デルフト宰相
日本語じゃないけど、なに言ってるかはわかる。まぁ、お約束だよね。言葉通じなくて、じすいずあぺん、から始めてたら、話なかなか進まないもん。
「わしは、アラザール公国宰相のデルフトである。
異世界から召喚された諸君らのようなものには、特別な魔法や技の能力がやどる。
その特別な力を発揮して危機的状況から我が国を諸君らが救うのだ、あとで褒美はとらせよう」
異世界から召喚、って何さ、そっちが異世界の住人じゃん。
偉そうに、諸君ら諸君ら、勝手なこと言ってる、て思ったのはあたしだけじゃなかった。
「危機的状況? そんなの、俺達の知ったことじゃねーよ」
「今日は終業式が終わったらすぐ出ねーと、推しのコンサートに間に合わねーんだよ。チケットとるの大変だったんだぞ。早く帰らしてくれよ」
「そんな一方的に上から言うの、人にモノを頼む態度じゃねーだろ」
みんな口々に文句言い始める。当たり前だ。
誰かがリュックにいれてたスポドリのペットボトル投げて、宰相の頭に、ぽこん、て音を立てて当たる。
意地悪してフタを緩めてから投げたみたい。
スポドリが頭から垂れてきて目に入った。大声あげて怒鳴るか、て思ってたら宰相は涙目になって黙ってしまう。