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【旧】中年おっさんサラリーマン、異世界の魔法には賢者の石搭載万能パワードスーツがステータス最強でした ~清楚幼女やツンデレ錬金術師と家族生活~  作者: ひなの ねね
隻眼の俺と魔術を狩る者達

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赤髪の純粋——。

初めての方はこちらから

あらすじ

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「来るな!」


 シュラクはファイティングポーズを構え、腰に差してあったナイフをすらりと抜いた。動きや構えはただの少年にあらず、それ相応の訓練をした動きが見て取れる。


 シュラクの背中には金髪を三つ編みに結った大人しそうな少女がいた。


「お前はなんだ、グロウスなのか? それとも噂のアイツなのか?」


 街に忘れ去られた原っぱでシュラクが見つけたのは、真っ黒な靄に襲われそうになっている少女の姿だった。


 奴の名前を思い出すのは不愉快だが、この黒いのは義贋総司郎が便宜上名付けたアンノウンなのか。


「お前もなんでこんなとこにいるだよ!」


 初めて見た少女にシュラクは強めに言葉を放ってしまう。悪い癖だといつも叫んでから思う。


「わ、わたしは、ただ、庶民の夜を見たいなって……」


 泣きそうな声でシュラクの背中に縋りつく。


 こいつどこかの貴族か、お偉いさんってところだろう。世間知らずではた迷惑な話だ。


「早く逃げろ!」


「で、でも」


 少女は足が竦んで動けないのか、シュラクの背中から離れようとしない。


「やってやる、俺だってやれるってとこおさあ!」


 上半身を低く。滑り込むように黒い靄の内側に入り込む。


(取った——!)


 何度も反復練習をした動きがスムーズに再生される。あとは首と思われる部分にナイフを切り込む。


 ——ヒュン。


 霧を切るように手ごたえがない。


「グロウスですら身体はあったぞ!」


 瞬時にバックステップし少女のところに戻る。


 黒い靄はかろうじて人の形をしているような気がする。


 ゆっくりと近寄り、手らしい部分を持ち上げておいでおいでを繰り返す。


「よ、呼んでる」


「見ない方が良い」


 見ると憑りついてくる輩もいると、ガドウに昔習ったことがある。


「こんなの見つけても対処の仕様がねえ、逃げるぞ!」


 引き際の見極めは早く。


 シュラクは少女の手を取り踵を返す。


「——!」


 いつの間にか後ろに黒い靄がいる。


「なっ!」


 靄が少女においでおいでを繰り返す。


 伸ばされた手が彼女に届く前に、強く身体を押した。


「誰かを呼べ、呼んで来い! 街には一三聖剣がいる、だから——!」


 シュラクは黒い靄にずぶずぶと全身を飲まれていく。飲まれた身体は地面へと沈み、まるで泥沼に引きずり込まれているような感覚だった。


(もうだめか——?)


 口元が地面へと飲み込まれ、息苦しくなった時、思考は鈍る。


 死ぬ。こんなどうでもいいところで俺は死ぬ。死んじまう。ガドウさんみたいに強くなる前に——両親の敵を取る前に。


 視界は既に暗く、息苦しい。地面と同化し、果てのない海へと沈んでいく。けど諦めたくねえ。生きることを諦めたくねえ。


 必死にもがき手を伸ばす。


 漕いでも漕いでも浮き上がる事は決してない。


(もう息、が——光が……)


 ついに意識を失ったか、ありもしない光の点が徐々に広がっていく。


 光は徐々に大きくなり、水面から無理やり引き釣り上げられるように、身体が持ち上がる。


「よく、頑張った」


「げほっ、げほ」


「お、お前は、く、黒」


「もうその答えは聞き飽きた。俺は、」


 彼は頭を掻き、何かを言おうとして何も言わなかった。


 どうやらいい答えが思いつかなかったようだ。

ブックマークや評価によるご声援、本当にありがとうございます。

心にグッときます。感謝してもしきれないほど、毎日喜んでいます。


それでは、またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。

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