隻眼の俺と遺跡調査
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あらすじ
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「なんでここ、明るいんだ?」
「俺が光ってるからだ」
アトラスの全身を巡るラインは以前炭鉱に落下したときも周囲を照らしてくれた。
「どこまでも便利で気持ち悪いやつだな」
「暗いよりは良いだろうさ」
俺一人なら天井をぶち抜いて地上に出れるだろうが、シュラクがいるとなると生き埋めにしてしまう可能性もある。斜めに穴を掘っていけば出れるかもしれんが、それよりも黒靄が招いた状況を調べる方が良いだろう。
「——ありがとよ。先に進もうぜ」
「お、礼はちゃんと言えるじゃねえか」
「辞めろその大人目線」
気を悪くしたのかシュラクはずんずんと先に進む。
やれやれ、反抗期とは気難しいものだ。俺も似たようなものだったから可愛く見えて仕方ないのだが。
『そう見えるのは年を取った証拠です』
「人の思考読むんじゃねーよ」
『血液濃度や呼吸、脳の活性化している場所により、容易に読み取れます』
人工知能といい反抗期少年といい困ったもんだと俺はシュラクの後を追う。
「遺跡か……」
「遺跡——何の遺跡だ」
「レウィンリィさんに教えてもらった。あの人は考古学魔術先行だ。古代に反映していた"魔法"に詳しい」
「あの人そんな文系だったのか」
「あれで大学の最年少教授だよ。その講義で古代魔術——つまり魔法に関する遺跡が眠っている話を聞いた事がある」
壁を触りながらシュラクは前に進む。道は一本道で迷うことはない。土で埋まっていたのは初めだけで、進めば進むほど道は広がっていく。壁面にも訳の分からない文字列が並んでいた。
「なあ少年、魔法と魔術ってのは呼び方が違うだけなのか?」
「教えてやる義理はない」
「そういうなよ、仲良く地上に出ようぜ」
むっと唇を一度とがらせて、こちらを見ずにシュラクは話す。
「魔術は誰が広めたかは知らない。けど極彩色の魔女たちはその知識を全て焼き捨てたと聞く。魔術ってのは人をグロウスにするし、発動までの使い勝手も悪い。でも何もないところに概念を呼び出せるのは魅力的な力だ」
次に、と話を続ける。
「魔法はこの世界が生まれる三千年前、それ以前に存在していた世界で使われていた万能の力と考えられている。魔術とは根本的に起こせる内容が違うらしい。この通り遺跡などは埋まってるから殆ど解明されてないけど。もちろんグロウス化もしない」
「へえ、万能の力ねえ」
「レウィンリィさんは魔術を危険視していた。でもただ止めるだけではだれも賛同しない。だからそれに代わる力として魔法の研究をしてるみたいだ」
「どちらも人類には過ぎた力かもな」
「義贋総司郎、お前それレウィンリィさんの前で言うなよ」
「すまない、そうだったな」
その為にマギアハウンドで彼女は活動しているのならば、いないところでも茶化すのはいいことではない。
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