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1.始まり



この世界には大きく分けて人間と獣人と鳥人が存在し、共存しながら日々の営みを送っている。


どの種族が特に優れているというのでもなく、普通に獣人と人間が婚姻したり、獣人の王が存在したりしていた。


獣人の中にも純血種族もいれば混血である半獣人もいたり、見た目だけでは全く分からない半獣人もいた。


そんな僕も実は半獣人だった。今はクレール・ドルランと名乗っている。


そう今はである。そもそも僕には過去の記憶があるのだ。とはいえ、ろくな記憶ではない。いっそのこと消してしまいたい記憶だった。


僕は地球という世界でしがない子どもだった。糞みたいな親が虫けらのように子どもを虐待してそして誰の目にも触れることなく命が消えてしまった。戸籍に名前すら載っていない無戸籍の子どもが命を無くしたからといって世界は何も変わらない。


僕は無力な人間だった。だから、前世の記憶が蘇った時、自分の今の境遇が天国のように思えた。


少しばかりぐちぐちいう父親の声もそれほど心につきささらなかった。


大人しく言い訳もせずしていれば飢える事もない、大きな屋敷の図書室にはたくさんの本があり、家庭教師もたくさんつけて教育させられた。


獣人である父親のように頭の上に狼の耳がないというだけで虫けらを見るような視線を向けられても全然平気だった。


だから僕は一人で生きるためにはどうすれがいいのかを必死で考えた。そして結論に達した。


幸い僕は子爵の息子というゆるぎない出生証明がされている。

父はワグネルス・フォルレアンといい、狼獣人ではあるが子爵の地位にある人物だ。


兄弟は双子の兄が二人いたが10歳離れていて、二人の兄は父親に似て狼獣人の血を濃く受け継ぎ狼の耳を持ち父親そっくりだった。二人とも優秀で、既に成人しており父の仕事を手伝っていた。


末っ子の僕はというと人間である母親の血を多く受け継いだのか、見た目は全くの人間だった。ただ、もしかしたら変化ができる時があるかもしれないといわれていたが、今までの人生では一度もなかった。


父や兄たちに言わせれば出来損ないの部類に入るらしかった。だけど勉強ができないわけではない。半分獣人の血が混ざっている割には身体能力がかなり低いということだけだ。


健康には自信はあるが、身長も思うように伸びず、平均よりはかなり低かった。それもコンプレックスの一つではあった。


さて少しこの世界について簡単に説明すると、大きく分けてこの世界は五つの大陸が存在する。


僕がいる国はちょうど真ん中に位置する大陸で、カッシャニ大陸の東の端にあるマンドラル王国領内にあった。


このマンドラル王国には世界に誇る偉大な学園があることでも有名だった。そのルーベルク学園があるポルレーダ島は獣人や半獣人たちが通うことが許されている。この島はこの世界ではかなり有名で世界中から優秀な生徒が集まってきていた。島全体が学園の領内となっており広大な敷地があった。


この学園は13歳から18歳までの歳の学生が通うマンドラル王国最難関の高等学園なのだ。通っている学生は全員寮生活をしており、ほとんどの学生は各国の王族や貴族やお金持ちの子どもが大半をしめていた。


そんな中にも、学力の優秀な者は授業料や寮費など学園で必要な経費が全て免除となる特待生として一般の獣人も共に学んでいる場合もあった。クレールもその一人だった。子爵の父を持つなら特待生としてではなく、貴族枠で入学を希望すれば許可されたはずだったが、父親がクレールの入学の申請を許可してくれなかったのだ。


その理由はクレールはまだ一度も狼に変化していないことが原因だった。狼獣人としてのプライドが高い父親が一度も変化したことがない息子を自身の息子として世間に出すことを嫌ったのだ。


しかもクレールには体に重大な問題を抱えていた。それは太陽の光を長時間浴びると高熱がでたり皮膚が焼けるように熱くなったりと原因不明の病を患っていた。その為、夜間でも学べるこの学園に入ることを幼い頃から夢にみて勉学に励んできたのだ。


その甲斐あって、父親からの援助が受けられないと言われた時も既にそう言われることを想定して自ら母親の旧姓で、特待生試験希望の申請を済ませていたのだ。この学園にしたもう一つの理由に、この学園の中にはお金の必要な学生の場合、アルバイトを紹介してくれるシステムがあり、学園内でお小遣い稼ぎもできる仕組みになっていた。学園を卒業するまでにお金を稼いで、卒業した後も一人で生きていけるだけの最低限の貯蓄もできることを調べてあった。


(大丈夫だ。小遣いや学用品とかを買うお金なら働いて稼げばいいだけだ。学校には無料の食堂があるから死ぬことはない。僕はもっと勉強がしたいんだ。あの学園にはきっと僕が学びたいものがあるはずだ。前世のようには絶対ならない。僕は僕の人生を生き抜くんだ。それには何としてでもこの学園の卒業資格が必要なんだ)


人生には幾度となくピンチがおとずれるものだ。そのピンチをどう乗り切るかで人生の未来に大きく影響を及ぼす。


(僕は自分の力で生き抜いてみせる)


そうしてクレールは半ば家出同然でフォルレアン家を飛び出し、学園に入学を果たした。父親からは、学園に通う間はどんなことがあろうと一切援助も手助けもしないと言い放たれていた。またフォルレアン家の人間であることも他言しないと誓わされていた。


母親は心配そうにしながらも夫には逆らうことができず、自分のへそくりの金貨の入った袋をこっそり持たせてくれた。入学に必要な備品を買うのに役にたったのだが、クレールは入学と同時にできる限りのアルバイトを開始した。


特にほとんどの学生が嫌がる夜間授業が終わる深夜の時間帯の清掃作業などは進んでしていた。そうしながらクレールは昼間は睡眠や自習勉強にあて、日が沈んだ夕刻の時間からとれる限りの授業をとりまくり、それが終わった後は学園内部の清掃掃除を明け方近くまでするという生活を続けていた。


そして一学年終了間近のある日、クレールは学園に入学して最大のピンチにたたされていた。


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