模擬戦の結末
「シャトルーズ騎士、ベゴニア騎士、綾川が無礼を働いた。わたしの監督下の転移者のしたこと、ここまでで許してやってくれ」
木剣を叩き落とされてじんじんしてたあたしの手にはもう感覚戻ってきてるけど、直接右手首を思いっきり打たれたシャトルーズ騎士はまだ当分回復しないだろう。
あたしのこと睨みつけると、ふくれっ面して黙ったまま、ふたりの騎士は裏庭から去っていった。
「ピオニーさん、謝ることないじゃないですか。なんで止めたんです? あたしの圧勝でしたよね」
「馬鹿者!!」
ピオニーさんがこんなに怒ってんの、初めて見た。
「わたしが止めなかったら、おまえの鳩尾への突きで、シャトルーズは起き上がれなくなって医務室に運ばれることになっただろう」
「だって、あの人が最初にピオニーさんの陰口を言って、因縁つけて来たんですよ」
「綾川、お前、読心魔法を使ってただろう。
お前があんなに上手くシャトルーズの動きに先回りできたのはそのせいだ。
お前が習いもせずに紫魔法を使えることが一般に知られたら、困ったことになる。
あのまま続けていたらシャトルーズも、自分がボロ負けしたのはお前に考えを先読みされたからだと気づいたかもしれん。
あそこでやめておけば、仮に疑っていたとしても、あいつが言いふらすことはないだろう。
自分が『役立たず』と馬鹿にしていたお前に綺麗に一本取られたとはあいつも認めたくないだろうからな」
そう言い終えたピオニーさんに、あたしの木剣は取り上げられてしまった。