アトラアトラス
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あらすじ
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「寒気がするぜ」
シュラクとは反対側に走り出す。
さっきまでいた場所は黒い奔流に飲まれて崩れ去った。
「何を泣き叫んでる、何を手招きしている」
『マスターあれはグロウスではないようですが、便宜上、アンノウンから《レギオン》と呼称します』
相変わらず名前を付けたがるようで、緊張感のある敵でもアトラは何処かずれている。
「あれをやれる奴はないのか」
『四十秒は必要です』
シュラクに稼いでもらうしかないか——とシュラクを見たとき、巨大な黒い腕が彼を押し潰す映像がよぎる。
「シュラクっ!」
両足に力がみなぎり、身体のラインからは白い光が溢れだす。
刹那、世界の時間が止まったように俺には見えた。
ビル群の屋上を何個も飛ばしながら走り去り、何百メートルも離れていたシュラクを抱きかかえ、その場を後にする。
「な、なんだよいきなり!」
「今お前が潰されそうになったから!」
「あん? んなことねーよ」
離れた場所に着地すると、黒い腕は今まさに振り上げているところだった。巨大すぎる分、動きが緩慢である。
「俺は、何を見たんだ?」
まるで先の事を見たような——いや考えるのは後だ。
「シュラク、あいつを四十秒ひきつけられるか?」
「——むしろ義贋総司郎はやれるのか?」
何処か不安そうに見上げるが、俺は頭に手を置いてやる。
「当たり前だ、伊達にこんな格好はしてない」
「期待しないで待っててやるさ」
俺の手を払いのけ、シュラクは走り出した。
「俺が相手だ、でかいの!」
腰から投げナイフを投げつつ黒い塊の意識を一斉に受ける。
「悪い、危険な役目を——」
肩幅に足を開き、足の踵から爪が地面へと強く刺さる。
俺の胸の前には緑色の文字列が生まれ、俺を中心として環を構築していく。
『マスター、賢者の"意志"へとアクセスしてください』
アトラの声に言われるがまま、俺は身体の中に散りばめられている小さな粒子を意識する。一つ一つを手指で優しくつまんで集めるように。
『系統樹から枝分かれした義贋総司郎の枝葉を辿り、より幹に近い存在力をアトラスへとダウンロード。魂は流転する。地面に落ちた枯葉は枝に戻り、枝は幹へ、幹は系統樹へ。いずれ樹も小さくなり、土へと還り、また新たな生命へと還る。魂も同じ、大人になり、死を経験し、また新たな魂として生まれる。それが生命賛歌の円環。義贋総司郎であり、義贋総司郎だった魂、これから義贋総司郎を基にした魂。それは時間軸を関係としない連続性のある存在。ガフの部屋クラウドからのダウンロード完了。第一工程第二工程滞りなく——』
何だこの文字列は。
アトラが俺の意識とアトラスの意識を接続し、賢者の石の成長を促している。促す言葉はまだ続いており、まるでそれは魔術のように長い文字列だ。
科学式も魔術式も使用する言語が違うだけ、なのか。
『——対起源種殲滅武装、壱式、発動可能です』
アトラの言葉が身体に染み込むとと、俺はそれの使い方を理解した。
「メグレ」
めぐれ。巡れ。廻れ。
呟いた言葉が音となり黒巨人へ届いたとき、瞬時にそれは光となって霧散した。さっきまでの暴れようが嘘のように辺りは静けさを取り戻す。
夢を見せられていたように。
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それでは、またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。




