愛の女神、リィシアは思う。
愛の女神、リィシアは今、下界のとある場所、大国シュリンプの王城のホールを見ている。そこには鮮やかに着飾った貴族たちがいるが、リィシアは貴族には目もくれず、その中心で起こっている出来事をじっと見ていた。
「ベゴニア!今ここで私はお前の悪事をすべて暴いて私の恋人、チャイニーに謝罪をさせた後、牢に放り込んでやる!後、婚約破棄もしてやる。」
リィシアは思う。この王子、馬鹿?いや、馬鹿か。
「殿下、わたくしには悪事という物の心当たりがございません。」
リィシアは思う。この令嬢、内心めっちゃ喜んでる。
「わ、私、ベゴニアさんに色んな酷い事されました。」
リィシアは思う。この子。めっちゃ内心ハラハラしてる。
「ならここで全てを言ってやる。令嬢A、証言しろ。」
リィシアは思う。令嬢Aって誰?
「は、はい!私、見たんです!ベゴニア様がチャイニーさんに暴言を吐いていたの!」
リィシアは思う。まさかの令嬢Aで出て来た。そして『!』多いな。
「次、令嬢B。」
リィシアは思う。まだいる。
「私ぃ、見ましたぁ。チャイニーさんをぉ、池に落としていたのぉ。」
リィシアは思う。語尾ウザイ。
「最後に双子のブーゲン・フォン・カーミン並びに、ビリア・フォン・カーミン侯爵令嬢。」
リィシアは思う。最後だけちゃんと名前出て来た。しかもカーミンってCだし。なんかA・B・Cにちゃんとなってるし。
「「わたくし達、見ましたわ。ベゴニア様がチャイニー様の制服を破いていたのを。」」
リィシアは思う。この双子、揃って金髪と銀髪の縦ロール。
「どうだ。これだけの証言を出されてはぐうの音も言えないだろう。」
リィシアは思う。お前なんなの?
「殿下、一つ聞きたいのですが。」
リィシアは思う。めっちゃこの子、内心のテンション高いな。
「おうなんだ。」
リィシアは思う。えぇ~、応じるの?この子なんか危ないよー。
「本当ですか?婚約破棄するというのは。」
リィシアは思う。なんかやばそうな・・・
「も、もちろんだ。」
リィシアは思う。王子、逃げろ。
「よっしゃ!やっと婚約者から外れられたわ。マー君待っててー、今行くからー。では、皆様ご機嫌よう~。」
リィシアは思う。王子、逃げなくて良かったわ。あっという間にホールから出て行ったな。あの令嬢。
「な、何なんだ?」
リィシアは思う。って言うかマー君って誰?
「ヴァーミリオン様。あの、どうなっているんでしょうか。(へ?普通ここで泣き崩れないの?)」
リィシアは思う。なんかあの子黒いもの抱えているわー。
「殿下。先ほどは娘が失礼いたしました。ところで本当にベゴニアと婚約破棄していただけるのでしょうか。」
リィシアは思う。して頂ける?
「して頂ける?そうだ。私はあのベゴニアと婚約を破棄するんだ。」
リィシアは思う。?面白そうな・・・
「よっしゃー。ガーネット!やっとだ。やっとこの王家との付き合いを辞めて領地に引きこもれるぞ!今は居ないベゴニア!お手柄だ!やっと自由だー!では、殿下。失礼いたします。今から退職届を書いてまいりますので。」
リィシアは思う。さっきのは遺伝の結果?
「え?へ?ど、どうなって・・・。退職届?」
リィシアは思う。王子、ご愁傷様。
「くおうらぁ~~~~~!ヴァーミリオン!今、何をしおったのじゃぁぁぁーーー!ホーグが全速力で奥方と出て行っておったぞー!」
リィシアは思う。王様出て来た。
「何ってベゴニアに婚約破棄を言ったらなんか・・・」
リィシアは思う。あ、これ、ダメなやつだ・・・
「な、何て真似をしよるんじゃ~~~~!」
リィシアは思う。苦労人登場。
「な、何がダメだったのですか父上!私はただ、ベゴニアが私のチャイニーを虐めたからそれに対して正当なまでに婚約破棄を言ったまでです。」
リィシアは思う。自分の婚約者に近づく女に色々言うのは間違ってないと思うけど・・・
「そのチャイニーとかいう小娘はどうでもいいわい。それよりベゴニアじゃ。あの、ベゴニア・フォン・ブラッサムに、お前の婚約者に婚約破棄を宣言したんじゃな?」
リィシアは思う。すごい形相。
「チャ、チャイニーは私の恋人で次の王太子妃だ!」
リィシアは思う。あぁあ。言っちゃったー。
「こ、こ、この、愚息が~~~~!お、お、お前は廃嫡にしてやる~~~~!」
リィシアは思う。次の王様は誰になるのかな。
「な、父上!何がいけないのですか!私はあんな、あのような器に小さい者が王太子妃になるのは国がダメになると思い・・・チャイニーはその点、心優しいですしふさわしかと・・・」
リィシアは思う。そのチャイニーって子も相当あれっぽいけど・・・
「お前の意見は聞いておらんわい。それよりもベゴニア嬢じゃ。今一体どこに・・・」
★☆★☆
「マーくーん。たっだいまー。」
リィシアは思う。マー君って猫か。
「あらあらベゴニア。ドレスは着替えないと。荷造りは済んでいるけどまだ必要なものは有るでしょう?」
リィシアは思う。何?この人。胸デカッ!
「はぁ~い。お母様。けど、特に必要なものはないわ。それと着替えて来るからマー君、預かっていてくださる?」
リィシアは思う。必要な物、無いの?あれ、明らかトランクケース1つ分しかないよね?お嬢様がそれで良いのか。
「早く行ってらっしゃぁい。」
★☆★☆
リィシアは思う。今回の婚約破棄はなんかいつもと違う。いつもはなんか婚約破棄をされる側は王子とかに泣きついたり、逆に説き伏せたりするけど今回の、何?
追記
王子様は廃嫡にされ、チャイニーちゃんは幼馴染と結婚し、国はブラッサム家がいなくなって職務に滞り、たいそう大変だったそうな。
気が向いたらまた違う婚約破棄を書いてみようと思います。リィシアさんは暇人です。いつもなにかしらの婚約破棄を眺めています。
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