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15.新しい自分

おかみさんから乾いた服とココ爺さんからのことづけを受け取ったクレールはおかみさんにココ爺さんがいそうな場所を聞いて、朝食前に少しの時間宿をでて朝市に捜しに来ていた。


「こんなに早くから起きてないかな」


行き交う人ごみをフードをかぶりながら走っていたクレールは不意に誰かとぶつかってしまった。


「痛っ! ごっごめんなさい」


慌てて頭をさげながら謝るクレールに相手が突然笑い出した。


「ふおふおふお、なんじゃお前さんか、よくあうの? 昨日は御苦労じゃったな。お前さんのおかげで大儲けできたわい」


その不気味な笑い声を聞いてチラッと顔を上げると、そこにはココ爺さんが立っていた。

昨日とはまるで別人のようにきちんとスーツを着ているではないか。


「あっあなたは昨日の、あっあの探していたんです。これ受け取れません」

そう言いながら手に握っていた10ルール金貨の入った巾着袋を差し出した。


するとココ爺さんが言った。

「何、お前さんらのおかげでここしばらく砂漠になっていた場所にもようやく緑が戻ったしな。はした金じゃが何かの役に立てておくれ」


「いえ、受け取れません」

「お前さんも頑固じゃな。しかしわしも受けとってもらわんと賭けでもうけた金を使いづらいんじゃ。お前さんあのサンドパンと一緒に金を恵んでくれたじゃろ。あのお金で賭け札を買ったんじゃから」


「ですが…」


「お前さんがそのお金を受け取ってくれんとわしは、勝った金をお前さんに渡さないといけなくなるじゃろうが」

「いいえそれはお爺さんのものです」


「お前さんもがんこじゃな。その金はお前さんにやったんじゃ。それでよかろう。そうしてもらわんとわしの気がすまんのじゃ」


「あっじゃあ、ちょっと待ってください。代わりに…」


クレールはそういうと手に握っていた袋をポケットに突っ込むと、背中に背負ってきたリュックサックを降ろすと中から一つの石を取り出した。


「あの…これを受け取ってください。真実の石ではないと思いますけど、同じような丸い玉が他にもあったからついでに持ってきたんです。もしかしたら、少しは力があるんじゃないかと思って。お爺さんの言葉で真実の石を手にすることができましたから」


そう言って取り出したのは真実の石とは少し小さめの同じような丸い石だった。他にももう一つあった。クレールは二番目に大きい方をココ爺さんに差し出した。


「お前さんこれは・・・」

その石を受け取ったココ爺さんはかなり驚いている様子だった。

「唯の石でしたか?」


「いやこれは…潤いを与える石じゃ、これがあれば緑の土地に水を呼び込めるかもしれん。お前さん何者なんじゃ? 全て真実の石じゃよ。同時に三つもでるとは…わしも長年生きてるが初めてみたわい」


「やっぱり、あのゲップの穴から三つの石が飛び出してきたんですよ。一つは緑、もう一つは水のにおいがしたんでもしかしたらと思って。勝手に持ってきちゃいました。あとの一つは無臭だったんですが」


「みせてみ」


ココ爺さんのいわれるままもう一つの石を見せた。

すると、それを掴もうとした瞬間ビリビリと静電気のようなものがはしった。


「うわっ、なっなんだ」

「ほほーこれは新種じゃな」

「新種?」


「さよう、あのダンジョンにはな毎年いろんな真実の石があわられる。それは人々の苦悩を消すものだとされている。皆があのダンジョン攻略イベントが異様に盛り上がるのもその期待度が高いからなのじゃ。しかしこれは既にお前さんだけに作用するようじゃな」


「どういうことでしょうか?」


「何簡単なことじゃよ、石には特製があってな。お前さんが昨日皆の前で見せたのは緑を誕生させる石なんじゃ。今年干ばつで作物が不作だったもんじゃから恵の石だったってわけだ。もうその石はただの石ころになってしまっているがな。記念として持っておくのもいいかもしれんがな。そしてお前さんがもっているのはお前さんの悩みをかなえてくれる石だったんじゃよ。既にその石はお前さんを主として作動している最中だから関係のないわしが触ろうとしたんでビリビリきたんじゃんろうな。何はともあれこっちをわしがもらっても本当によいのか?」


「はいかまいません。本当いうとこのお金すごくありがたいです。ありがとうございます」

そう言ってクレールはココ爺さんに頭をさげた。ココ爺さんはその石を手に持ちながらニコニコ頷いた。


「こっちは僕の悩みをかなえてくれる石か…太陽を思いっきり浴びたいんだけどな。むりだろうな」


そうクレールが呟いた瞬間石から金色の光が出たかと思うとクレールの周りを取り囲み始めた。

そして、かぶっていたマントを勢いよくはじいた。


「うわ~」

慌ててフードをかぶり直そうとした時風が吹き抜けた。

そしてクレールの顔に朝のまぶしい太陽の光が差し込んだ。


「すごい、全然かゆくもならないや。すごいや」

クレールは歓声を上げた。


「これは遠慮なく頂いておこう。そうじゃ…少年よ覚えておくと良いぞ、いついかなる時も真実の石の別名は真実の自分を写すものだとな。未来は自分で作りだすものだ。ふんばるんじゃぞ。どんな時でもな! ふおふぉふぉ」


そういうとココ爺さんはその石を大切そうに懐にしまうとクレールに手を振って去っていった。


クレールはココ爺さんにもう一度頭をさげると駆け出した。


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