かげぐちの騎士
今日の午前中もまた基礎訓練だった。
井戸ばたで、あたしとピオニーさんが汗拭いてたら、朝に剣士グループを率いていった騎士さんがふたり、休憩しに戻ってきた。
「ベゴニア、騎士団に紛れ込んだ似非女騎士には、役立たずのお守りが適役だな」
「シャトルーズ、剣技選抜で入団した以外の騎士はニセモノよ」
誰に聞かせるともなく言いながら、ふたりの騎士は意味ありげにあたしたちの方をみる。
何よこいつら、偉そうにしてる癖に学校のいじめっ子たちとやってること変わらないじゃない。
能力別のグループで訓練を始めても、ピオニーさんがずっとあたしにつきっきりなのは、騎士団の中でのいじめみたいなのがあるんだろ、とは思ってた。
陰口きかれるのも聞こえなかったフリするのもあたしは慣れてるけど、ピオニーさんの悪口を聞いて反射的に言葉が出た。
「あんたたち、ピオニーさんの悪口を言ってるの? なにか言いたいことがあるなら面と向かって堂々と言ったらどう?
それともアラザールの騎士は陰口しか言えない卑怯者なの?」
そうしたら、シャトルーズと呼ばれてた騎士が気色ばんだ。
「なんだとぉ、公国騎士を卑怯者呼ばわりとは聞き捨てならねえ。こっちへ来い、礼儀を教えてやる」