったらできますよ」

 そういって売り子が手の平で示した先には、5cmほどの長さのピンそのものの形をしたアイテムと、鳥の羽のような形をしたアイテムがおいてあった。

「まず登録したい場所の地面にこのピンを刺します。そしてこの羽を使ってそこへワープするんです」

 にこにこ笑顔で説明してくれる少女には申し訳ないのだが、広樹と晴樹は物理のピンが出てきて唖然としていた。

「マップにピンを立てるんじゃないんだ……」

 広樹がぽつりとつぶやくと、少女は「ああ!」といって両手を合わせた。

「魔法のほうでしたか。お客様は時空魔法をお持ちでしょうか?」

「僕も彼も一応持っています。でもスキルはまだ何も無いです」

「そうですか。それならこちらのスキル『マップピン』と『転移』の二つを覚えて使えば、アイテムを使わなくても同じ効果が得られますよ。いかがですか?」

「え? あの、その『転移』というスキルを使えば、もしかしてワープスクロールを使わなくてもワープポータルへワープできたりもしますか?」

「はい、もちろんです!」

 目を丸くしながら思わず広樹が晴樹を見上げると、晴樹も同じような顔をして広樹を見下ろしていた。

「ちなみにそのスキルはいくらだ?」

 勢いあまって晴樹が尋ねる。そうなんだ。問題は金額だ。

「ただいま異邦人様へのキャンペーン期間中でして! 今ならなんと! 一つ3500Gです! とってもお買い得ですよ!」

「足りねぇ……」

「あーっと、じゃあそっちのアイテムのほうはいくらですか?」

「ピンが一つ1000Gで、羽が一つ300Gです!」

「これはパーティでも使えますか?」

「はい、アイテムも魔法もどちらもパーティで使えますよ」

 二人はしばらく考え込んだが、今後のことを考えて、やはり魔法のほうを選ぶことにした。

 とはいえ金欠。悲しい金欠。

「僕たち今手持ちがなくて、これから金策のために狩りに行くところなんです。それで、お金が貯まるまでそのスキルを二人分キープしてもらうことはできますか?」

「そうですね……。ちなみにお二人は魔力ポーションは作れますか?」

「はい、アデーレさんのところで覚えました」

「では、その魔力ポーションを一人35個ずつ納品と引き換えという形ではどうでしょう?」

「それでいいなら、俺たちも助かる」

「ではそういうことで」

 少女がそういうと視界の端にいつものクエストウィンドウが表示された。


 クエスト種類:納品クエスト

 ・魔力ポーション 0/35個

 内容:魔力ポーションを自作して納品すること。

 依頼主&納品先:雑貨屋(露店) 売り子 ベティーナ

 報酬:スキル『マップピン』と『転移』


 広樹と晴樹は大急ぎでスライム狩りと薬草採取に向かった。

 まだ当分はスライムのお世話になりそうな二人だった。


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